29話 成人の祝い
女神様の会話が終わり、その後夜にミランドさんの屋敷で成人の祝いしてくれる。
アイシスはその準備で先に向かう。
俺と精霊はそれまでに屋敷に戻ってのんびりする。
――屋敷に戻ると眠気がぐっときた……。
『意識を飛ばしてティーナ達と長く話していたから無理もないよ。まだ時間もあるし寝なよ』
そうさせてもらうかな……。
居間のソファーで眠りについた――。
「…………様…………ご主人様」
呼ぶ声で目を覚ますとアイシスがいた……起こしてくれたのか。
「準備ができましたので行きましょう……」
もうそんな時間なのか、窓の外を見ると夕暮れ前だった。
結構寝たな……まだ少し眠い……それにアイシスは顔を赤くしている。
どうしたんだ?
「顔が赤いけど、疲れているのか?」
「い、いえ、問題ありません……」
「そうか? まあ、無理はしないように」
「は、はい! それとこちらは私が作った正装です。着替えてください……」
アイシスはアイテムボックスの中から正装の服を出した。
いつの間に作っていたんだ……こんな立派なもの。
「ありがとう、立派な正装まで作ってもらって……」
「とんでもございません! 馬車でお迎えが来てますので乗りましょう……」
今日のアイシスはおかしい。
いつもクールであるが今回はそわそわしてらしくない。
俺の誕生日だから、主を喜ばせたいからなのか落ち着きがないと思った。
それなら嬉しい限りだ。
正装に着換え、屋敷を出るとブレンダと執事長が馬車の前にいた。
「お兄ちゃん! お誕生日おめでとう!」
「ぼっちゃま、成人おめでとうございます」
「ありがとう、ブレンダ、セバスチャン」
「さあ、乗って!」
馬車に乗り、ミランドさんの屋敷に向かう――。
――屋敷が見えると敷地内の庭にはギルドのみんなが集まっいる。
テーブルが設置され、食事が用意されている。
馬車を降りると――。
「「「――――お帰りなさいませ、ぼっちゃま! 成人おめでとうございます――――!」」」
メイドと執事のみなさんも気合いが違いますよね……。
ギルドの人が集まって――。
「「レイ、成人おめでとう!」」
「ありがとうございます」
次々とお祝いの言葉をいただき、ミランドさん、エレセさんが来て――。
「レイ、成人おめでとう! そして残念なことに私はレイを成人する前に養子にすることが目的だったが、願いは途絶えた……しかし! レイが成人になっても私は諦めない! 今からでも養子に――」
「レイ、成人おめでとう、主人は諦めが悪いから今回は多めに見てね……それとレイが養子に来るならいつでも歓迎するわ」
成人しても養子にすることは諦めてないようだ……。
ザインさん、スールさん、リンナさんもこっちに来た――。
「レイ、成人おめでとうな! 時間が経つのは早いもんだな、あんなに小さいのがもう立派になるとは驚きだ!」
「うぅ……レイが成人……はぁ……生きててよがっだ……」
「レイ君、成人おめでとう! これからも末永くよろしくね!」
「ハハハ……ありがとうございます」
リンナさんが末永くよろしく発言はエルフでいう……死ぬまで一緒にいる発言だっけ……エルフの言葉には重みがありすぎる……。
「主役が来たことだし、レイ! みんなに挨拶だ!」
えっ!? いきなり!?
まだ心の準備が……それにみんな俺の近くに来てる……。
こういうのは苦手なんだよな…………。
「え~みなさん、俺のために集まってくれて、本当にありがとうございます。ミランドさんのところをお借りしてまでお祝いをしてくれるなんて自分にはもったいないくらいです……これも俺が恵まれているからだと思います! みなさんには本当に感謝しています。ありがとうございました! これからもよろしくお願いします!」
パチパチと拍手が鳴る。
「それとザインさん、スールさん、1度だけしか言わないのでこれだけ言わせてください。親父、父さん育ててくれてありがとう!」
すると、周りは盛り上がり、ザインさんは拳を上げガッツポーズ、スールさんは号泣した。
「聞いたかミランド! レイが俺を親父と認めたぜ!」
「ぐぬぬ……今回は認めてやる……次こそは必ず養子に……」
「うぅ……レイ……もう1回……うぅ……お父さんと呼んでくでまぜんが……」
それからみんな飲むわ食うわで宴状態だ……出てきた料理の中でボアの肉を使ったトンカツや鶏肉を使った水炊きに塩唐揚げ、うどんに野菜の天ぷらとかこの世界で作れる日本食をアイシスとメイドの人が作ってくれたみたいだ。本当に感謝しかない。
最後にケーキが運ばれて来るが……デカいな……こんなの作れたのか……。
『アイシスが愛情たっぷり作ったみたいだね!』
『愛情か…………アイシスに何もしていないな……今度、何か要望があれば応えるしかないな』
『じゃあ、アイシスに言っとくね!』
言うのか、まあエフィナが言ってくれるならありがたいけど。
『じゃあ、頼んだ』
『任せて! フフフ……』
最後に笑ったのは気のせいか? まあいいや。
ケーキを食べると…………うん、安定の美味しさだった。
そろそろお開きの時にザインさんが……。
「レイ、嬢ちゃん、こっちに来てくれて!」
急にどうしたんだ?
「ほらよ、2人のギルドカードだ」
「「ありがとうございます」」
まさか、ここでギルドカードが渡されるとは思わなかった…………ん? カードの色がブロンズじゃない? ランク別でカードが分けられるけど。
F~Eランクがブロンズ、D~Cランクがシルバー、B~Aはゴールド、S以上がプラチナになっているがこれはいったい……。
「このギルドカードは……」
「おう! これは最近発行するようになったミスリルカードだ!」
「ミスリルって……じゃあこのカード全部ミスリルで作られて……」
「ああ、そうだ! このカードはギルドマスターが良いと思ったやつに発行ができる」
「じゃあ受けられるランクはどうなるのですか?」
「全部受けられるぞ! だがSランク以上は各ギルドマスターの判断でしか受けられないがな」
はい!? こんな大層な物、俺とアイシスに渡していいのか!?
「買いかぶりすぎませんか!? いきなりほとんどの依頼が受けられるなんて……」
「何言っているのだ? レイと嬢ちゃんがFから始めたら逆に失礼だろ! レッドオーガやキングボアとか倒してFから始めるのはおかしいだろ! それにみんな認めているんだ、文句言うやつなんていないぞ」
そうであれば、ありがたくもらうしかない。いや、待てよ……。
「ランクを名乗るときにはどうするのですか?」
「それは大丈夫だ、ギルドカードに魔力を注ぎな」
ギルドカードに魔力を注ぐと――輝き始め、自分の顔や、名前、年齢、種族、発行された場所の文字が浮かんでくるこれはどのギルドカードも同じだが……違う文字も浮かんできた……「Aランク」と。
「これがこのカードの機能だ! 過去倒した魔物の強さをそれに刻むことができることだ!」
「それはまた便利なこと……」
「これでレイの基準が周りにわかるってことよ!」
まあ身分証明書みたいなものだしこれはスキル【隠蔽】も無効にされそうだな……って!?
ギルドカード全部【隠蔽】は無効にされるはず!
アイシスにはダメじゃないか!?
アイシスに振り向くともう魔力を注いでる!?
「どれどれ~見せて!」
このタイミングでリンナさんが来た……マズい!? それは…………。
「なんだ、まだAランクの魔物しか倒してないじゃない、てっきりSランクも倒しているかと思った!」
あれ? その反応だけ?
「アイシスちょっと見せてくれない?」
「どうぞ……」
アイシスのギルドカードを見ると年齢は44歳、種族は人間だった……。
『えっとね、多分ティーナの加護で不正を免れたと思うよ!』
万能ですね……ティーナさんの加護……。
『それじゃあ年齢は……』
『多分、レイの前世と今を足した年齢だよ。それにアイシスが創られた日が誕生日になるみたいだね』
そうなるか……これだと周りに怪しまれなくて済むな。とりあえ、ひと安心だ。
こうして成人の祝いは終わった。帰りは馬車で送ってもらい、屋敷に帰った――。
さて、明日から依頼を受けられるか楽しみだ! さて、風呂でも入るかー。
「ご主人様……私はあとで入りますので……先に入ってください……」
あれ? 珍しいな……。
まさか、成人になったから1人で入ってくれという解釈でいいのかな?
これはゆっくり入れるな。
精霊は……変わらず一緒に入るのね。
浴槽にゆっくり浸り――風呂からあがった。
いや~久々にゆっくり入ったな~。
アイシスと毎回一緒に入っていたからもうすぐで理性が崩壊するから危なかった。
今日は昼から寝すぎたが明日ことを考えて無理矢理寝るかな。
寝室の入りベットに寝込む。
――ドアが開くと…………アイシスが来たか……。
「ご主人様…………」
その言葉に振り向くと…………え!?
なんで布1枚なんだ!?
布を外してこちらに近づき…………マウントを取られた…………。
何やっっているんだよ!?
これはさすがに無理…………ヤバい…………。
「こ、こ、これは……いったい……」
『レイが要望に応じるって言ったからアイシスはこれを要望したのだよ! さあ、アイシスを思う存分楽しんでいいよ!』
なんで、エフィナが仕切っているんだよ!?
アイシスも何か言えよ!?
『レイも楽しんでね!』
アイシスは無言で抱きつき…………俺の理性が崩壊した――。
――――◇―◇―◇――――
――翌日。
……これは本当に賢者になりそうだな…………。
アイシスは……俺の顔を見て顔を赤くしている……しかも異常なほど魔力が輝いている…………。
何より…………精霊に見られてしまったことだ…………精霊は顔を赤くし、目を隠しながらこっちをチラチラ見ている…………。
最低だ……魔剣に手を出すなんて主失格だ…………。
『良かったね! アイシス!』
「はい……嬉しいです……」
「なんでこんなことになるんだ…………」
『それはもちろん! アイシスはレイが好きに決まっているからだよ! 成人前はさすがにダメだけど、成人したら大丈夫だからね! それにアイシスはずっと我慢してたからね!』
「それは……本当なのか?」
「はい……」
だから最近スキンシップとか多かったのか……。
「…………嫌でしたか?」
「そんなわけないだろう!? こんな美女とできるなんて嬉しいに決まっているだろう!?」
『アハハ! レイが素直になった!』
「ありがとうございます…………あの……その……定期的に…………お願いしてもいいですか…………?」
「それは…………」
『レイ! これも主の務めなんだから責任は取るんだよ!』
「わかった……アイシスにお任せするよ…………」
「ありがとうございます! 私の大好きなご主人様!」
とびっきりの笑顔で返された…………。
嬉しいのだが複雑な気持ちだ…………。
もうアイシスが喜んでくれるならいいか…………。
アイシスは服を着て、上機嫌で朝食を作りに行った。




