301話 気性の荒い精霊
「ワタクシたちは遊びに来たのではありません……。つまらないイタズラですこと……」
闇魔法――ファントムを使って、トロールの幻影を映し出している。
闇の精霊か、メアの言うとおり俺たちには無意味だ。
「帰れ」と忠告は受けているようだ。
「長老、このまま進むのか?」
「そうだな、まだ攻撃して――」
「危ない――――ウインドシールド!」
トロールの幻影をすり抜けて「シャドウアロー」が長老に襲い掛かり、ソウタは前に出て片腕に風の盾を出して防ぐ。
「ふぅ……危なく怪我するところだった」
長老はソウタに守られて顔を真っ赤にする。
「こ、このくらい、よ、避けられたぞ!」
「万が一もあるしな、もし長老が怪我をしたら村の皆は大騒ぎになるからな。それよりも……説得できるのか?」
再び「シャドウアロー」を無差別に放ってくる。
気が立っているな、防がれたのが悔しいのか?
「いい加減にしなさい! 私は同族よ! 攻撃をやめなさい!」
プロミネンスが大声で叫ぶが、変わる様子はなかった。
説得は無理そうだな。
「魔法を連発しているなら魔力消費させて自滅に追い込むのがよさそうだな」
「俺も賛成だ。長老、それでいいか?」
「ああ、任せるぞ」
それなら簡単だ――。
「――――アースウォール!」
土の壁を創り、「シャドウアロー」を防ぐ。
さて、次は何を仕掛けてくる。
――数分後。
まだ攻撃を続ける。意外にタフだな。
土の壁を壊せると思っているのか?
まあ、このまま自滅してくれるのなら楽だが。
――さらに数分後。
攻撃をやめて静かになった。
魔力が尽きたか? いや、違う、俺たちに向かってくる。
はっきりと見えないが、黒髪ショートの少女精霊だ。
【隠密】のスキルを使っているな、俺たちの上に移動して、詠唱をする――。
諦めが悪いことで。
「そんなにかまってほしいのですか……。つまらないからおとなしくしなさい――シャドウバインド……」
メアはあくびをしながら闇魔法――周りの木から影を出して闇の精霊を捕まえて拘束をする。
【隠密】は解除されて、はっきりと見えるようになった。離れようと暴れている。
「活きのいいおチビちゃんですこと……」
「アナタ、同族である私を攻撃するとはいい度胸ね! 無駄な抵抗はやめなさい!」
プロミネンスの言葉に反応しなく、それどころか嚙みつこうとする。
「うぅ……怖い……」
「品がありませんね……」
同族を見て落ち着くと思ったが、変わらないな。
精霊はみんな仲がいいと思ったが違うのか。
性格の問題か。
『この子、まだ幼いね~。生まれて10年くらいかな?』
エフィナの言うとおり顔は幼く見える。
年齢はわからないが。
あっ、プロミネンスが怒りそうだ。
「私を無視するな!」
プロミネンスは頭に魔力を出して、闇の精霊に頭突きをする。
ゴンっと鈍い音がすると、闇の精霊は白目になり、おとなしく――気絶をする。
「説得したわよ! 早く神木を採りましょう!」
説得とはいったい……。
物理的解決ですな……。
「そうだな。この子が起きる前に採らないとな。あとのことは終わってからだ」
そうなりますな、念のために闇の精霊をロープで縛り、メアが持ち運ぶことになった。
「おとなしくしていれば、かわいいですこと……」
メアさん、獲物ような目で見ないでください……。
変なことはするなよ……。
奥の方に進むと――周りの木々は魔力を放っている。
「これが神木だ」
マナの大樹と同じだな。まあ、魔力の放出量は少なめだが。
「奥に上質な神木が生えている、そっちに行くぞ」
さらに奥の方に進むと、周りよりも一回りほど大きい神木があった。
ん? 亀裂が入っているところに違う魔力を感じるぞ。
「申し分ない、これにしよう。すまないが切るのを手伝ってくれ」
「ちょっと、待ってくれ。確認したいことがある」
亀裂の箇所をナイフで切って広げると――中は空洞で、茶髪ロングの幼い精霊が怯えていた。
この子を守っていたのか。
『地の精霊だね。けど……』
魔力が少ないし、身体が薄くなっている……。
この子が危ない。
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