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324話 それぞれの道②

フランカ視点になります。


 アタイが先頭になって進むと、さらに乾燥し、塩でべたついていた髪がサラサラになった。

 海水があり、塩があり、乾燥したりと、ここのダンジョンはどうなってやがる。もっとシンプルな作りにできないのか。

  

「フランカ、そんなに進んで大丈夫なの? 罠とかあるんじゃあ……」


 アリシャは心配そうに言う。

 みんなと分かれてひと一倍慎重だな。


「罠は魔法で確認して何も反応はなかったぜ。アタイが進んで道にはないようだな」


「そう、良かった……」


「ハハハ、アリシャはいつも心配性だな。まだ何も起きてないのにビビりだな」


「はぁ!? 確認するのは当たり前でしょ!? バカなガルクとは違うのよ!」


「誰がバカだって!?」


 また始まったか……。相変わらず仲が良いな。


「それまでにしとけ、次の魔物が強かったらどうする? ケンカして余計に体力使ったら対処できないぞ。アタイがお前さんたちを守れるとは限らないからな」


「「す、すいません……」」


 2人はアタイの言うことを聞いてケンカをやめた。

 とは言ってもここの魔物は弱すぎて今のところアリシャたちでも余裕で対処できる。

 セイクリッドが、強敵がいるとは言ったが、アタイはあまり期待していない。

 強くても小人たちですぐ終わりそうだ。

 まあ、危機感をもってほしいから念には念ってことで。


 しかし、珍しい組み合わせだな。

 この4人組はダンナのほうにつくと思ったらアタイについた。

 少し聞いてみるか――。


「なんでアタイのほうについた?」


「武具の手入れをしてくれるから」

「強そうな敵と戦えそうだから」

「援護しやすそうだから」

「フランカがいると魔石がいっぱい獲れそうとだから」


「そうか……」


 アリシャとミルチェはまともだが、ガルクとアミナはアタイとまったく関係ないぞ……。

 まあ、気にしてないが。


 歩くこと十数分、魔物の反応があった。それも複数――4体と大きいな。

 獣臭い……鼻につくな……。

 どうやら貧乏くじを引いたようだ。


「臭うな……異臭を放つ魔物だったら厄介だ。今のうちに引き返すのもアリだがどうする?」


「「「へいき!」」」


 小人たちは大丈夫みたいだが、4人組は身体を震えて青ざめていた。

 4人が怯えているのは初めて見る。何か知っているな。


「おい、大丈夫か? 尋常ではない汗だが、引き返すか?」


「へ、平気よ……」

「だ、大丈夫だ! こ、このくらい……」 

「ちょっと、めまいがしただけだよ……」

「だ、大丈夫だから、心配しないで……」


「本当か? 敵の魔力に当てられた感じではないが、この獣臭いのは知っていそうだな、何かあったか?」


「昔……村を襲ったミノタウロスと同じ臭いがしたの……」


 少し落ち着いたアリシャが言う。

 ああ、この4人組はミノタウロスとはかなり縁があったな。


「ミノタウロスってこんなに異臭を放つものなのか?」


「発情しているミノタウロス――特に強い雄は遠くにいる雌にわかりやすく放っているよ……。知っていると思うけど、どの魔物も発情していると凶暴化しているから、危ないよ……」


 ミルチェも落ち着いて言う。

 なるほど、この異臭はフェロモンってことか。

 残念なことにここはダンジョンだ。フェロモンを出しても雌はいない。

 哀れだ……。

 じゃあ、魔力反応が大きいのもその影響か。

 凶暴なミノタウロスなら今の4人組になら倒せるが、前の記憶がフラッシュバックして戦える状態ではない。


「それなら無理をしなくていいぞ。引き返すぞ。小人たちもいいよな?」


 小人たちは口を開けたまま、考えている。

 悪いが、安全第一だ。


「みんな、フランカさんの言うとおりにしてって守り神が言ってたよ! フランカさんに迷惑かけたら守り神が悲しむよ!」 


「「「わかった!」」」


 ナゴミの発言で小人はすんなり受け入れてくれた。

 まあ、ライカはそんなこと言っていないが、ナゴミはアタイに気を遣ってくれる。

 ナイスフォロー。


「へ、平気よ……。引き返したらみんなに迷惑をかけるから……。私たちは乗り越えてないといけないの……」

「ああ、俺たちは強くなった……。あの時とは違う……。だから戦わせてくれ」

「僕もそう思うよ。精霊使いになったからにはこの子にいいところ見せないとね」

「わ、私も! 逃げている人生はイヤ!」


 さっき怯えていたのに急に頑なになるな……。

 まあ、アタイは嫌いではない、ここは意思を尊重するか。


「わかったよ、もし無理だったら離れて見てろよ」


 4人はゆっくり頷く。

 気を取り直して、歩いて進む――。


 数分後、広いフロアに入ったが、魔物――ミノタウロスはいなかった。

 いや、フロア外に反応がある。


「ブモォォォォ――――!」


 雄叫びを上げて奥のほうから入ってきたのは金の鎧に兜を着た、全長7~8m以上のある金色の斧を持ったキングミノタウロスだ。

 その後ろから3体同じ奴が入ってくる。

 おいおい、スタンピードで戦ったのと違うぞ。


「異常種……SSランク……アーマーキングミノタウロス……」


「い、いや……」


 アリシャは再び震えて後退りし、アミナは尻餅をした。

 ガルクとミルチェは恐ろしいあまり棒立ちをし、沈黙する。

 まさかユニークが4体か……。

 マズいな4人組では無理だ。


「ここはアタイたちに任せろ! ここから離れろ!」


 4人は引き返してフロアから離れようとすると――。


「ブモォォォォ――――!」

 

 再びアーマーキングミノタウロスは雄叫びを上げると、出入口から壁が降りてきて塞がれた。

 おいおい……フロアにいなかったのはアタイたちを油断させて、逃がさないように仕組んだか……。

 本当に貧乏くじを引いてしまったな……。

次の更新は9日です。

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