291話 魔王の存在
そこには裸のシャーロさん? が向かってくる。
ん? シャーロさんだが、ケモミミと尻尾がなく、かわりに竜人みたいな尖った耳をしている。
「なんだ来ていたのか」
「レイが来たから……アタシも来た……」
平然と会話しているのだが……。
「シャーロさんですよね……?」
「そうだよ……。バレないように違う姿でいるけど……」
「いえ、そうではなく、地上に来られるのですか?」
「アタシの信仰が多い大陸だし……。そのおかげで姿形を現すことができる……。とは言っても、ここ周辺しか無理だけど……」
『ティーナとソシアはできないことはないけど、シャーロは簡単に姿を現せるからね!』
「周りにはオレの親戚と言っているから女神とは思わないぞ。まあ、多少姿が変わっても、像とまったく違うしバレやしないさ」
納得しました……さすが女神様だ。
スタンピード――魔王が力尽きていた時は看病していたのかな?
シャーロさんは俺に近づいてメアをジッと見つめる。
「アタシにも座らせて……」
風呂場でも座りたいのですか……。
「お前が女神でも小娘は言うこと聞かないぞ。諦め――」
「どうぞ……シャーロ様……」
「うん……」
メアは離れてシャーロさんが座る。
「なんで幼女神はいいんだよ!?」
「女神様ですので……」
「これが女神と魔王の違いだ……」
そう言ってシャーロさんは耳を動かして喜んでいる。
耳は変わっても動くのですね……。
「まあいい、それでレイは何者なのだ?」
「レイは――」
シャーロさんは俺は転生者でメアは魔剣であること、これまでの経緯を話した。
ソウタが迷い人のことも話す。
「――なるほど、転生者ならスタンピードを終わらせるか。それならオレにも早く言ってくれよ」
「魔王に言っても何も影響がないから黙っていた……。レイが魔王に会う時でいいと思った」
「別に減るような話ではないから言えよ」
「いろいろと面倒なる……。魔王に言ったら、どうせレイを捜すでしょう……? 急に魔王が現れたらビックリするでしょう……?」
「魔物の大量発生して捜せるわけないだろう! オレが皆任せにするか!」
「噓……勝手にいなくなって、みんなに迷惑かけるくせに……」
「暇な時だけだぞ! 何勘違いしている!」
2人の話がヒートアップしていますな……。
俺も聞きたいことはある。
「あの、魔王さんと女神様の関係はなんですか?」
「関係……? ああ……魔王はアタシが創ったよ……」
「こやつにオレは創られた存在で地上の管理者だ」
サラッと言うな!?
地上の管理を創ったのか……まあ、女神クラスなら簡単にできるか。
管理者なら繋がっているのに納得する。
「そういうこと……女神は天界で見守ることしかできないから……地上に誰か責任者がいないと困る……」
「それがオレってわけだ。地上の面倒事はオレが解決しているわけさ」
「女神にとって魔王は平和の象徴……。この世界の中心だと思って……」
魔王って重大な役割を……。
それを聞いたメアは身体を震わせてシャーロさんに頭を下げる。
「申し訳ございません……。魔王が平和な象徴とは知りませんでした……」
「おい、小娘、先に謝るのはオレだぞ!」
魔王の声を無視する。
「大丈夫……。あれは魔王が悪いからしょうがない……。頭を上げて……」
「ご慈悲……ありがとうございます……」
『やっぱりシャーロは優しいね~』
メアは救われたと思い涙を流す。
まあ、あれは魔王が変態行動したから許されるか。
「ちなみに言っておくけど……魔王……子どもができる身体にしてないから……」
シャーロさんの発言で魔王が立ち上がる。
「なんだと!? オレはレイの子を産んで、後継者にして、隠居生活を計画をしていたのにどうしてくれる!? オレもそろそろ魔王を引退してゆっくりしたい! 幼女神の鬼畜、悪魔!」
今度は湯船に寝込んで駄々こねて水しぶきが上がる。
これが地上の管理者の発言なのか……。
シャーロさんは「またか」と呟いて呆れています。
メアはその姿を見て鼻で笑う。
「しょうがないな……。じゃあ、あと100年……平和を維持したら子供を産む身体にさせてあげる……」
「100年……わかった! 絶対約束してくれよ! 帝国の奴ら頼むからくだらない騒動は起こすなよ!
勇者召喚された時は本当に大変だったからな!」
「それ以上言わないで……思い出したくはない……」
「悪い悪い、まあ、もう二度とそんなことは起きないと思うしな。約束してくれよ?」
「そうだね……約束する……」
魔王はガッツポーズをして喜ぶ。
意外にチョロいな……。100年って長いのでは?
まあ、魔王からしたら長くはないか。
というか魔王……俺を見てよだれを垂らさないでください……。
「シャーロ様……ご無礼を承知で申し上げますが聞いてください……。ワタクシも……子供を産める身体にさせてください……」
メアさん……何を言っているのですか……。
急な発言にシャーロさんは腕を組んで目をつぶって考えている。
さすがに――。
「わかった……。メア――ほかの子たちも産ませるようにする……。ただし……50年くらい待てる……?」
「いつでもお待ちしています……」
「わかった……それで……」
「ありがとうございます!」
『良かったね~』
再びメアは頭を下げた。
…………できるのかよ!?
そんな簡単に承諾していいものなのか……。
「なんで小娘のほうが短いのだ!? 納得いかない!」
「だって……メアはレイの魔力暴走を止めたし……。エフィナちゃんを守ったから……。アタシはすぐ産ませる身体にさせてもいいけど……ティーナが許してくれない……。説得するのに50年くらいかかると思うから……」
『やっぱりティーナに言わないといけないか~』
説得に50年も……まあ、ティーナさんのことだから嫉妬はするよな……。
メアは魔王に勝ち誇った顔をする。
「オレの扱い酷くないか……?」
そう言って魔王は湯船に顔を半分潜り、ブクブクと泡を吹く。
これはなんとも言えません……。
ただ言えることは50年後、俺は大賢者になっている未来が見えることだ……。
「ということでレイ……。アタシたちと魔王関係はそんなとこだから誰にも言わないでね……。まあ、ソウタとか私たちに会っている子はいいけどね……」
「わかりました……」
この話は終わり、大浴場を出る。
次の更新は10月2日です。




