287話 魔王城
移動していると、ハーピーたちとすれ違うことが多くなった。
俺たちと同じように運んでいる人も。
不思議なことに飛行系の魔物を見ないことだ。
まあ、安全に移動するために討伐するのは当たり前か。
というか魔大陸を知らないでシエルに乗って移動したら大騒ぎだろうな……。
その前に行かなくて正解だった。
――夕方頃。
日も暮れて辺りは暗くなった。
暗くなるとともに、遠くから灯りが見える。
「大きく明るいところが、魔王城があります」
1時間もしないで着きそうだ。
地図では魔大陸の中心だな。
――数十分。
「ようこそ、魔大陸一の大都市――メルシャンへ!」
うん、王都の2倍はある。大都市と言うだけはある。
その中心に王城に負けないほどの大きさ――魔王城が見える。
なぜだろうか、城の周りの灯りはイルミネーション並みの色彩で派手に明るい……。
これは魔王の趣味なのか……?
「派手だな……」
「ソウタは何度か来たことはあるのか?」
「一度来たことはあるが、3人の姿が見える人が多くてすぐに出たけどな」
大都市だし、見える人は多いよな。
そのまま魔王城に入り、噴水が流れている庭らしき場所に降りる。
「ご苦労様です。報酬は商業ギルドに渡してあるからよろしくね」
ハーピーたちは空高く飛んで魔王城を離れていった。
やっぱり運送だから商業ギルドになるのか。
すると、城内から鎧を着た、ガタイのいい狼耳の黒髪男の獣人が高笑いしながら向かってくる。
「ガハハハッ、やっと来たか、サイガよ。待ちくたびれたぞ!」
「ワイルナー……魔王様の恩人に失礼ですよ……。もっと隊長らしくしてください……」
「細かいことは気にするな! オレが礼儀なんてしていたらオレではないからな!」
サイガさんはため息をついた。
「この方は?」
「お恥ずかしいところでこの方は――」
「オレは近衛兵隊長――ワイルナー・デビカートンだ! よろしくな! 魔王様の恩人たちよ!」
豪快に笑いながら挨拶をした。
騎士ではなく衛兵になるのか。
「少しは落ち着いていけないのですか?」
その後ろから水色のロングの髪をした水色のコートを着たスリムな女性エルフが来た。
「遅いぞ、ピア! お前こそ恩人を待たせるなよ!」
「まったく……。はじめまして、恩人様。私は魔導兵隊長を務めております――ピア・ユングと申します。以後お見知りおきを」
こちらはお辞儀をして丁寧に挨拶してくれた。
魔導兵とかあるのか。王国騎士と違って分けていますね。
プレシアス大陸ではそちらで言う近衛兵と魔導兵はまとめて王国騎士というから、分けるのはわかりやすいな。
というかファイスさん、近距離、遠距離――全体の指示をしているから、1人でまとめているのはすごいのでは?
次々と鎧を着た人とコートを着た近衛兵と魔導兵らしき人が膝をついて歓迎をしてくれる。
恩人だから丁重に歓迎しますよね。
その奥から膨大の魔力が――サイガさんよりも魔力が多い、魔王か?
出てきたのは正装をして頭に角1本生やした紫髪の好青年だ。
もしかして――。
『魔大陸で珍しい鬼人族だね~』
やっぱり、角が生えているならそうですよね。
鬼人族が近づくと膝をついて――。
「お忙しいところ、ありがとうございます。我々の恩人様、僕は魔王様の補佐――側近をしています。エンデ・アステルクと申します。困ったことがあれば僕に申し出てください」
さわやかに挨拶をしてくれますな。
魔王の補佐か、秘書をしているサイガさんとあまり変わらない役かな?
お互いに挨拶をするが、エンデさんはメアが気になるみたいだ。
「あなたは……いったい……いえ、あり得ません……。ごめんなさい、気のせいですね……」
吸血鬼と認識していますね。
まあ、絶滅した種族がここにいるなんてあり得ないですよね。
「取り乱してすみません。長旅でお疲れのところ申し訳ありませんが、魔王様が会いたがっています。
挨拶程度なので、すぐ終わりますので何卒よろしくお願いします」
まあ、挨拶くらいなら大丈夫だ。
エンデさんの案内で城内に入り、5階まで上がる。
「着きました。ここが魔王様がいる玉座の間です」
いよいよ魔王とご対面か、魔大陸に愛されている存在はどんな姿だろうか。
大きな扉には赤い魔石が埋め込まれていて、エンデさんは魔石に手を触れると自動で扉が開く――。
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