272話 魔力解放
「まあ、なんて醜い姿ですの……。硬いゴーレムの姿になったつもりですか……。ただのトロールにしか見えませんこと……」
「フンッ、悪魔の挑発になんて乗るか、邪魔だ――」
闇の魔剣の挑発を無視して、ベースンは俺に向かい、地響きを鳴らしながら前進をしてくる――。
あの重い体型をしながら速いな、俺は横に躱して、後ろにある土の壁を破壊し、そのまま前進する。
「お前らに構っている暇などない。帝都に戻って計画を立て直しだ」
あのゴミ……戦わないで逃げ切るつもりか……。
ふざけるのもいい加減にしろ……。
逃げ切ると思うなよ。
これ以上ミスリルの短剣は使えないな。
あの子に返さないと。
俺は無限収納にミスリルの短剣をしまう。
「撤回だ、闇の魔剣を使う。力を貸してくれ」
「ありがとうございます……。ワタクシを使うなんて恐縮でございます……。どうぞ、好きなように扱ってください……」
闇の魔剣は頬を赤くして言う。
そういうなら好きなように使う。俺は右手に闇の魔剣を持ち、ベースンに向かう。
あの体系で足が速いだけで、簡単に追いつく、今度こそ逃がさない――。
「――――ナイトメアチェーン!」
「――――なに!?」
闇魔法――無数のドス黒い鎖でベースンの身体を巻きつける。
逃げようともがくが、無駄だ、これから地獄に落としてやる。
「放せ!? 私はこの大陸の時期、王だぞ!」
魔法の効果で恐怖付与させたのだが、威勢いい。
まあ、邪石のおかげで耐性がついたと思うが。
「何が王だ……邪石で頭がおかしくなったか……。楽に死ねると思うなよ……」
「フンッ、私は最強の身体を手に入れたのだ! たとえスタンピードを終わらせたお前に私の聖なる身体に傷一つ、つけられないのだからな! 残念だったな! お前の魔力が尽きるだけだ!」
ごちゃごちゃと勝手に言っている……。
俺は【魔力解放】【破壊者】を発動させる。
【魔力解放】で全身に膨大な魔力が解放され、闇の魔剣が輝き始める。
消費が激しいが、あのデカブツを簡単に切れそうな気がする――いや、切れる。
ベースンの腕――右腕を目掛けて飛び、一振りする。
「私の腕がぁぁぁぁ――――!?」
切る感覚もなく、腕を切断することができた。
「なぜだ!? なぜそのようなことができる!? それに……腕が再生しない!?」
ほう、あの邪石は再生能力があったのか。
無駄だ、闇の魔剣は妨害する能力を持っている。無意味な話だ。
所詮、邪石にも限度はあるってことだ。
続けて左腕を切る――。
「あり得ない!? 聖石で力得たのになぜだ!? その剣はなんなのだ!?」
「ここで死ぬお前に言うわけないだろう」
「私は王だぞ!? 王の命令は絶対にだぞ!?」
またおかしな発言を……。
しかし、痛みを感じていないのか。両腕を失っても平然としている。
額の邪石が異常に輝いている――もしかして痛覚を和らいでいるってことか。
だったら破壊するだけだ――。
額目掛けて飛び――。
「――――闇月!」
弧を描くように切り、邪石は真っ二つになり、砕け散る。
「聖石が――――ギャァァァァ!? イダイ、イダイ、イダイ! タスげテぐレぇぇぇぇ――――!?」
ベースンの身体は黒から灰色に変わり、痛覚耐性がなくなったのか大暴れする。
魔法も効いてきたようだ。
だが、小人の辛さに比べれば軽すぎる……。
その痛み……思い知れ――。
続けて右脚、左脚と切断をし、さらに大暴れをする。
「素晴らしいですわ! 主様が魔剣で下等生物を本当の醜くくさせてくれるなんて、ありがとうございます! そして嘆き、絶望を味わっている……醜い下等生物にお似合いですこと! 喜びなさい下等生物、大変名誉なことですわ!」
闇の魔剣はベースンの成れ果てように大興奮している。
今はどうでもいい……ただこのゴミが絶望させるだけだ。
「ユるシテくれ! イダイ! シンでシマう――――!」
何が許してくれだ……もういい、地獄に行って反省をしろ――。
「――――絶影!」
「――――ギャアァァァァ!?」
もう一つの邪石――腹ごと切り裂き、ベースンの身体は灰に変わり、風と共に吹き飛んでいった。
まだやることがある確かめに行かなくては――。
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