294話 異世界の知恵
城に戻り、応接間でお茶をすることになった。
魔王は周りのメイドや執事を部屋から出し、俺たち――地球のことを聞いてきた。
今後の発展に知恵を貸してほしいとのことです。
とは言っても、不便なこともないから何も答えられないが。
「娯楽があまりないな、トランプやリバーシブルとかの遊びはどうだ?」
確かに娯楽があまりない。まあ、娯楽するほど退屈な生活はしていなかったが。
「その遊びはなんだ?」
ソウタの発言で魔王が興味を持つ。
道具や遊び方の説明をすると、目が輝いています……。
「面白そうだな! オレの退屈もなくなりそうだ! 皆に喜んでくれる遊びだ!」
「広めるのはいいが、この世界で大量生産できるのか? トランプは丈夫な紙かプラスチックを一から作らないといけないし、リバーシブルも木を彫って作らないといけない。時間と労力も必要で、高値になり一般市場には出回らなく貴族の遊びになるぞ」
作れるにしても課題は多い、そう簡単にうまくいかない。
ソウタは何か思いついたようで――。
「じゃあ、娯楽専用の施設を建てるのはどうだ? 最初は大量生産は無理でも一定の量は作れるだろう? トランプは薄い合金でなら大丈夫だ。ドワーフなら簡単に作ってくれる」
意外な回答だった。悪くない案だが、そのために施設を建てられるのは――。
「良い案ではないか! もっと詳しく聞かせてくれ!」
魔王はさらに興味を持つ。
いいのか……。
その後、魔王とソウタは娯楽施設を作るため話し合う。
俺はその話を聞きながらお茶を飲む。
トントン拍子に進んでいるが、配下は納得するだろうか。
まあ、この話は俺には関係な――。
「製作はフランカに頼もうと思っているのだが、頼んでくれないか?」
「民のために豊かにしたい。頼む」
2人は俺に振り向いてにやつく。
俺たちを巻き込むな……。
フランカは忙しいから無理だぞ……。
「レイ……アタシからもお願い……魔王の言う通りみんなを豊かにしたい……」
シャーロさんまで見つめる……。
えぇ……困るのですが……。
「ではワタクシがフランカに説明するので少々お待ちください」
困っている俺を見かねたのか、メアが手を差し伸べる。
「『フランカ、お取込み中ですか?』」
「『メアか、今なら大丈夫だぜ』」
俺にも念話を送るのか。
メアはフランカにトランプとリバーシブルを作るようにお願いをする。
「『人数も増えたからいつか作ろうとは思っていたところだ。開拓が落ち着いた頃に、サンプルを作るから参考にしてくれ』」
いいみたいです……。
お忙しいところすいません……。
「『感謝します……。ではお代はお酒でと言いますね……』」
「『ああ、よろしく頼むぜ』」
フランカからの念話が切れた。
メアは許可をもらったと伝えると、魔王は飛び跳ねて大喜びであった。
「お主らは良い仲間がいるな、感謝するぞ! よし、これから忙しくなる、サイガに言ってくる」
魔王は走りながら応接間を出る。もう実行に移すのか。
数分後、サイガさんと一緒に入ってきて、詳しく話した。
「はぁ……もう止められませんね……。わかりました……作りましょう……」
サイガさんはため息をついて了承を得た。
決めたら止められないみたいで諦めましたね。
――――◇―◇―◇――――
――翌日。
昨日と同じで薄暗い中、魔王に起こされて、朝早くから散歩に行かされる。
昨日とは違う道を歩いて、建物がない場所に止まる。
「ここを娯楽専用の施設を建てるのにちょうどいいな! 決めた、ここにする!」
気が早すぎだ……まだサンプルもできあがっていないのに……あっ、周りに大声で言うのではありません……。
せっかちすぎるだろう……。
その後、お茶をしながら魔王とソウタはまた良からぬことを考えています……。
「ボウリングも増やそう」
「採用」
おいおい、増やしても手伝わないぞ。
結局、フランカに頼んで作るようになりました……。
フランカさん、本当に申し訳ないです……。
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