284話 深海の魔物
水しぶきとともに海面から出てきたのは巨大なイカだ。
デカいな……以前戦ったカイザーオクトパスよりあるな。
『なんか普通のクラーケンよりデカくない?』
っと、エフィナが俺は通常のクラーケンを見たことがないからなんとも言えないが。
「クラーケンだ! 船を守れ!」
その大声で人魚たちは槍を構えて、クラーケンに向かう。
乗客員はクラーケンを見ても、慌てる様子もなく冷静だ。
「クラーケンなんて日常茶飯事だから心配はないさ。前に乗った時なんて簡単に討伐して、イカ焼きにして食べたぞ」
ソウタが言うなら安心か。
いつものことか、さすが人魚だ。クラーケン相手によゆ――。
「――――ギャァァァァ!?」
クラーケンは海面を触手で叩き、近くにいた人魚は吹っ飛んで船に打ち上げられる。
遠くにいるが、その衝撃は強く、波が発生し、船は大きく揺れて海水の雨が降る。
メアは打ち上げられた人魚が怪我をしていることがわかると、回復魔法で完治させる。
「これのどこが簡単に討伐できるのです……? 苦戦してますけど……?」
「えっ、そんなはずは……」
「あのクラーケン……異常だ……今まで戦ってきた中でも大きすぎる……キングクラーケンかもしれない……」
打ち上げられた人魚が身体を震えながら言う。
「キングクラーケンだと!? 深海の底に生息している冥府のイカだぞ!? 海面に姿を現すなんてあり得ない!?」
サイガさんは驚きながら言う。
そんなに珍しいのか。異常発生の影響の残りか。
人魚たちは触手で殴られたり、投げ出されたり、叩きつけられたりして遊ばれている。
キングクラーケンは飽きたのかゆっくりと船は近づく。
絶対に玩具にしか見ていない、はた迷惑な奴だ。
さすがの乗客もパニック状態になる。
「通常のクラーケンの強さは?」
「Aランクの魔物だ。キングって言うならSランク以上はありそうだな」
俺たちにしたら問題ない相手だな。
倒してイカパーティーでもするか。
「ここは私にお任せください! 盟友の方々に危険な目に遭わせるのはわけにはいきません!」
サイガさんは大鎌を取り出して構えた。
魔王の側近だからこのくらいは余裕か。じゃあ援護くらいは――。
「主様……このイカはおチビちゃんの食料としてお土産にしませんか?」
「まあ、できればお土産にはしたいけどな」
「では……ワタクシにお任せを……。魔王の下僕さん……。どいてくれませんか……? 魔法を使いますので危ないですよ……」
「危険なのはあなたのほうです! 敵がもう目の前に――」
メアはサイガさんを無視して前に出る。、闇、空間の【混合魔法】を使う――。
「――――ダークホール……」
キングクラーケンの真下に巨大な黒い穴を出し、引きずり込んでいく。
もがきながら大暴れして逃げ出そうとするが、もう遅かった。すべて飲み込み、荒れてた海は静かになる。
それを見たみんな呆然とする。
「主様の領地に新鮮なままお届けしました……。アイシスには今さっき言いましたので……ご心配なく……」
活きがいいまま直送しましたね……。
まあ、アイシスに言ったなら問題ないか。
「イカ食べたかったな……」
遅いぞソウタ……俺も食べたかったが。
「残すようにも、言いましたのでご安心ください……」
それは助かる。帰ったらイカの刺身でも食べようかな。
「ただのデカいイカはいませんので、ご安心してください……」
「あれをただのイカと!? 街を壊滅させるほどの危険な魔物を……」
「ワタクシは主様の護衛ですので……。ざぁこに構っている暇も時間もありません……。突っ立ってる暇がありましたら人魚たちの手当てをしてください……」
サイガさんはメアの言うとおり、小船を降ろして船員と一緒に怪我をしている人魚たちを引き上げて手当てをする。
幸いなことに怪我だけで済んだ。
治療が終わったら、応援を呼んだのか他の人魚たちが来る。
そのあと、怪我した人は応援に来た人魚に運ばれて、そのまま交代され、船は無傷ですぐに再出航できた。
一件落着だが――。
「『メア、貴重なタンパク質ありがとうございます』」
アイシスから念話がきた、俺も繋げたのか。
「『どういたしまして……もっと褒めてよろしくてよ……』」
「『ですが、今後はもっと早めに行ってください。突然すぎて皆様、大変驚いていました』」
急にクラーケンが現れるのは驚きますよね、それも活きがいいのが……。
「『それはごめんなさいね……。魔王の下僕さんが邪魔で言う時間がなかったので大目にみてくれません……?』」
いや、サイガさんは何もしてないのだが……。
「『はぁ……。それともう一つ、余裕があれば仕留めて送ってください。そのほうが大助かりです』」
「『ワタクシ……手加減ができませんの……。ワタクシの仕留めるは、跡形もなくなるので無理ですの……。理解してください……』」
「『仕方ありません……。わかりました、次は早めに言ってください。では――』」
アイシスの念話が切れた。
メアは良かれと思ったことが逆に注意されてため息をつく、少々ご機嫌がよろしくない様子です。
「まったく……せっかく新鮮な食料を送ったのに一言多いですわね……。満足されていないのでしたらもっと新鮮なの送りましょう……」
急に不気味な笑みを浮かべた……。
「あれ以上、活きがいいの送ったら大変なことになるぞ……。開拓で忙しいから適度なやつで……」
「主様がおっしゃるのならわかりました……」
さすがにアイシスの迷惑になるからな……。
次は気をつけるみたいだしいいか。
キングクラーケンが「ダークホール」で送られた時のこと――。
メア「『アイシス……新鮮なイカを送りましたので、おチビちゃんの食料にしてね……。あと、ワタクシたちも食べたいので残してください……』」
アイシス「『わかりました。ありがとうございます』」
メアとの念話が切れると、領地の中央に大きな魔力反応が――。
アイシスは急いで駆けつけると、小人たちとキングクラーケンが戦っていた。
アイシス「新鮮すぎませんか……」
その後、みんなで倒して夕食はイカ飯、イカ天、イカの刺身を食べて満足していた。
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