327話 それぞれの道⑤
【武器創造・雷】で雷を付与した青銀の刀を創り準備ができた。
反応が近くになると、床は砂で埋まる。
「あら~ワタシの得意な砂漠にいる魔物かしら~。楽しみだわ~」
そういえばトリニッチは砂漠がある場所で住んでいたな。
簡単に倒せそうだな。
反応がある大きな広場に着いた。
周りは砂――砂漠を再現した広場だ。
「ガァルルル……ガァァァァ――――!」
鋭い角と突き出た2本の牙に漆黒の4足歩行の厳つい大型の獣――3頭のベヒーモスだ。
懐かしいな、何百年前はこやつに苦戦して、チトセはビビッて逃げていたな。本当に懐かしい。
今の儂なら余裕で倒せる相手だ。
「あら~災害級――魔物の覇者じゃない~。ものすごくイケメンね~。どれにしようか迷っちゃうわ~」
イケメン……?
確かに厳ついが魔物の中ではイケメンではある。
サハギンキングをイケメンとは言っていたが、基準がわからん……。
「戦ったことはあるのか?」
「昔にちょっとね~。街を守るためにみんなと必死で戦ってたわよ~」
「今回は1人でいけそうか?」
「大丈夫よ~。もう興奮しちゃって我慢できない~。あの筋肉質なイケメンお持ち帰りしてもいい~?」
トリニッチは顔を赤くして右のベヒーモスを指を差す。
お持ち帰りとは魔石にしてだよな……? 言い方……。
「いいのでは……」
「ありがとね~。それじゃあ、ワタシ、がんばっちゃうわよ~」
我慢できないのかもう目の前まで近づいた。
しかも剣を納めている。
「ガルル……ガアァァァ!」
ベヒーモスは突き出した牙で砂に刺し、トリニッチがいるほうに突き上げ、大量の砂が襲う。
「あら~、あなたも我慢できなかったの~? お互い相思相愛ね~」
猛攻撃をしてるが、トリニッチは回避に専念している。
遊んでいるな……よほど気に入ったか……。
「ほどほどにしろよ……」
「大丈夫よ~。あとの2頭よろしくね~」
まあ、いい……。
遊んでいる間に片づけるか……。
「「ガァァァァ――――!」」
2頭もトリニッチがいる方向にもう突進しようとする。
しょうがない、お2方の世界を邪魔させぬとしよう……。
スキル【電磁波】を使い、2頭に流す――。
ギリギリのところで方向転換し、儂のほうに向かってくる。
よし、こやつにも効くとは儂も成長したな。
儂たちは横へ回避し、再び方向転換し、止まらないで突進してくる。
やっぱり、デカい図体の割に素早いが、所詮、ただの闘牛にしか見えん。
子どもたちならこの程度、どうってことはない。
「儂は1頭相手するから、もう1頭は頼むぞ!」
「「「は~い!」」」
子どもたちは喜びながら「豪襲脚」「旋脚」で攻撃している。
肉質は闘牛よりは硬いが、そのうち倒せるだろう。
おっと、よそ見している場合ではない。
もうすでに遅いか、だったら回避せずに――。
「――――雷身」
「――――ガアァ!?」
鞘を使ってベヒーモスを受け止めて、身体を放電した。
相手は感電し、驚いて後ろに下がる。
「ガルル……」
もろに食らって脚が震えている――痺れたようだ。
前は苦戦していたというのに弱すぎだ。よく魔物の覇者と言われたな。
まあ、儂は主からチート能力をもらったにおかげだけどな。
このままいたぶる趣味などないし、終わらせるとしよう――。
「――――抜刀・落雷!」
「ガアァァァァ――――!?」
高く飛び、背中に向けて刀を抜き、雷を纏い突き刺した。
相手は丸焦げになり、黒い魔石に変わった。
こんなものか、魔剣を使うまでない。
というか主からは危ないときにだけと言ってたし、使えん。
「「「硬い牛倒した~!」」」
子どもたちは倒れているベヒーモスの上に乗って喜んでいた。
そして魔石に変わり、砂へ落ちて大はしゃぎだ。
相変わらずだな……。
トリニッチは――。
「オホホホホ! 楽しいわね~」
攻撃を回避しながらペタペタと身体をさわっている……。
気に入りすぎだ……。
だが、ベヒーモスは息が荒くバテている。
遊びながらと言いつつスタミナを削るとはやるではないか。
「そろそろ終わりにせい!」
「もうそんな時間なの~。名残惜しいけど、お預けね~」
トリニッチは後ろに下がり、両手を大きく広げて、受け入れるポーズをしている。
いったい何をする……?
ベヒーモスは挑発と捉えたのか、突進し、トリニッチは両手で二本の牙をつかみ――。
「ワタシはあなたの愛を受け止めたわよ~」
後方へとそり投げ――バックドロップをする。
怪力だな……。【身体強化】を使っているから余裕かもしれないが。
砂がクッションになって思っているほど、ダメージはない。
だが、ベヒーモスはバテているからすぐには起き上がらないはずだ。
「やっぱりもの足りないわよね~。じゃあ、最大の愛を送るから我慢してね~」
今度は片足をつかみ、自身を回転――ジャイアントスイングをする。
砂が散って見えん……。
勢いがついたら放り投げ――壁に激突した。
「ガアァァァァ――――!?」
早く倒さんか……。動かない程度の傷を与えたが、まだ倒せんぞ……。
「あら~ワタシの愛を送ったおかげで、おとなしくなって偉いわ~」
「いいから止めを刺さんか!」
「何言っているの~。ワタシはお持ち帰りするっていったわよね~。このイケメンはワタシが飼うのよ~」
…………っは!? なんでそうなる!?
こやつをペットにするとかおかしいなだろう……。
「ちょっと待たんか!? 仮に飼うとしても主の許可が必要だぞ!?」
「シエルちゃん、セイクリッドちゃん、シノちゃんもいるし、きっと大丈夫よ~。ワタシがしっかり面倒見るから問題ないと思うよ~」
確かに面倒を見れば主が受け入れる可能性はある。というか儂が言える立場かわからんが……」
「「「わ~い、ペットだ~!」」」
子どもたちも飛び跳ねて喜ぶでない……。
まだ決まったわけではない……。
「それでライカちゃんにお願いがあるの~。この子に一緒についていきてって言ってほしいの~お願い~」
「儂は魔物の言葉なんてわからんぞ!?」
「そうなの~? 困ったわね~」
まったく……儂は元妖怪だぞ……。
魔物とは全然違うぞ。なんだと思っている……。
それにこやつは飼えるほどの知性は…………ん?
子犬のように震えているが……。
「あらやだ、ワタシの愛が重すぎたかしらごめんね~」
「ガルゥ!?」
そう言ってサイドバックからポーション無理やり口をこじ開け飲ませる。
なんで飲ませるのだ!? 攻撃してくるぞ!?
だが、攻撃してくるような殺気はない。どうしてだ?
「いい子ね~。ねぇ~あなたワタシところに一緒に来ない~? もしこなかったら――――」
「ガァル!?」
トリニッチは子どもが持っている魔石に指を差した。
「こうなるわよ~。選んでちょうだい~」
完全に脅しだな……。
さらに震えている……仲間のようになりたくないのはわかるみたいだ。
しかもトリニッチに無理やり身体に叩きこまれていて勝てない相手だともわかっている。
調教は完了している……。狙ってやったか……?
「ガルゥ! ガルゥ!」
ベヒーモスは大きく何度も頷いて承諾した。
「そうわよね~! ワタシたち相思相愛だよね~!」
「ガルゥ……」
トリニッチは抱きついて大喜びだった……。
これは死より恐ろしいぞ……。
主に念話は……戦闘中かもしれんし、合流してからにしよう……。
「それじゃあ、いくわよ~。お願いね~ベヒジャミちゃん!」
「ガルゥ!?」
「「「わ~い!」」」
儂らはベヒーモスの背中に乗って次に進む――。
まったく……もう名前をつけて……困ったもんだ……。
絶対に主が見たら驚くだろうな。
しかし、ギリギリベヒーモスが通れる通路で良いのか悪いのかわからん……。
まあ、楽に進めるのはいいが……。
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