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309話 守り神の限界


 守り神のもとに駆け寄るとぐったりと倒れていた。

 魔力は……乱れて少ししか感じ取れない……。


『儂はもうダメだ……』


「そんなこと言うなよ……みんな悲しむだろう……。もっとみんなのために生きろよ……」


『本当にダメだ……儂も頑張ってきたが……こればかりはどうにもならん……』


『レイ……守り神の言うとおり限界だよ……。天界ではティーナたちがしっかりサポートしてくれるから安心して……』


 エフィナの発言に守り神は頷く。


『お主よ……世話が焼ける子たちが多いが……頼んだぞ……。儂からのお願いだ……』


 そう言うと小人たちは泣き始めて守り神に抱きつく。


「いやだ! いかないで!」

「死んじゃいやだ! もっと一緒にいたい!」

「いい子にするから、お願いいかないで!」


『最後まで世話が焼けるな……。最後くらい笑顔で迎えてくれないか……』


 そう言ってもみんな大泣きする。

 大切な神がいなくなるのは無理があるだろう……。


『妾も……もっといたいのじゃ――――!』


 シエルは涙をこらえていたが大粒の涙を流す。


『まったく……シエルまで……』


「守り神様……」


 ミツキさんは涙を流しているが、守り神には近寄らずに我慢をしている。


 

 …………なぜ守り神は簡単に諦めている。


 俺はもう誰も悲しませないと誓った。

 これで終わらせるわけにはいかない。



「悪いが、その頼みは聞けない。俺にはできない」


『なんでだ……? 儂はもう……』


「本当にそれでいいのか? まだやることがあるだろう?」


『何もない……儂は長く生きた……悔いもない……』


「本当か? これまで小人と一緒にいて悔いがないとでも? チトセと一緒にいた時間より長いだろう? それのどこが悔いがないと?」


『それは……』


 守り神は無言になる。


『レイ……それ以上は……』


「『エフィナ、何も言わないで見てくれ』」


 俺は守り神の本音を聞きたい。


「責任があるならまだ一緒にいろ。みんなに好かれて、愛されている。世話が焼けると言って放って置けないだろう? 本当はもっと一緒にいたいだろう?」


 その発言で守り神は小人を見て涙を流した。


『言わないでくれ……儂は死を覚悟したのに……その言い方はない……まだ生きたくなる……』


「それが本音だな?」


『ああ……そうだ……でももう遅い……目がかすんできた……』


 本音も聞けた。時間がない、すぐに準備をする。


『レイ……もしかして……』


 さすがのエフィナも気づいたか。


「『ああ、守り神を魔剣にする。そうすれば命は助かる』」


『…………止めはしないけど、その責任、一生背負うことになるよ。それでもいいのならボクは何も言わない』


 反対するかと思ったが、意外な発言だ。

 生命自体を魔剣にするのはアウトかと思ったが、大丈夫みたいだ。

 だが賛成はしていない、グレーってわけか。

 

 責任なんてとうに背負っている。


「『覚悟はしている』」


『わかった。だけど、一発勝負だよ。失敗なんて許されないよ』


「『わかっている。絶対に成功させる』」


 俺はみんなに大声で――。


「聞いてくれ、今から守り神を治す。だから離れてくれ」


 その言葉に小人は泣くのをやめて「お願いと」声をかける。


『治せるのか……?』


「イカサマをするが、心配しないでくれ。それと、これは大事だから言っておく。治したとしても守り神は今までとは違う姿になるが驚かないでくれ」


 みんなは頷いた。


「悪いな、最初に言ってなかったが、生きるための手段だ。それでもいいな?」


『構わぬ……お主に託した……』


 これで準備は整った。

 みんなは守り神から離れて治るようにお祈りをする。


「ここからは秘密なので見ないでくださいね……――ブラックアウト……」


 メアは闇魔法を使い、俺たちが見えないように周囲を暗くした。

 大助かりだ。思う存分集中できる。


 俺は守り神に手を当て、創造をする――。


 その瞬間、視界が変わり、暗闇の中――無数の稲妻が走る場所にいた。

 奥には守り神が寝込んでいる。近づこうとすると、稲妻が俺の目の前に落ちる。


 なるほど、これをクリアしなければ魔剣にはさせてはくれないか。

 助けてやるから逃げないでくれよ。


 俺はゆっくり歩き、守り神のほうに向かう。

 歩いた瞬間、稲妻は激しさを増し、俺に直撃をする――。


 なんだ……焼けるような痛さは……。

 ここは精神世界だとわかるが、痛みもあるのか……。

 これは守り神が背負ってきた痛みか?


 だったら全部受け止めてやる。


 俺は稲妻に撃たれながら歩き続ける――。


 痛みに耐えて半分の距離を進んだ。

 距離を縮めているが、稲妻を受けて進むのは堪える……。

 進んでも進んでも遠い感じだ。


 守り神は徐々に暗闇に飲まれている。

 時間がない……耐えて進まなければ……。


 一歩前に進んだ瞬間に大きな音が鳴り、先ほどとは違う紫色の稲妻が直撃する。


「――――ガハァ!?」


 あまりの痛さに声を上げてしまい、膝をついた……。

 

 なに立ち止まっている……。

 

 守り神と小人の辛さに比べたら軽すぎだろう……。


 自分に鼓舞しながら立ち上がり、進む――。


 だが、容赦なく稲妻が俺を襲う――。


 激痛が走るが、俺は止められない――。





 ――耐えて。



 ――――耐えて。



 ――――――耐え続けた。

 

 


 やっと守り神のそばに近づいた。


 精神世界なのに身体がボロボロで気が失いそうだ……。

 ここからが本番だ。


「待たせたな……。お前の痛み、辛み……確かに受け取った……。安心してくれ……もう背負うものなんて何もない。俺に身を任せてくれないか? これは俺とお前の責任でもある。だから……一緒に小人たちの行く末を見よう……」

 

 この言葉で守り神は涙を流し、暗闇が消えて、光――雷光で視界が眩しくなる。


 元の場所――精神世界から帰ってきた。


 そして目の前の守り神が輝き、頭の中から魔剣が浮ぶ。


 待たせて悪いな、今解放してやる――。




「帰ってこい――――雷の魔剣(守り神)!」



 周囲は雷で覆い、大きな音が鳴り響く――そして()()には紫色をしたバチバチと鳴る雷の魔剣を持っている。


『儂は……助かったのか……』


「『ああ、早く【人化】してくれ。魔剣だと不便だぞ』」


『わかった……』


 俺は雷の魔剣(守り神)を地面に起き、輝いて姿が変わる――紫髪をしたスーパーロングで、狐型のケモ耳で大きな尻尾があり、巫女が着るような服装で、上が白ピンクの着物、下――赤紫色の袴を着ていて、身長は150㎝前後と小柄の女性だ。


「まさか人の姿になるとは……不思議だ……」


 自分の身体に驚いているところ悪いが、まだやることはあるぞ。


 メアは成功したことがわかると闇魔法(ブラックアウト)を解除してみんなに見えるようにする。


 小人たちは守り神の姿を見て固まり、沈黙する。


「やはり、この姿だとわからないか……」


 いや、そんなことはないぞ。

 ほら――。



「「「ま、守り神様!」」」



 小人たちは泣きながら守り神に駆け寄り抱きしめる。


「これこれ……。泣くのではない……喜ばないか……」


 そう言って守り神も涙を流した。


 落ち着くまでこのままにしておく。

 俺は疲れてゆっくり…………またこのパターンですか……視界が暗くなり気を失った。

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