298話 精霊使いの責任
なんだこの空気は……。
ソウタは汗を流して緊張して、長老は真顔でお茶を飲み、息子夫婦と孫は笑顔でいる。
無言が数分続いている……早く終わらせてくれないか……。
長老は一息ついて口に出す――。
「ララア、本気でソウタと結婚したいのか?」
「うん! ソウタと約束したからね!」
「ララアは本気のようだが、ソウタはどうだ?」
「ララアが本気なら受け入れるよ。約束はしたしな。ただ……」
ソウタは息が詰まる。
結婚相手が3人いるしな。
「ソータが言わないなら私が言う! ソータは3人と婚約を結んでいるのよ!」
「「「ええっ!?」」」
プロミネンスの発言で周りは驚く、まあ、そういう反応になるな。
『おもしろくなってきたね~』
「『面白いですこと……修羅場を見せてください……』」
エフィナとメアは何を期待している……面倒事はごめんだぞ……。
長老は驚かないで再びお茶を飲む。
「十数年経っていればおかしくはない。ララア、それでもソウタと結婚する気はあるか?」
ララアはあまりのことで言葉が出なく呆然としている……。
本人はかなりのショックだな。
息子夫婦は何も言わないで見守っている。
すぐには返答はできないな。滞在する期間は5日くらいと予定している、それまでに――。
「わ、私は……ソウタが大好きだから結婚する! 何十人、何百人いても絶対に結婚する!」
ララアは大声で言う、即答だ。
それほどソウタに一途ってわけか。
「わかった、結婚を認める。キューク、クミーも良いな?」
「ソウタなら大歓迎だよ」
「娘の幸せは私の幸せでもあります。喜んで」
「ということだソウタ、ララアをよろしく頼むぞ」
家族に許可をもらうと、村人たちは歓声を上げる。
あっさりと話が進んだな。
とにかく一途で純粋な子だからしっかり幸せにしろよ。
今後、修羅場があったとしても俺は止めないからな。
『ちぇ、何もなかった』
「『期待しましたが、残念ですこと……』」
2人とも期待をするな……素直に祝ってください……。
あとは精霊たちは認めるだろうか。
「ララアは微妙なラインね……」
「うぅ……大きくもなく小さくもない……」
「リフィリア様よりは小さいが微妙なところです……」
どこを基準にして言っているのだ……。
「「「よし、保留で」」」
精霊たちは頷いて決まった。
保留とかあるのかよ……。決めないで引きずると大変なことになるぞ。
「結婚を認めたが、一緒に住む場所はどうする? この村に住むなら婚約者も歓迎するぞ」
知らない婚約者も受け入れるとは優しいな。こんな環境めったにないぞ。
「ありがたいが、俺はレイの領地に住んでいる。ララアはきっと喜ぶ場所だ」
「まさか……まだ幼く見える青年が領地に持ちと? 魔力は只者ではないとは思ったが……」
「ああ、こう見えてレイはプレシアス大陸の男爵だよ」
「「「ええっ!?」」」
みなさん、いい反応ありがとうございます。
すっかり俺が貴族であることを忘れていた。
これが普通の反応ですよね。
「そういうソウタも士爵じゃないか」
「「「ソウタが貴族に!?」」」
「貴族と言っても偉くなったわけではないからな。今まで通りだ」
「私も予想外だ……。さておき、ララア、村を出て行くが良いか?」
「ソウタと一緒ならどこでもいい!」
「わかった。レイ殿、其方の領地にララアを住ませて良いか?」
「まだ未開拓ですけど、本人がよろしければ」
「感謝する。ララアいつでも出ていけるように皆に挨拶するのだぞ」
「うん! けど……旅の儀をしないといけないだよね……。大丈夫かな……?」
「大丈夫だ。孫のために絶対作る」
「ありがとう、おばあちゃん!」
「ちょうど精霊がいるから説得してもらえるしな」
「旅の儀に精霊と関係あるのか?」
「問題が起きてな精霊に頼んでほしい」
話が進んでいてわからん……。
「旅の儀?」
「村から出る人は外の世界でも安全でいられるようにと、旅の儀をやるんだ。それをやらないと村から出られない。俺もその儀を受けた」
古いしきたりみたいなものか。
「旅の儀に必要なお守りを作らないといけない。それに使う神木を使用するのだが……」
長老は重いため息をつく。神木?
「まさか神木が荒らされたのか?」
「いや、違う。神木の周辺に精霊が住み着いて少々厄介に……」
「精霊が住むのはいいことではないか。なんで厄介?」
「神木の近くに寄ると攻撃してくるから大変なのだ。自分の縄張りを荒らされると思っいるかもしれない」
「なるほど、説得はしたのか?」
「試みたが無理だった。幸いに住み着いたあとに、旅の儀をする者はいなくて助かるが」
なんだその精霊は、気性が荒いな。
まさか精霊が住み着くとはな。いや、プロミネンスもいたからおかしくはないか。
ここの周辺は精霊にとって本当に居心地がいい場所かもしれない。
「それで精霊同士で説得させようと」
「そうだ。契約者であるソウタも説得できると思う。頼んでもらえないか?」
「わかった、ララアのためだ。喜んで引き受けるよ」
「ありがとうソウタ! 大好き!」
ララアは喜んでソウタに抱きつく。
「帰ってきたばかりですまないな、ソウタは神木の場所はわかるか?」
「悪いがうろ覚えだ」
「そうか、では私が案内しよう。だが、今日は遅いから明日でいいな? このあとソウタが帰ってきた宴の準備をしないといけないしな」
「ありがたいが、俺のためにそこまでしなくていいぞ」
「何を言うか、ソウタは私の大事な家族だぞ――はっ!?」
その発言で周りの人はにやつきている。
「と、とにかく宴は絶対だぞ! 私は準備をしてくる!」
そう言って長老は顔を赤くして外に出る。
うん、わかりやすいな。
「長老、素直じゃないな~。このまま長老も――――ブヘッ!?」
外で鈍い音がしたが、気のせいかな?
宴か、じゃあ、俺も料理の手伝いはしよう。
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