300話 闇の魔剣、説得する
――翌日。
長老の家で一緒に朝食――キノコのクリームシチューを食べているのだが、長老はソワソワして落ち着きがない。
昨日は大量に飲んでいても覚えていますね……。
「長老さん、どうしました……? 体調でも悪いのですか……?」
「ち、違うぞ、なんでもない!」
「そうですか……。言えないことがあれば、ワタクシにいつでも相談してくださいね……」
メアは長老の反応を見てクスクスと笑う。
ああ、神木採取行くのに気まずくなるの確定だ……。
まあ、今回の件は俺には関係ないし村でゆっくり――。
「レイとメアもついて行くよな?」
「なんで? この件は俺たちがいても役に立たないぞ」
「いや、もしものことがあったらな、長老もいいだろう?」
「そ、そうだな、ソウタが見込んでいるなら良いぞ」
行っていいのか……。
まあ、精霊がいるのは気になるが。ソウタはともかく部外者の俺たちもいいとは……。
「『計画どおりですこと……』」
えぇ……同行できるように仕組んだのか……。
『さすがメアだね~。今日も楽しい1日になりそうだ~』
この2人は……。大事になっても知らないぞ。
朝食を終え、出発の準備をする。
俺たちは村の入り口で長老を待っていた。
「待たせて悪いな、行くとしよう」
長老は軽装の鎧と銀の拳銀の脚を装備してきた。
格闘士だったのか、だから村人を簡単に腹パンできるのも納得です。
「魔物は俺たちが対処するから、整えなくてもよかったのに」
「な、む、村の外は危険だぞ! あ、甘くみるのではない!」
「大丈夫さ、そのときは俺が長老を守ってやる」
ソウタは爽やかに言うと、長老は真っ赤になる。
見送りきた村人たちはニヤニヤがとまりません。
「ハハハハハ! だってよ長老、すべてソウタに身も心も――――ゴブヘッ!?」
「う、うるさい! と、とにかく行くぞ!」
ゲラゲラ笑っている村人に腹パンをして先に行ってしまう。
うわぁ……武器を装備して殴られるのはひと溜まりもない……。
「みんな、おばあちゃんをよろしくね」
「ああ、安心して待ってくれ」
ララアは大きく手を振り、村人たちは見送ってくれた。
作られた土の階段下り、村を出て森の中に入った。
長老は駆け足で進んでいく。
「おーい、長老、神木は右の方向ではないのか?」
ソウタの声でビクッと反応し、足を止める。
間違えましたね……。
「そ、そうだが、最近魔物がいたから危険だ! 遠回りして行くぞ!」
「魔物? 反応もないし大丈夫――」
「いいから進むぞ!」
「待ってくれ!」
無理やり押し通しましたね……。
ソウタを意識しすぎでは?
「予想通りで面白いですこと……」
『いや~年関係なく初々しいね~見てておもしろいよ~』
遠足ではないのだから……。
これだと時間がかかりそうだ。
「あの破廉恥エルフ……危ないわね……」
「なんとしてでも……阻止をする……」
「気を抜いてはいけませんね……」
さすがの精霊も意識していることに気づいた。
「おチビちゃんたち、恋路は邪魔してはいけませんわ……」
「恋路ですって!? 私は大反対よ! これ以上増やしたら大変なことになるわよ!」
「「そうだ、そうだ」」
まあ、いつもどおり反対です。
あの双子よりダイナマイトボディだから絶対に認めないな。
「では……考え方を変えてみてはどうでしょう……? お二人が結婚するしますと良いことだらけですわ……」
「「「絶対にない」」」
頑固たる意志です。
というかこの3人をアイシスみたいに説得できないぞ。
なぜかメアはにやついている。
「これだからまだまだおチビちゃんですこと……。もし、長老さんが結婚したらどうなると思います……?」
「「「ロクなことがない」」」
「ロクなことはなんて一つもないのに勘違いしていますわ……。よく聞きなさいおチビちゃん……仮に結婚しますと、他の女性は寄ってきませんわ……」
メアの発言に精霊たちは首を傾げる。
「まだわからないのですか……? 長老は誰よりも豊満な胸をお持ちでむっつりなお兄さんはその胸でしか満足できなくなりますわ……。この意味がおわかりですか……?」
いやいや胸が大きければいいわけないだろう……。
そんなことで――。
「じゃあ、ソウタはこれ以上他の女性の胸を見ないで興奮しないってこと?」
「そうですよ……。もしむっつりなお兄さんが長老さんと結婚しないのなら、また同じことの繰り返しですわ……」
「そ、それは嫌よ!」
「うぅ……嫌だ……」
「良くありません!」
「でしたら長老さんと結婚をしたほうが都合が良いですこと……」
精霊たちは頭を抱えて悩んでいる。
噓だろう……こんなことで引っかかるのか……。
「フフフ……時間はたっぷりあります……。良い返事を期待してますわ……」
そう言いながらメアは長老とソウタの後を追う。
…………精霊を困惑させてどうする!?
というか今言うことなのか!?
こんな様子で神木採取できるのか……。
「メア……神木を手に入れなかったら責任取れよ……」
「もちろんですわ……。でなければこんなこと言いませんこと……」
まったく……面白がるのもこのくらいにしろよ……。
まあ、責任は取るならまだいいか。
――1時間が経過した。
長老はまだ意識しているのか小走りで進み、精霊――3人は後ろで相談しながらついて行く。
「皆、どうしたんだ?」
ソウタ気づくの遅いぞ……。
「いろいろと疲れがあるのでしょう……。そっとして置いたほうがいいですわよ……」
「そうなのか? わかった」
ソウタも鵜吞みにするな……。
しかし、だいぶ奥まで入ったな、周りは薬草や色鮮やかな葉が生えている。
魔物らしき反応はないが、精霊みたいな魔力を感じる。
「もう少しで着く、精霊が魔法で攻撃してくるから気をつけろ」
説得だが、警戒はしたほうがいいな。
「――――ブガァァァァ!」
その叫び声でトロールが出てくる。
それも、十数体と――。
みんなは慌てず、わかっていた。
なるほど、歓迎はされていないな。
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