32話 ハンドメイド
ワイバーンを倒し、回収をしてからギルドに報告のために街へ帰る――。
――夕暮れ頃には街に帰ることができた。
しかし……ワイバーンって……こんなに早く倒せる相手だっけ?
いろいろと疑問があるが考えるのをやめておこう。
まあ、これなら精霊に寂しい思いもさせずに済む。
ギルドに入ってリンナさんに報告する――。
「おかえりレイ君、アイシス意外に早かったわね」
やっぱり早かったか……。
「ハハ……報告に来ました。依頼通りワイバーンを3体討伐しましたので査定をお願いします」
「わかったわ、じゃあ、今から解体場に来てね」
――ギルドの裏にある解体場に行き、無限収納からワイバーンを出した。
リンナさんはそれを確認する……。
「……うん、間違いないわ、依頼は成功よ。 2人ともお疲れ様。報酬は素材の換金と一緒に支払うわ」
「そのことなんですが、魔石だけ換金外にしてくれませんか? こっちで使いたいのですが」
「わかったわ、ところでそれは何に使うの?」
気になりますよね……。まあ、言っても別に大丈夫か。
「魔石で装飾品を作ろうと思いまして、失敗もかねてワイバーンの魔石なら十分な大きさだと思いまして」
「えっ!? 装飾品作るの!?」
そんなに驚くことなのか……。
「試しに作ってみるだけですよ。上手くできたら趣味にはしたいですけど」
それを言うとリンナさんの目が輝いている……。
「試作品でもいいから欲しいな~」
装飾品が好きなのかな? いつもお世話になっているしプレゼントするのもいいか。
「いいですけど、多分失敗ばかりすると思うのであまり期待はしないでください」
「やった! 遅くても待っているからね!」
リンナさんは喜んでいた。装飾品が好きなのは意外だなー。
「そういえば、精霊はどこにいるのですか?」
「そうだ! 精霊ちゃん凄いのよ! こっちに来て!」
すごい? 何かしてくれたのかな?
リンナさんに言われて受付の奥に行くと精霊がギルド職員と一緒に書類整理していた。
「精霊ちゃん! レイ君とアイシスが来たから今日はありがとね!」
その呼び声に精霊はこちらに飛んで来る。
「まさか手伝いをしてたとは……」
「そうなのよ! 精霊ちゃんの風魔法使って書類まとめたり、素材を運んだり、それに計算できて助かるのよ!」
「良かったね、褒められて……」
精霊は笑顔で頷いた。
すごいことしてますね……しかも計算もできるのか……いろいろと本を読んでいるから身につけたのかな?
「またお願いね精霊ちゃん! それと、こんなに手伝っていたらお金を払わないといけないわ!」
リンナさんは大銅貨を2枚精霊に差し出した。
精霊は風を使いお金を浮かして俺に渡した。
「ん? 俺に預けてほしいの?」
精霊は首を振る。
「え……あげるの?」
笑顔で頷いた。
「いやいや、せっかく自分で稼いだお金だから自分で使っていいんだよ」
それを言っても首を傾げるだけだった……精霊はお金を使わないからいらないのか……。
さすがにそれはダメだ。
「じゃあ、このお金は本を買うために貯めるってことでいい?」
その言葉に反応して頷いた。これなら精霊もお金の価値がわかるな。
すると、精霊はそのお金を風で浮かせ、自分の近くに引き寄せて消えた……えっ!?
それを見た周りも沈黙した……。
「これって……アイテムボックス?」
笑顔で頷いた……。
「「「えぇ――――!?」」」
アイテムボックス使えるのかよ!?
『あ~これはボクもビックリしたよ……まさかこの子がアイテムボックス使えるなんて……』
エフィナも驚いたのかよ!?
『これって珍しいことだよな?』
『精霊としては非常に珍しいよ。多分レイの魔力が影響しているけど』
俺なのかよ……エフィナではなく?
「これは内緒にしてください……」
みんな同時に頷いた。
これは周りに知られたら大変だな特に……うん、言わないでおこう。
――その後、素材の査定が終わり。
報酬の金貨1枚+素材を換金した金貨1枚、赤くルビーのような、スイカ1個分の大きさの魔石を3個受け取った。
もちろん、報酬の半分はアイシスに渡した。
夕食の時間になったから今日は食堂で食事をすることにした――。
――――◇―◇―◇――――
――翌日。
街の雑貨店に行き、装飾を作るのに必要なパーツを買った。
買ったのはいいが……さすがに大銀貨1枚分のお金を使ってしまった……。
今後、いろいろと作るならいいのだが……まあ、先行投資ってことにするか。
――屋敷に帰り、作業を始める。
まずは、庭の外で無限収納からワイバーンの魔石を出して地面に置き、【武器創造】で銀の鎚を創り、少し強めに魔石を叩く――ひびが入った程度だったがこのまま叩き続けて――魔石は割れた……うん、いい具合に破片が残ったから成功した。
装飾に良い大きさを探すと、7~8㎝くらいの破片を見つけた。
この大きさなら、申し分ない。
残りの破片は後で使うことにして無限収納に入れた。
「念のために3個用意したが2個も必要なかったか……」
それを言うとアイシスは目が輝いていた。
「ご主人様、残りの魔石はもらってもよろしいでしょうか?」
何か作るのかな?
アイシスなら有効活用するから喜んであげよう。
「いいよ、今のところ砕いた魔石だけで足りるから」
無限収納から魔石2個出した。
「ありがとうございます。早速ですが買い物に出かけます」
アイシスはアイテムボックスに魔石をしまい、屋敷を出ていった。
これはスイッチが入ったな……まあ、俺も作業するしミランドさんの依頼を受ける前の間は、依頼を受けるのはやめとくか。
屋敷に戻り、書斎で作業をする。
先ほど砕いた魔石の破片を滑らかになるまでヤスリでひたすらかけていく――。
――1時間後、全体的に滑らかな仕上がりになった。
ここまでは順調だ。雑貨店で買ったチェーンと紐を出す。
さて、どれを使うか……エフィナにどれがいいか聞いてみた。
『その前にそろそろもったいぶらないで教えてよ!』
ですよね……もう教えてもいいか。
「ネックレスだよ。チェーンは穴をあけて通すけど、紐の方は包み編みにして結ぼうと思っているから悩んでいる」
『ネックレスか~いいの作っているね! ボクはチェーンの方がいいよ!』
「じゃあ、チェーンにするかー」
『うん、そうして!』
再び、穴あけ用のヤスリを使って穴をあける――。
――2時間後。
やっと穴があけられた……。
魔石は固いな……掘る厚さもあるから時間がかかるのはしょうがないか。
今日の作業はここまでにして明日に持ち越す。
――――◇―◇―◇――――
――翌日。
朝食を食べ終えて昨日の続きをする。
魔石に穴をあけたが、まだチェーンを通せる大きさではないからヤスリで削っていく――。
――よし、十分な大きさまで削ることができた。
あとはチェーンの長さを決めないと。
ゆとりがあった方がいいから大体70㎝に調整をして、穴に通してネックレスの完成だ。
『綺麗にできたね!』
まさか1発で作れるとは思わなかった……スキルの【器用】が働いているとは思うがこんなに綺麗に作れるものか?
「試しに魔石に魔力を流してみるか」
魔石を手の平に持ち、魔力を流すと――輝き始めた。
問題はない、あとは魔力の調整してみるか。
弱めに流すと少しの輝きで、少し強めに流すと眩しいくらいに輝いた。
うん、これならブレンダも魔力コントロールの練習ができる。
あとは綺麗な箱に入れて……これでプレゼントの用意はできた。
無限収納に入れて終わった。
アイシスはメイド室で何か作っているし。
やることは……いや、あるな……。
ブレンダの護衛まで時間があるから、リンナさん用の装飾品でも作るか。
結局、1日中作業をしていた。




