293話 見覚えのあるもの
都市の中心――大広場に入りと、屋台が並んでいて、甘い匂いがする。
当然だが――。
「魔王様とシャロロ様だ!」
その声で屋台の人たちはこれぞとばかりに売っている品を俺たちにタダで渡してきます。
「まったく……いいって言っているのに……あとでサイガにお金を渡すよう言っておくか」
まさか数十の屋台にいろいろともらうとそうなりますよね。
しかも俺たちまで、これは魔王の奢りということにしよう。
「ほんほだほねー」
シャーロさんはそう言いながらも、もらったクレープを頬張る。
しかし……もらった料理は見覚えのあるものばかりだ。
ベビーカステラ、綿菓子、かき氷などの定番があることだ。
それに砂糖を使った焼き菓子も多い。
ベビーカステラの屋台の店主に価格を聞いてみると――20個で銅貨5枚だ。
安い、プレシアス大陸だと倍の値はつくだろう。
「焼き菓子がこんなに安いとは……」
「ああ、お主の大陸では高いからな。最近、砂糖の原料となるシュガービートが大量生産できるようになってな。一般の民でも甘味が安く食べれるようになったぞ」
まさか原料である栽培が難しいシュガービートを大量生産できるようになったとは……。
魔大陸は日に日に豊かになりますな。
だから朝食にフレンチトーストが普通に出てくるのか。
俺たちはツリーシロップがあるから困らないが、アイシスに言ったら……暴走しそうだな……。
あとで言うか。
「その砂糖で日本の屋台の真似事をしたけど……まだ足りない……」
「まさか屋台はシャーロさんが?」
「そうだよ……」
女神って、地上に干渉していいのか……。
それも別世界の似たことをして……。
「女神様が手伝っていいのですか……?」
「別にアタシが食べたいものくらいは大丈夫……。女神の力で何かしようとするのは違反……。というか……地上では力の制限がされるから無理だけどね……」
問題ありませんでした。
まあ、やってはいけないことをしていないから大丈夫か。
「ということで……次は焼きそばの屋台を出したいから……落ち着いたら……麺を作れる人お願いね……」
今度は焼きそばですか……。
なぜ屋台にこだわる?
みんなに手ごろな価格で食べさせたいからか?
「シャーロ様……ワタクシが作れますので……いつでもどうぞ……」
「ありがとう……。後ほど連絡するからよろしくね……」
「わかりました……」
メアがやるのか、というか連絡はどうやってする?
不便ならシャーロさんの像も作らないといけないな。
落ち着いてだからまだ無理だが。
「また増やすのか、まあ、民が喜んでくれればなんでも良いぞ」
あっさり承諾するな。
まあ、そうでなけでば屋台なんて出てないか。
もらったものは無限収納にしまい後で食べるとしよう。
大広場を離れ、今度は都市内に流れている大河の周りを歩く。
自由気ままだな。
魔王は振り向いて――。
「今日も平和で最高だ。こうしておられるのもお主らがスタンピードを終わらせたおかげだ。本当に感謝している」
頬を赤くしても笑顔で言う。
ただの散歩とか思ったが、しっかりお礼を言いたかったみたいだ。
こうして見るとかわいい美少女だな。
「レイよ、オレの美貌に見惚れたか? なら今夜はオレの部屋でたっぷりお礼をするぞ」
なぜそうなる……。
「はぁ……。魔王……絶壁の身体でお礼とは何かの罰ゲームですか……? 主様がかわいそうです……」
「黙れ小娘! 小さいのは関係ないぞ!」
メアは下に見るようにクスクスと笑い、魔王を挑発する。
『平和だね~』
「平和だ……」
エフィナとシャーロさんは2人の小競り合いを見て和んでいます。
まあ、地上の管理者が元気になって、平和な日常を送っているなら安心しますよね。
ふと思うのは帝王はなぜ魔王を倒す必要がある?
こんな優しくズイールに危害も加えてもいないのに執着をする。
わけがわからない。
あとで帝王の息子――王子に聞いてみるか。
いや……いつまで2人は揉めているのだ……。
周りも気になって見ているぞ……。
散歩はここまでにして2人を止めて城に戻るとしよう。
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