302話 精霊を助ける
「今助けて――」
『ちょっと待った。「マナチャージ」はやめてね。まだ幼すぎる、刺激が強すぎて何が起こるかわからないよ。マナポーションで』
刺激が強いのか、エフィナの言うとおり無限収納からマナポーションと飲みやすいように小皿を出して注ぐ。
「大丈夫だから飲んで」
差し出すと、俺の顔を伺い、怯えるのをやめてゆっくりと口にする。
飲み終わると、半透明だったのが、はっきり見えるようになった。
危ない……いつ消えてもおかしくない状態だった。
地の精霊は元気になり笑顔で俺にお辞儀をし、折りたたんでいた羽を広げて、外に出る。
お仲間に元気になった姿を見せたいみたいだ。
だが、闇の精霊を縛られているのを見ると、青ざめてオドオドする。
「このおチビちゃんを返してもらいたいのであれば、ワタクシにひれ伏しなさい……」
「冗談はよせ、問題は解決したから縄をほどいて自由にしてくれ……」
「もう少し楽しみたかったのでしたが……。わかりました……」
楽しみたかったとはいったい……。
メアは闇の精霊を解放して木の下でそっと置き、地の精霊は起きるまで見守る。
「まさか神木の中に精霊がいたとは……。レイ殿が気づかなかったら大怪我したであろう……」
「本当によかったですよ。しかし、精霊の住処になっているので、他の神木はダメですか?」
「そうだな、まだ奥にも立派な神木がある、それにしよう」
さらに奥に進み、2番目に大きい神木を切り落とし、ソウタはアイテムボックスで回収する。
用が済んだが、この子たちを放置するわけにはいかない。
精霊3人も気になるようで、目が覚ますまで待機をする。
――数分後。
闇の精霊が目を覚ますと、地の精霊は笑顔を見せる。
元気な姿でいることがわかると、涙を流して抱きついた。
やっぱりこの子を守っていたのか。
「長老、この子がいつくらいに姿を現しましたか?」
「3ヶ月くらい前だ」
まだ魔物が大量発生していた頃だ。
ここは魔力も良いから安全だと思って移動したか。
地の精霊は長期間よく頑張ったな、ここで魔力維持できていても危ない状態だった。
いろいろと聞きたいものだ。
「落ち着いたようね。私たちに攻撃したこと謝りなさいよ」
プロミネンスが言うと闇の精霊は再び嚙みつこうと襲いに掛かろうとするが、地の精霊が両脇を抑えて止める。
「何よ、アナタが悪いのになんで私が謝るわけ!」
会話が成立しているな。精霊特有の意思疎通をしているのか?
まあ、だいたい予想はつく、頭突きを受けて怒っているみたいだ。
「もう済んだことですわ……。おチビちゃん同士仲良くしなさい……」
メアが仲裁に入ったが、お互い睨んでピリピリした状態だ。
「はぁ……しょうがないですこと……。今回は特別です――――ゲート……」
そう言いながら空間魔法を使い消えていった。
特別? どこに行った?
あっ、長老が驚いている。ソウタが説明をして納得した。
「戻ってきました……さあ、お願いしますわ……」
十数分に、メアが戻ってくると、リフィリアが一緒に来た。
なるほど、大精霊に止めさせようとしますね。
当然だが、初対面の方は大精霊を見ると驚きます。
闇と地の精霊は飛ぶのをやめて地面へ膝をつく。
「ケンカはよくないよ。みんなで一緒に仲良くしようね」
闇は汗を垂らしながら大きく頷く。
気性が荒かった精霊もおとなしくさせるとは、さすがリフィリアです。
というか、なぜプロミネンスが胸を張って自慢げにいるのだ……。
「せ、精霊なのだよな……?」
「ああ、レイの契約している大精霊だよ」
「だ、大精霊だと!? レイ殿はいったい……」
長老は俺を見て動揺する。
説明が面倒なのでソウタに丸投げしよう……。
「メアから聞いたけど、どうして攻撃をしたの?」
闇の精霊は震えながらもリフィリアの顔を見て、意思疎通を図る。
「そうなのね……。大変だったね……もう大丈夫だよ」
理解したのか、闇と地の精霊を抱き、その2人は涙を流して大泣きをする。
「何があったか聞いていいか?」
「この子たちはね――」
リフィリアが言うには――ここに来る前は2人は他の場所で楽しく暮らしていたが、急に魔物が現れて住処である森を荒らされて逃げたらしい。
まだ幼い地の精霊は魔力が不安定で急な移動で姿が維持ができなくなってしまったようだ。
そして魔力があるここに辿り着いたという。だが、完全に回復するほどの魔力はなく、半透明のまま頑張っていた。
それで闇の精霊はここを荒らさないようにと地の精霊を守っていたみたいです。
なるほど、神木がなくなると消えると思ったか。
「だからマスター、私たちの土地に住ませてもいいよね?」
そうなるか、まだ幼い2人だ。安全な場所に移動させないとな。
「いいよ。大歓迎だ」
「ありがとう。良かったね、2人とも、これから私たちと一緒に暮らせるよ」
その発言で2人は笑顔になりリフィリアの周りを回る。
まあ、リフィリアが来たらそうなるとは予想はついた。
なんだかんだリフィリアを呼んだメアはいろいろと配慮しているな。
「メア、ありがとな」
「お褒めの言葉ありがとうございます……。おチビちゃんでなかったら……お仕置きをしていました……。今回は特別です……」
うん、精霊でなかったら大変なことになっていましたね……。
「じゃあ、リフィリアはこの子たちを連れて戻るか?」
「そうしたいけど……。開拓で魔力を多く使って戻れないの……。一緒にいてもいい?」
そうでしたね……。開拓ご苦労様です。
「わかった。じゃあ、この子たちの面倒はよろしく」
「もちろん」
これで問題を解決した。あとは村に戻ってお守りができるまで待機だ。
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