313話 不審者?
「なんでたくさんの小人族がいるんっスか!? 聞いていないっス!?」
ボロボロのコートを着た、角が生えた羊型の獣人で白髪でクセ毛が多い少女が大きな荷物を持って怯えていた。
怪しいとは思わないが、いろいろと聞きたいことはある。
「とりあえず降ろしてやってくれ」
「「「は~い!」」」
小人は気持ち良く返事をして少女を降ろした。
「た、助かったっス……」
「俺はここの領主だが、なぜここに?」
「領主様っスか!? 話が早くて助かるっス! あっしは王都の魔法大学――調合科を卒業したメメットっス! 貴族様の噂でスタンピードを終わらせた英雄様が遠い誰もいないところに領地をもらったと聞いてここまできたっス! けっして怪しい物ではないので領地に入らせてくださいっス!」
本当に噂で来るとは……っん? メメットってまさか……。
「メメットって言ったな本を出したことはあるか?」
「本っスか?」
メメットは首を傾げてわからないようだ。
しょうがない――。
「『リフィリア、屋敷前に来てくれないか?』」
「来たよ」
「ぬあっ!? 急に人が現れて…………精霊っスか!? こんな大きな精霊を見るのは初めてっス!」
リフィリアは「ゲート」を使って現れたのを見てメメットは腰を抜かす。
精霊ってわかるのか。リフィリアはメメットをジッと見つめて――。
「汚い……」
「いきなり酷いこと言うっスね!? これでも純粋な乙女っスよ!」
キレイ好きのリフィリアさんからしたら汚い――いや、俺から見てもかなり汚いか……。
純粋な乙女って自分で言うのか……。
「リフィリア、初めて買った調合書を出してくれ」
「これのこと?」
「アイテムボックス使えるっスね! これは……あっしの本っスね! いや~精霊が持っているなんて不思議っスね!」
「えっ? 作者なの?」
「そうっスよ! 卒業論文として書いた本っスよ!」
これが卒論かよ!? いやいやおかしいだろう……。
「なんで大事なものが売りに出されていた……?」
「教授にこの本を渡したらこれは卒業論文ではないと言って返されたっスよ。あっしは【調合師】のスキルがあるので、必要ないから屋台に売り飛ばしたっス。予想以上に売れて旅の資金になって助かったス!」
でしょうね……。おかしいと思った、なぜ、あの調合書が屋台で売られていたのは学生の頃に作成した本か……。
しかもやすやすと売ってしまうとはどんな神経をしている……。変人だな……。
噓は……言ってはないようだな。
「【調合師】スキルがあれば簡単に店を開けるぞ。なぜ旅を?」
「あっしはいろいろと研究をしているっス。店を開くなんて時間がもったいないっスからね。でもお金がない時は日払いで雇ってもらっていたっスけどね」
「学者的なことをしてるのか?」
「そうっスね! 珍しいのがないか探しに行きますのでそんなところっス! ちょうど、この領地が耳に入ったんすよ――なんで街から遠く離れているところに土地をもらっておかしいと思ったっス、何か面白いのがあって、ここの土地を選んだに違いないと、あっしの勘が働いたっスよ! まさか小人族が住んでいたとは驚いたっスよ」
そうきたか……。今後もメメットみたいな人が来そうだな……。
「よく1人で来られたな……。魔物に襲われただろう……」
「こう見えてあっしは逃げ足は速いっスよ! 危ない時は闇魔法で攪乱するっス。小人には簡単に捕まりましたが」
獣人だからそれなりには速いか。魔法大学に言っているし、魔法も使える。
本当みたいだな。
「まあ、それなら領地に入る許可は出すが、何もないぞ」
「本当っスか!? ありがとうございます! 何もないとか謙遜しないでくださいっスよ! あっしの知らない果実や穀物がたくさん植えていて、心がくすぐるっスよ! 少しだけ滞在しようと思ったっスけど、ここに住みたいくらいっスよ! というかここに住みたいっス! お金はないけど、永住の許可もお願いしたいっス。なんでもしますのでお願いします!」
えぇ……来たばっかりなのに永住かよ……。
いったい何を考えている……。
まあ、メメットからしたら未知の世界かもしれない。
『ん? なんでもと言ったね。じゃあ、身体で――』
「『するわけないだろう!?』」
『ちぇ、期待したのに……』
まったくエフィナは急に変なこと言う……。
さておき、【調合師】のスキルがあるならリフィリアの手伝いをするのもありか。
最近、王国騎士用のポーションとマナポーションを生産しているし忙しい。
リフィリアの負担が軽減される。
だが、どのくらい【調合師】としてのスキルがあるか確認はしたい。
「永住権がほしいなら。試験を受けてもらうぞ?」
「し、試験スか……? 内容はな、なんスか……?」
「調合でとあるものを作ってほしい」
次の更新は17日です。




