31話 ワイバーンの魔石
ミランドさんの依頼の話を終え、今ギルドにいる。
そう、ワイバーンの依頼があるか確認する。
『なんでワイバーンの素材を使うの? もしかして杖でも作るの?』
「いや、そうじゃない。ワイバーンの魔石が必要なんだ」
『魔石? なんで?』
「魔石って魔力を通すと輝くだろう?」
『うん、そうだね!』
「その魔石を利用して魔力コントロールができる装飾品を作ろうと思って」
『それおもしろいね! じゃあ、作るのはアイシスで決まりだね!』
「私の出番ですね」
「今回はミランドさんに言ったとおり、俺が作るから大丈夫だよ」
「そうですか……」
アイシスは自信満々だったが、しょんぼりした……作りたかったのか……。
「まあ、アイシスは俺の服を作ってもらっているから、そっちに専念してほしいな。俺はアイシスが作ってくれる服が気に入っているから」
そう言うとアイシスは赤くなり、顔が少し緩んだ。
「はい! わかりました!」
機嫌を取り戻してくれたようだ。さすがにそこはアイシスに迷惑をかけられないからな。
『でもレイの記憶だとブレスレットを作っていることしか浮かばないけど、それ作るの?』
エフィナは前世の記憶でも観たのか。
それは俺がパワーストーンが好きだから市販で単体の石と紐を買い、自分のオリジナルのブレスレットを作っていたからだ。それと同じのを作ると思っているのか。それだと魔石を複数削って丸くしたり、紐を通す穴をあけるのに手間がかかる……。
でも作ると面白そうだけど。
「ブレスレットは作らないぞ。ほかの物を作る」
『へぇ~じゃあ、何作るの?』
「作ってからのお楽しみ」
『えぇ~いいじゃん、今言ったって!」
たまには言わない方がエフィナを楽しませることができるから今回は言わない。
A~Bランクの依頼が貼ってあるボードを確認する…………あった。
えっと……。
推奨Bランク以上、ワイバーン3体の討伐。
カルムの西20㎞先、周辺の街道に出現。
大至急要請。 報酬、金貨1枚。
依頼者 商業ギルド。
意外に近い……それに街道にいるとか、早く行かないと被害が起きる可能性もある。
さほど遠くはないから運が良ければ、今日中に終わりそうだ。
アイシスにこれでいいか確認をすると「大丈夫です」と言って、その依頼をボードから剝がし、受付をしているリンナさんにお願いをする。
「あら、ミランドさんと依頼の話はどうなったの?」
「ブレンダの護衛をする話でした。2週間後に出発します」
「そうなんだ……もしかして王都に行くの?」
寂しそうな顔をしている……。
あっ……マズいな……リンナさんは王都の話は好きではないんだよな……。
だからザインさんは伏せていたのか……。
「ええ、まあ、護衛ですので終わったらすぐ帰りますよ……」
「そう……そのときは気をつけてね……」
「は、はい! そ、それで今日は時間があるので、この依頼を受けたいと思います」
「……ちょうどよかったわ、ワイバーンの討伐誰も受けないから困っていたのよ」
機嫌が直った、よかった……。
王都で何があったかわからないけど、今度から気をつけよう……。
「許可をお願いします」
「ええ、もちろんよ。依頼者が商業ギルドだからあっちに行って説明を聞かなくていいわよ。話はこちらで通すように言われてるから」
「わかりました」
リンナさんは地図を広げてワイバーンが出現した場所を教えてくれる。
「レイ君とアイシスなら魔法が使えるから苦戦しないで倒せるけど、気をつけてね」
確かに空中相手の魔物は魔法が有利だ。魔物から突っ込んでこない限りは近距離戦は無理だな。
「はい、それとお願いがあるのですが、精霊をこちらで面倒見てほしいのですが……」
それを言うと精霊が顔を膨らした。
さすがにワイバーン相手はダメだって……。
あと、屋敷で1人いるのは寂しいからリンナさんに懐いているし、ここなら寂しい思いはないと思ったがダメなのか……。
「いいわよ、精霊ちゃんがいれば周りが華やかになるから大歓迎よ」
「ありがとうございます」
けど、精霊は納得いかないみたいだ……。
「精霊ちゃん、レイ君は精霊ちゃんのことすごく大事にしているから心配なのよ。わかってあげて」
リンナさんが説得すると頷いて納得してくれた。リンナさんの言うことは聞くのか……。
「よろしくお願いします。それじゃあ行ってきます」
「うん、行ってらっしゃい」
リンナさんと精霊は手を振りながら見送ってくれた。
城門を出て俺とアイシスは【身体能力】を使ってワイバーンの出現場所に向かう――。
――1時間後。
指定の場所に着くと、微かに魔力反応がある。
空を見上げると、上空に翼が生えた生き物が3体飛んでいる。
あれがワイバーンだとわかった。
1000mくらいの高さで飛んでいる。
今のところ何も起きていないが、周りに木が生い茂っている箇所があるからそこに火を吐かれて火事になっては大変だ。
さて、あの高さだと魔法が届きにくい、少し様子を見ることにするか。
――30分後。
大体500mの高さまで下がってきたな、ここら辺を飛び回っているけど、いったい何をしてるのだ? 習性がわからん。
まあ、この高さなら魔法で牽制はできるな。
『言い忘れてたけどワイバーンは氷が弱点だよ!』
それなら氷魔法を使うしかない。
「アイシス準備はできているか?」
「はい、いつでもいけます」
お互い同じ氷魔法を使い――。
「「――アイシクルランス」」
鋭い氷の槍をワイバーン目掛けて放した――それに気づいたのか、氷の槍を躱す。
そして――。
「ギャアァァァァ――――」
3体のワイバーンはこちらに向かってくる――。
「3体同時に向かってきてますけど、どうしますか?」
「取りあえず1体ずつ倒して、早く倒した方が残りを倒すってのはどう?」
「わかりました。それでいきましょう」
「それじゃあ、よろしく」
ワイバーンは50mくらいの高さに下がり、3体同時に火を吐きだした――。
それを避けて2体は俺の方に向かってくる――。
このタイミングで1体おとなしくさせるか。
思いっきり魔力を込め――。
「――アイスバインド!」
「ギャァァァァ!」
翼を凍らせて地面に落とした。近くで見えると全長10m以上はあるな。
これで1体に集中できる……その1体は突っ込んでくる――。
「――アイスソード!」
氷魔法で氷の剣を創り、右手に持つ。
突っ込んでくるギリギリまで引きつけ、避ける――その速さを利用して片方の翼に剣をあて、斬る。
「ギャアァァ!」
翼が切れてワイバーンは飛ぶことができずに、地面に落ちた。
その隙に背中に乗り剣を刺す――そして刺した剣に氷の魔力を込め――。
「――――氷波!」
ジワジワと氷漬けにして倒した。
アイシスの方は――。
「――――アブソリュート・ゼロ」
ワイバーンを一瞬で氷漬けにした…………容赦ないですね……。
さて、残りの1体は一応俺が早く倒したみたいだから仕留める。
翼を氷漬けにされたワイバーンは飛ぼうと必死にもがいている。
その間に仕留める。
この距離なら魔法のランクを下げても大丈夫だ。
「――――アイスランス!」
「ギャアァァァァ…………」
喉の辺りに氷の槍を放ち――刺して倒した。
『2人とも、お疲れ様! なんでレイは最後は「アイスランス」にしたの? 「アイシクルランス」の方が威力が高いのに』
「それは魔力が節約できるからだ。それに「アイスランス」の方が早く発動ができるからそっちにした」
『ふ~ん、いろいろと考えているね!』
確かに「アイシクルランス」の方が鋭くて確実に仕留められる。俺とアイシスが使えるオリジナルの魔法だ。
「アイスランス」は氷魔法中級者が使える一般的な魔法だ。
「アイシクルランス」は「アイスランス」の上位互換みたいな感じだが、その分魔力の消費が多いし、発動するのに少しだけ時間がかかる。
下手に連発して撃つと倒れてしまう可能性があるからそこは考慮しないといけない。
さてと、倒したワイバーンを無限収納に入れて報告に行かないとな。




