297話 一途な孫と祖母
「ソウタのお仲間さんや、できれば少し距離をとってくれないか? ララアがすごく嬉しそうだから」
「わかった」
村人の言葉で俺たちは距離をとる。
2人の世界させたいのですね、わかります。
「なあ、ソウタとララアが結婚の話になっているが、周りの目は大丈夫なのか?」
「ララアは毎日のようにソウタと結婚するとか村中に言っていたから応援したくなるよ」
毎日とはすごいな……それだけ一途ってわけか。
もし2人がそうなる? そうなるとララアが村を離れることになる。
その前に2人――3人の結婚相手がいるから受け入れてくれるだろうか。
まあ、ソウタがしっかり説明をするだろうな。
「けど、長老の家で何を話すのだろう? 長老のことだから「100年早い」と言いそうね」
「長老はララアには甘いぞ。2人を祝福してくれるよ」
「そうかな~。僕が思うに長老はソウタのことが好きだから先に長老と結婚して、次にララアが結婚するかもね」
村人たちはいろいろと話を膨らませる。
ん? 長老と結婚?
「長老はソウタが好きなのか?」
「好きも何も両思いだよ」
はい? 両思い?
「長老に夫はいるだろう……? 両思いって……」
「ああ、長老の夫は子どもができたあとにすぐ他界してしまってね。200年経つが再婚はしていないよ」
長老の夫、災難だな……。
「そうなのか。それでソウタを好きになった経緯は?」
「他界した夫に似ていたらしい。顔も性格も。本人は我慢していたのか告白しないで、ソウタは旅立ってしまってね。あの時は落ち込んで後悔していたよ。ソウタが帰ってきて無表情で出迎えていたけど、内心は大喜びだよ」
そんなことが、長老もその孫もソウタが好きとはなかなかに複雑だ。
「あの破廉恥エルフ、まだソータのことが好きなの!?」
ソウタの近くにいたプロミネンスに聞こえたのか慌ててきます。
地獄耳ですな。
「そうだよ。たまにだが、「ソウタ……」ってこぼして言っていたよ」
「破廉恥エルフ……諦めなさい……」
やっぱりダイナマイトボディの人に厳しいですね。
「プロミネンスが邪魔しなければ結ばれたのかもしれないなー」
「というかソータは破廉恥エルフのこと好きではないでしょう!? 今まで好きとか一言も言ってない!」
「そうかな? 長老が怪我したときは軽傷でもお姫様抱っこして紳士的だったし、話しているときは目を会わさずに下を向いて照れていたから絶対両思いだよ」
「なっ……私がいないところでそんなことが……」
プロミネンスは頭を抱えて青ざめていた。
多分だが、胸を見ていたでは……?
ソウタならあり得そうだ……。
『ソウタがそんな趣味があったとは……ボクの想像を上回っている……』
「未亡人にも手を出すなんて、驚きですわ……。そのうち人妻まで寝取りそうな勢いですこと……」
またエフィナとメアは変なことを……。冗談だとは思うが。
奥に進むと、周りはお花に囲まれた大きな家の前で長老とニットを着た白銀の髪をしたスリムな男性エルフに、カーディガンを着た金髪ロングの女性が待っていた。家族かな?
「「おかえりなさい。ソウタ」」
「ただいま、キューク、クミー。久しぶり」
「長旅だったろう。さあ、中に入ってくれ。お客さんもどうぞ」
家の中に入り、リビングらしき場所に案内され、イスに座りお茶――ハーブティーが出る。
いい匂いだ。この地で採れるハーブかな?
「自己紹介がまだだったね。僕はキューク。長老の息子だ。そして妻のクミー。よろしくね」
俺たちも自己紹介する。というか俺たちも入ってよかったのか?
これから大事な話をするのに。
しかも村人たちは帰らないで勝手に窓を開けて聞こうとしている……。
長老家族は気にしてはいないみたいだが。
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