308話 帰宅後のこと
領地に帰ってきて数日が経つ。
マナの木の周辺に植えた桜の木が満開に咲いていた。
みんな作業をやめてお花見をすることになった。
お弁当やお酒などを用意し桜の木の下でシートを敷いて始まる。
あまり姿を見せない守り神もお花見だけは一日中姿を見せる。
というか桜が満開になっている時はここにずっといるだろう。
ここに来た時はずっと花が咲いている場所にいてシエルとのんびりして落ち着いた様子だった。
不思議なことに乱れていた魔力が少し安定をしていたことだ。
『花が好きだから癒される。こう見えて儂は乙女だからな』
乙女は関係があるのか……? まあ、花が精神安定剤のようなものならいいか。
小人のためにももっと長生きしてほしい。
桜の花が散った頃にミルチェは覚悟を決めた。
「僕、契約するよ」
その言葉に地と闇の精霊は大喜びをしてミルチェの周りを回る。
返事に時間がかかった――「自分が相応しい相手なのか」「こんな平凡な人間が契約していいのか」
と本人はいろいろと悩んでいたらしい。
過小評価しているが、精霊に好かれているから問題ない。
リフィリアは不安だったミルチェを契約するように説得していた。
大精霊がそこまでしてくれるのは認めている証拠だ。
それでも俺に相談をしてきたが、俺もリフィリアと同じようなことを言って契約するように急かした。
もう2人――ソウタとスカーレットさんにも相談をしようと思ったが、いろいろとお取込み中で無理だった。
契約すると言ってみんなミルチェに集まり緊張が走る。
エフィナは大丈夫だと言っているが万が一なことを考えて、マナポーションと回復魔法の準備はしている。
ミルチェは多くの人が見守る中、深く深呼吸をし、2人の精霊は輝き始める――。
「それじゃあ、始めるよ――闇の精霊はベーラ! 地の精霊はジゼル!」
名を呼ぶと、2人はさらに輝き、闇――ベーラの身体はソウタの精霊たちと同じ大きさなり、地――ジゼルは少し大きくなった。
「よろしく、ミルチェ様!」
「よろしくお願いします。ご主人様」
「うん……これからよろしくね……」
契約は完了したが、ミルチェは膝をついてかなりの疲労だ。
アリシャ、ガルク、アミナが駆け寄りマナポーションを飲ませる。
「お疲れ様、しっかり休んでね」
「まったく……無茶しやがって……」
「良かった……本当に良かった……」
3人は涙を流しながら喜んでいた。
幼なじみだから自分のことのように嬉しいよな。
今日は祝いだ。
「契約されたか。まあ、相性ならしょうがない」
ソウタは潔く諦めた。
切り替えが早くて良いところだ。
「あら~そんなに落ち込まなくてもいいのよ~。ワタシがたっぷりと慰めてあげる~」
「俺は落ち込んでいないぞ!? やめろ――――!?」
ソウタはトリニッチさんに無理やり連行されていなくなりました。
メアさん……楽しそうに【隠密】を発動しながら追わないでください……。
トリニッチさんが来たことに4人婚約者と精霊たちの仲を取り持ち、今のところ問題は起こしてはいない。
逆にトリニッチさん来て正解だと思った。ソウタは毎日大変だが……。
ミルチェに確認したところ【無詠唱】、闇魔法中級、地魔法初級を覚えたらしい。
契約したとはいえ、成長盛りだ。今後の期待ってことで。
その後、ベーラとジゼルはしゃべれるようになったから、ほかの人と交流を持つ。
今までミルチェに契約してくれと離れていなかったからな。
特にルチルと一緒にいることが多い。
『まさかルチルに母性があるとは……』
いや、精霊と同じ魔力を持っているだけです。
「いつもエフィナはわけがわからないことを言う! ただ遊んでいるだけだもん!」
『なっ……理解に苦しむ……』
いつもどおり反論できなく会話が終了しました。
――――◇ー◇―◇――――
――あれから2ヶ月くらい経つ。
みんなが住める家が建てられて順調に進んでいる。
水回りも問題なく機能して衛生的でいい感じだ。
あとは自分たちでなんとかできるからお手伝いを来てくれた人にお礼を言って解散させる。
「もっとお兄さんと一緒にいたかった。もう少し待ってね」
スカーレットさんはそう言って騎士たちと王都に戻る。
手伝いのドワーフの人も帰っていったが――。
「まだ終わっていねぇ! 天使たちがもっと幸せに暮らせるまでここにいる!」
「私も!」
ヤーワレさん率いるギルドメンバーとミミルカさんは残るようです……。
それ以上いてギルド運営大丈夫なのか……。
手伝ってくれるのはありがたいが。
とにかく、みんなが落ち着いて暮らせる環境はもう少しだ。
そんなときに――。
『大変じゃ、早く来てくれないか! 友の様子が変なのじゃ!』
作業をしている途中にシエルが慌てて飛んできた。
まさか守り神が……。
みんな中断をして花畑にいる守り神のところへ向かう。
次の更新は7日です。




