314話 調合試験
「調合なら余裕っス! 何を作ればいいんスか?」
まだ何も言ってないが、かなりの自信だな。
「ここにいる体調不良の男を治してほしい。ポーション以外のやつをな」
「えっ、俺?」
「この人をっスか……?」
メメットはソウタの近づきペタペタと触り、呆れていた。
「…………身を削るほど何をしているんスか……。控えるって言葉を知らないッスか……」
「俺は無理やり付き合っているだけだぞ!?」
「そうっスか、まあ、それはどうでもいいっス」
ソウタは言い訳するが、軽く流され大きなバッグ――中身を確認した。
「やっぱり素材が足りないっス……。というかこのお兄さんではあっしが持っている素材では回復できないっスよ……」
「何が必要だ? ある程度の素材なら持っているぞ。足りなかった獲りに行くが」
「マジっスか!? ではお言葉に甘えて――」
素材は――バジリスクの血と牙、コカトリスのレバー、フラワートレントの根っこ、ハチミツだ。
……精力剤を作りますっていう素材ばっかりだな……。
「あっしはフラワートレントの根っこは持ってるっス。それ以外はとてもですが買えない素材っスね」
「そのくらいなら普通に持っているぞ。好きなように使ってくれ」
「本当っスか! さすが領主様っス! 急いで作業にかかるっス、どこか部屋を借りてもいいスか?」
「ああ、リフィリア案内をしてくれ」
「わかった、でもその前に――」
「ぬあっ!? 何するっスか!?」
「汚いからキレイにしましょうね」
リフィリアはメメットを風で浮かせて温泉のほうへ向かう。
やっぱりそのまま入らせるのは嫌か。
――数十分後。
Tシャツとスパッツを着て髪がサラサラで肌が清潔になったメメットが涙を流して出てきた。なんで?
「うぅ……隅々まで洗われたっス……純粋な乙女っスよ……もうお嫁にいけない……」
だから純粋な乙女とはいったい……無理やり洗われたのが嫌なのか……。
「落ち込んでいるなら今日はやめるか?」
「やるっスよ! ここでへこんでいるわけにはいかないっス!」
切り替えが早いことで……。まあ、永住権がかかっているしな。
リフィリアの許可が出てフランカの家――調合室の向かう。
俺も作るところ見学させてもらう。
中に入るとメメットは大興奮だった。
「なんすかこの部屋は!? 器具なんて全部揃っていてやりたい放題じゃないっスか!?」
「好きに使っていいよ」
「まさか大精霊が【調合師】スキルを持っていたなんて意外っス……。ではあっしも【調合師】スキルを使って答えるっスよ」
メメットは作業に取りかかる。
フラワートレントの根っことコカトリスのレバーを網で炭になるまで焼き、乳鉢に入れてバジリスクの牙と合わせて乳棒で粉末状にした。次にフラスコにバジリスクの血を入れて沸騰するまで加熱をしている。
血生臭い……室内が充満するな。
リフィリアは嫌なのかすぐに窓を開けた。
「こんなの初めて見た……。どこで覚えたの?」
「あっしの勘で作っているっスよ。【直感】のスキルを覚えているので安心してくださいっス」
…………安心できないが……【直感】って【調合師】のスキルと一緒に働くのか……?
あっ、一緒に見ているソウタが青ざめてゆっくりと部屋から出ようとしている。
「逃がしませんこと――シャドウバインド……」
「はっ、離してくれ!? 俺は飲まないぞ!?」
「むっつりなお兄さんのために作っていますこと……ありがたくお飲みになって、元気になったほうが身のためですよ……」
メアは不気味な笑顔でソウタを影で拘束する……。
楽しそうで何よりです……。諦めて飲んでください。
加熱したら火を止めて、粉末とハチミツを合わせて溶かした。
すると、どす黒いかった血がさらさらとした黄色い液体へと変化し、血生臭かったのが薬っぽいにおいになった。
見た目は栄養ドリンクっぽいな――いや、完全に栄養ドリンクだ。
「完成したッス! 味は保証するので飲んでくださいっス!」
「お、おう……」
先ほど抵抗をしていたが、飲めそうな匂いだとわかると、手に取ってゆっくりと口に運ぶ。
「残念ですこと……」
メアは魔法を解除して少々不満げだ。
今回は面白い展開にはならなく諦めたようだ。
ソウタは飲み干すと、顔つきが良くなり、猫背も治り、姿勢が良くなった。
「栄養剤みたいで飲みやすかった。身体も楽になったぞ」
「それは良かったっスね。領主様、合格ですいいッスか?」
「ああ、もちろんだ。ここに住んでもいいぞ」
「やったッス! これで新しい研究ができるッス!」
俺にブンブン腕を振って握手をして大喜びだ。
【調合師】のスキルがあることも確認できたし本物だとわかった。
さて、今後について話すか――ん? ソウタの様子がおかしいぞ?
頭や口から煙が出ているぞ……。それに白目だ……。
あっ、嫌な予感が――。
「――――ガァァァァ!?」
「ギャア!? やめろっス!? あっしを襲っても美味しくないっスよ! 助けてくださいっス!」
ソウタはメメットを押し倒してTシャツとスパッツを破き、よだれを垂らしながら襲うとする。
…………効きすぎたか……。我を忘れるほど猛獣化してしまうとは……。
あっ、メアさん面白い展開なったのか、クスクスと笑っています……。
「まあ大変なこと――――シャドウチェーン……]
メアは影の鎖を出してソウタを巻き付けてメメットを助けた。
この様子だと、自然に治まらないよな……。
ソウタ大声が響いたのか窓から小人たちが見に来た。
「ちょうどいい、トリニッチさんを呼んできてくれないか?」
「「「は~い!」」」
この方法しかない。すまんがソウタ、また干からびる覚悟をしてくれ。
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