279話 従者を助ける
「じゃあ、覚えたい魔法でもあるのか?」
「習得したのだが……私の力不足だ……。2人とも見せてくれ……」
2人の従者はマフラーを外すと、奴隷の首輪が付けられていた。
小人に付けられたやつと違うな。
「まさか無魔法を覚えるために?」
「そうだ。だが、首輪が頑丈でまったく外すことができない……」
「僕からも無魔法を得意とする人にお願いして試みたけど、ダメみたいだね。普通に取り外そうとしてもこの大陸は奴隷の首輪に詳しい人はいないからね」
確かにこの大陸は奴隷とか論外だから専門的な人はいないな。
疑問なのが――。
「なぜ従者である2人が奴隷の首輪をしているのだ?」
「そ、それは……ズイール大陸では……獣人は奴隷の首輪を強制的に付けられる……。ワイアットとロディは大陸にいただけで理不尽な仕打ちをされた……」
獣人の扱いが酷すぎだろう……。
予想以上に腐っている……。獣人に恨みでもあるのか?
しかし……なぜこの2人はズイール大陸に? これ以上聞いても不快になるか。
「俺が外すことができるがやろうか?」
それを聞いた王様、王子、従者が驚く。
今まで外すことなんてできなかったから無理もありませんな……。
「賢者殿、ぜひ、お願いしたい! ワイアットとロディを自由にさせてほしい!」
王子は頭を下げてお願いをする。
許可ももらったことだし、2人に近づいて、無魔法で首輪を取り除く――。
「――――アンロック」
首輪は粉々に砕け散り、外した。2人は首へ手を触れさせて、ないことがわかると、涙を流す。
「取れた……やっと解放された……」
「よかった……もう人の目を気にしなくて歩ける……」
「良かったな……2人とも……。もう自由だ、私に使えなくていいのだぞ。どこに行っても構わないぞ」
「フレリット王子……あなたは俺を救ってくれた恩人です。最後までお供します」
「私もそうです。王子様が帝王になる瞬間をみたいです」
「お前たち……ありがとう。私も、もっと頑張らなくてはな」
王子と従者2人は抱きしめて、喜びを分かち合う。
「賢者殿、本当に感謝をしている! この恩は一生忘れない!」
「別にいいって、じゃあ、この恩は帝王になってこの大陸にも利益になることをしてくれ」
「もちろんだ! 絶対になってみせる! さっそくだが、シェルビーに報告だ! 失礼する」
「シェルビー?」
「フレリット君の妹だよ。シェルビーさんも兄と同じで一緒に来たのだよ」
帝王の娘も来たのかよ!?
まあ、王子と同じ意見ならいい人か。
お礼を言って3人は居間を出ていった。
「まさか奴隷の首輪が簡単に解除できるとは、レイ君には驚かされるよ」
「いえ、小人に付けられた首輪よりは簡単に解除できました。邪石なしだとあまり魔力は使いませんし、まだ楽ですよ」
「えっ? 小人とは違うの付けられていたの?」
「はい、邪石付きの首輪でした。特注とか言っていました。小人用に作られたと思います」
「そうか……またろくでもないのを作っているね……。現物はあるかい?」
「邪石は破壊してなくなりましたが、ありますよ」
俺は無限収納から首輪を出して王様に渡す。
念のため、回収して正解だったな。
「これは……初めて見る首輪だね……。いろいろと調べたいから預かってもいい?」
「いいですよ。今後、お役に立てれば幸いです」
「ありがとう。これを調べれば解除できる魔道具を作れるかもしれない」
なるほど、無理やり付けられている人を助けようってわけか。
ズイールの対策も本格に始めているな。
王様は外見では落ち着いているけど、内側では許せないと思っているはず。
「さて、この話は終わりにして、別の話があるのだけど――魔王さんからレイ君たちを魔王城に招待したいってさ。スタンピードのお礼をしたいってね」
えぇ……このタイミングでですか……。
サイガさんが言っていたけど、本当に招待されるとは……。
「ありがたいのですが、今は忙しいので落ち着いてからと言えないのですか……?」
「そうだよね。わかった、この件について言っておくから安心してね」
「ありがとうございます」
「また来るの面倒だとと思うから、魔道具を渡しておくよ。これで遠くにいても連絡がとれて便利だからね」
ここで魔道具が配布されるとは助かる。
これで王都に行かなくても済む。
その後、役人――ジェストから魔道具を受け取り、領地に帰る。




