292話 強制案内
入浴後、食堂で豪華な夕食を食べるのだが……シャーロさんも一緒です……。
まさか食事までするのか……。
しかも俺の太ももに座って食べています……。
「シャロロ様……レイ様に迷惑ではありませんか……? いつも言いますが、来るときは連絡をしてください……」
「アタシに文句でもあるの……?」
シャーロさんはサイガさんを睨んで不満げなようです。
「サイガよ、この幼女に言っても無駄だぞ。いつもだが諦めろ」
「はぁ……誰か様と同じで困ります……」
大きくため息をつく、本当に魔王の親戚と思っているみたいですな。
ソウタと精霊はシャーロさんと気づいて、不思議そうに見る。
食べ終わったら言うか。
食事が終わり、ソウタたちにシャーロさん、魔王の存在を話すと納得してくれた。
その後、魔王と話して2日ほど泊まることになった。
エンデさんに客室用の部屋に案内され、中に入るのだが……ここにもシャーロさんがついてきます。
まあ、予想はしていたからいいか。
シャーロさんはメアに――。
「レイはアタシの家に住むから……ティーナの言葉は無視して……」
「ティーナはあとのことなんて考えていないから……アタシのほうが安泰……」
「アタシはなんでも相談に乗るから……困ったら言ってね……」
っと、吹き込んでいます……。
「はい、わかりました……」
「これで一歩近づいた……」
無表情だが、小さく拳を握りしめ、喜んでいます。
『やっぱりシャーロは計画的だね~。ティーナの一枚、いや二枚も上手だね~』
メアを言葉巧みにシャーロさん側着こうとさせますね……。
寝る時間になると、シャーロさんも一緒にベッドに寝る。
「帰らなくて大丈夫ですか……?」
「忙しくないから大丈夫……」
そうではなくティーナさんが怒ると思うが……。
俺は知りません……面倒事になっても知りません……。
シャーロさんにお任せします。
――――◇―◇―◇――――
――翌日。
「レイよ、起きんか、朝だぞ!」
大声で目を覚ますと、魔王が元気よく入ってきました。
まだ薄暗いぞ……。
「うるさいな……」
「うるさいですわね……耳ざわりなこと……」
2人は無理やり起こされて不機嫌です。
「今日はオレがメルシャンを案内するぞ! 光栄に思うがいい!」
急だな……。
案内するのはいいが、早すぎる。
というか魔王が案内なんて民衆は驚くだろう……。
「アタシが案内するから……まだ寝かせて……おやすみ……」
「睡眠不足はお肌の大敵ですこと……出直してください……」
そう言って2人は俺の腕――両腕をつかんで行かせないように寝る。
「寝るな! 早起きは三文の徳だぞ!」
「徳でもない……」
「夜行性の人には関係ないですこと……」
結局、魔王のしつこさで俺たちは起きることになり、あくびをしながら朝食を摂る。
「昨日の言ったこと……取り消しにしてやる……」
そう言いながらシャーロさんはフレンチトーストをおかわりする。
しかし、フレンチトーストが出てくるとは意外だった。
甘党の王様でも朝食には甘いのは出てこなかった。
貴重な砂糖を朝から使うとは贅沢ですね。
朝食を食べ終え、魔王に都市内を案内してもらう。
サイガさんに許可をもらい、行けるようになった。
あっさり許可をもらったな、この感じだといつものことかな?
ソウタたちもメルシャンはすぐに出ていったからあまり詳しくないということで一緒に行くことになった。
城を出ると、周りの人に注目があびる。
やっぱりな……。
「魔王様、おはようございます!」
「魔王様、今日もいい天気ですね!」
「魔王様、今日もかわいいですね!」
「おう、皆も元気で良いぞ!」
魔王は周りに手を振って応える。
周りはかしこまらなく魔王にフレンドリーに接している。
魔王が通るたびにみんな笑顔だ。
「魔王様、お花で飾りを作ったの! どうか受け取ってください!」
「お主が作ったのか、上手にできたな。喜んでもらうとする」
前に出てきたエルフの少女から花飾りを受け取り、頭に付ける。
人当たりもいいな、魔王が好かれるのもわかる。
ワガママではあるが、民思いでいい人ではある。
「皆に迷惑かけた分、元気な顔を出さなくてはな」
迷惑? ああ、スタンピードで倒れたからか?
「本当だよ……魔王が倒れた時はみんな心配で魔王城に押し寄せてくるし……アタシが対処しなかったら大変なことになっていた……」
まあ、あれだけ好かれればそうなりますよね。
というかシャーロさん、民衆の対処もしていたのか……。
「あのときは幼女神には助けられた。感謝はしてるぞ」
「まあ、今回だけだから……。次はないから……」
照れながら言っているが、シャーロさんも心配していたな。
魔王はその姿を見てにやけている。
なんだかんだ良い関係だ。
魔王が案内するとは言ったが、全然案内してくれない。一緒に散歩しているだけだ。
自分が散歩するから一緒に来てくれということか……やられたな。
「気になるところがあれば、どこでも寄るがよい、オレが奢ってやる!」
まあ、このくらいはしてくれるよな。
少々寝不足だが、奢るのであるならよしとしよう。
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