282話 側近のお迎え
――3日後。
魔王城に行く日なった。
俺、メア、ソウタ、精霊3人と行くことになった。
なぜかメアがついてきます……。
というか招待されていないが、いいのか……?
「主様と一緒にいないと力が出ませんので、開拓のお手伝いできませんわ……ワタクシも行きます……」
ただ単に一緒にいたいだけだろう……。
「メア、ご主人様をお願いしますね」
「ワタクシがいればご主人様の隅々までお世話しますので、ご安心を……」
不気味な笑みを浮かべて言うのですが……。
ちょっと不安です……変なことを起こさなければいいのだが……。
メアもついていくと言ったら魔剣たちは反対するかと思ったが、賛成してくれた。
まあ、みんな手が離せなくて安心? できる魔剣が1人でいれば問題ないか。
「お兄さん、私が来たばっかりなのに行っちゃうの……? 私も行こうかしら?」
「「「来なくていい」」」
「スカーレット、精霊をからかうのはやめてね」
ルージュさんの発言で精霊たちは頷く。
いまだにスカーレットのことは認めていないみたいだ。
来た当日、ソウタの家に入ろうとしたら精霊たちと揉めていた。
結局ルージュさんに説得せれて渋々許可をしていたが。
もうスカーレットさんも認めてもいいのでは?
「えぇ~、お兄さんといなかった分、一緒にいてもいいじゃない~。ねぇ、エクレール?」
なぜそこでエクレールにふる?
「ん? ウチはどっちでもいいよ~。ここ居心地がいいから~ご主人の好きにして~」
「あら、エクレールが珍しいこと言うわね。本当にここを気に入ったのね」
まあ、精霊が住んでいた場所だから落ち着くだろうな。
それはいいが――。
「あの……あなたの精霊……いつまで僕の顔についているの……? 言っても全然聞かないし……前が見えないのだけど……」
エクレールはミルチェの顔にずっとへばりついたままである。
ミルチェを見た瞬間、勢いよく駆け寄って頬っぺたをスリスリして懐かれている。全然離れてくれないみたいだ。
精霊に好かれる体質だとはわかっていたが、これほどとは……。
「ボウヤ、エクレールが気が済むまでやめないから我慢して」
「はぁ……」
「ウチは~この人好き~」
深くため息をつきましたね。
諦めてエクレールのお守でもしてくれ。
「「「よしよし」」」
その姿を見て精霊3人はにやけています。
ソウタに目もくれずミルチェのほうにいったから大助かりのようだ。
思わぬ救世主だな。
「それじゃあ、行ってくる」
みんな見送られて、俺は空間魔法「ゲート」を使い、王城の前に移動した。
庭に入ると、王様家族とサイガさん、男女4人のハーピー族が待っていた。
「皆さん、魔王様のワガママに付き合わせてすいません。お忙しいところありがとうございます」
「いえ、大丈夫です。お気になさらず」
「本当にありがとうございます。ちなみにこちらの方は……?」
サイガさんはメアを恐る恐る見る。
やっぱり気になるか。
身体が震えているのはなぜだ?
「このお方――主様の護衛です……。何か問題でも……?」
「いいえ、とんでもございません! ただ……私が知っている種族に似ていまして」
「気のせいですわ……」
「そ、そうですね……。気のせいですよね……」
まさかサイガさん、メアを絶滅した吸血鬼と認識しているのか?
そうなるとこの人は長く生きているな。というか魔王の側近だからあり得なくないか。
魔王もメアを見ると驚く可能性があるな。
「それじゃあ、気をつけてね~」
「はい、陛下もお時間があれば魔王城にお越しください」
俺たちは運送してくれる――ゴンドラに乗り、ハーピーたちは繋がれた鉄筋を足でつかみ、浮かせて空高く飛んでいき、魔王城に向かう。
しかし、ハーピーで移動するのは意外だ。しかも速く飛んでいるのに中はあまり揺れることなく乗り心地がいい。
サイガさん曰く、魔大陸では馬車よりもこっち――鳥人運送が一般的なようだ。
やっぱり空を飛べる種族がいれば、そういう発想になりますな。
ソウタも乗るのは初めてらしく、魔大陸いた頃はのんびりと旅をしたいからと乗らなかったみたいだ。
魔王城には3日目の夜に着く予定のこと、それまでのんびりと空の旅を満喫しようか。
次の更新は12日です。




