296話 精霊使いの約束
「魔物が大量発生で大変だったが、皆は大丈夫か?」
「少し被害があったが、魔王軍と冒険者がこの村に来てくれたおかげで皆、無事だよ」
まさか魔王軍が辺境みたいなところまで来てくれるのか。
冒険者でも対処が厳しかったのかもしれない。
「私を無視するな!」
「悪い、悪い。プロミネンスも久しぶりだな」
村人たちは笑いながら返す。
みんなソウタに夢中でプロミネンスに気づいていなかった。
顔を膨らましながら怒っている。
悪気はないとは思うが。
「ソウタが来たって本当!?」
村の奥から走ってくる――白銀の髪をしたポニーテールで緑色のブラウスを着た美女エルフが向かってくる。
その人はソウタだとわかると――。
「あ……あ、会いたかったよ! いつまで待たせるつもりだったの!」
「えっ? ちょ――」
涙を流して思いっきりソウタに飛びつき、そのまま地面に倒れる。
まさか美女を長年待たせるとは、どういう神経をしている。
たまには顔くらい出せばいいのに。
「久しぶり! もう離さないから!」
そう言ってソウタを強く抱きしめる。
長年待っていたのに、怒らないとは優しい人だな。
その本人は首を傾げている。
おいおい、美女エルフだぞ……まさか忘れたとは言わないだろう……。
「誰?」
プロミネンスも首を傾げる。
ん? プロミネンスが知らないだと?
「プロミネンスちゃんも久しぶり! 私のこと忘れたの?」
「あなたほどの美人知らないわよ! というかベタベタしないで離れなさいよ!」
「美人……」
美女は赤くなって照れている。
「はは、わからないのも当然だな。この子は長老の孫――ララアだ。キレイになったろ?」
「あのララアなのか!? 大きくなったな!」
「あの小さかったララアなの!?」
「そうだよ! 私を忘れたとは言わないよね?」
「いや、忘れるわけがない。小さかったララアがこんなに大きくなるとは意外だな。もう21歳くらいか?」
なるほど、幼い子が大きくなったってことか。
それじゃあ2人ともわからないな。
しかも長老の孫に好かれているとはやりますね。
「うん、私が成人になっても帰ってくるの遅すぎ! 約束はしっかり守っているよね?」
「約束? 約束ってまさか……」
「えっ!? あの約束本気だったの!?」
「私が成人したらお嫁さんしてくれる約束でしょ! 忘れてないでしょ!」
ララアの発言でティアとブリーゼが固まる。
「その話聞いてない……」
「なぜこんな大切なことを言わないのですか……」
「大変なことになったわ……2人とも後で会議するわよ」
「「うん」」
ソウタに相応しいか見極める会議かな?
『あ~まさかソウタが幼女に手を出すとは意外にやるね~。そんな趣味があったなんてボクはビックリだよ~』
「ロリコンとは意外でした……。危険な匂いがします……。ワタクシも警戒しないといけませんね……。おチビちゃんも危ないですわ……」
「俺はロリコンではないぞ!」
エフィナとメアがネタにして面白がっているところソウタは反応する。
あれだな、ララアの約束を本気で思っていなく、当時は幼いから大きくなったら気が変わると思ったらしいな。
これは……ソウタが悪い、口約束でも責任は取れよ。
「来たかソウタ、久しぶりだな」
次に現れたのは、ダイナマイトボディのララアに似て青色のロングコートを着た、凛とした美女エルフだ。
ララアの親族とはわかる。
「ああ、久しぶりだな長老」
「出たわね、破廉恥エルフ!」
「プロミネンスも変わらないな。初めての人もいるな。私はこの村の長老である――ウルマだ。よろしく頼む」
長老は俺たちにお辞儀をして歓迎してくれる。
女性の長老は珍しいな。
俺たちも挨拶する。
「おばあちゃん、ソウタが来たから結婚してもいいよね?」
いきなり結婚宣言ですか……長老の孫だし、すぐには――。
「そのことなんだが、私の家に来てくれ、お茶を飲みながら話をしよう」
表情を変えず冷静だ。
その発言で周りは長老ににやついている。
「長老、ソウタが来たからもっと喜べよ! ソウタが好き――――ブヘッ!?」
その発言したエルフは長老に腹パンをくらい、畑のほうに吹っ飛んでいった。
魔力も強いからひと溜まりないだろうな……。
発言したエルフから「好き」と聞こえたのは気のせいか?
「だ、黙れ! 私は先に行くからま、待っているぞ!」
長老は顔を赤くしながら奥へ行った。
意外にわかりやすいですね。
「おばあちゃんも素直じゃないから、ソウタのお仲間さんも一緒に来てね。歓迎するよ! ついてきて」
「長老の家か、久しぶりだなー」
「また一緒に寝ようね!」
「おいおい、子どもじゃないからー」
「私はもうソウタのお嫁さんなの!」
俺たちは腕を組みながらイチャイチャしている2人の後ろについていく。
村にいた時は長老の家で暮らしていたのか。
しかも幼いララアと一緒に寝るとは好かれるのも当然か。
『よ、幼女の頃に一緒に寝ていただと……意外にソウタは危ないな……』
「『正真正銘のロリコンですわね……。ワタクシとおチビちゃんが危ない……。夜は警戒しないといけませんわ……』」
エフィナとメアはソウタに聞こえないように念話でやり取りしている……。
いや、一緒に寝るくらいなら許容範囲では?
やましいことはしてないと思うが……。
しかし……周りにいた村人もついてきます……。
やっぱり気になりますね……。
次の更新は11日です。




