271話 最後の掃除
レイ視点に戻ります。
賊を蹴散らし、最後の檻を解除して小人を助け、その中に村長の妻――アサヒ、娘――ユカリがいた。
ナゴミはいることがわかると駆け寄って抱きついて大泣きをしていた。
そして確認したところ、怪我はしていたが捕まっていた人は全員無事とわかった。
みんな安心したのか泣き始め――悲喜こもごもとし、複雑な心境だ。
落ち着くまで、そのままにしておく。
だが、まだ終わりではない……残りの賊を掃除しないと……。
まだ遠くに行ってはいない、逃がすか。
ここで逃してしまったらまた襲撃されるからな……。
みんなと離れて、ゴミを追う――。
走っていると、闇の魔剣もついてくる。
「主様……ワタクシもお供します……」
「わかった。けど、親玉は俺がやるから邪魔はするなよ」
「仰せのままに……」
――賊が逃げている方向は海だ。
もしかしたら船に乗ってここの大陸に入ったのかもしれない。
密航とはいい度胸をしている……。
賊が見えてきた――。
4名ほど聖職者の服装をした親玉らしき奴を囲むようにして走って逃げている。
逃がすか――。
「――――アースウォール!」
土の壁を創り、ゴミどもは行き場を失い、立ち止まった。
賊たちは俺たちに剣を構え、そして親玉が振り向くと…………お前か……ベースン……。
後ろ姿でわからなかったが、まさかな……ジャックがいると思ったらお前もか……。
老け顔だったのが30代前半の若さになっていた。邪石の力で若返ったに違いない。
ジャックとは違う邪石を頭――腹のほうに禍々しく魔力が漂って2つ付けている。
「け、賢者だと!? なぜお前がここにいる!?」
「こっちのセリフだ……。指名手配されてズイールでおとなしくしてればいいものの……」
「だ、黙れ!? 私の計画を台無した愚か者め! お前たち、時間稼ぎをしろ! 報酬はいくらでもはずむ!」
「「「はい、聖人様!」」」
賊4人は俺たちに向かってくる――。
「主様……ここはワタクシに――ナイトメアバインド……」
「「「――――ギャアァァァァ!?」」」
闇の魔剣はドス黒い影で拘束し、発狂をする。
そして、闇を付与したミスリル星球武器を身体――邪石に当て、灰になった。
残りはベースンだけとなった。
「まあ、なんてあっけないこと……」
「あ、悪魔め……」
「黙りなさい下等生物……。ワタクシは気高い吸血鬼族ですわ……。ワタクシの種族もわからないとは無能なザぁコですこと……」
「吸血鬼族だと!? 300年以上前に滅んだ魔族だぞ!? 噓をつくな!?」
ベースンは驚きを隠せないでいた。
まさかこの世界で絶滅したと言われている吸血鬼族になったのか。
まあ、見た目は色白の人間にしか見えないがな。
しかし、ベースンが魔族呼びとは……。
ズイールの奴らは魔大陸の人を魔族と呼んで敵視しているはず。
差別しているベースンはプレシアス大陸にいることが間違っている……。
「ここで墓地送りなるザぁコに言う資格などありませんわ……恥を知りなさい……」
「この悪魔め……」
「で、お前はなぜ小人がいる場所を知っていた? 雇い主が知っていたのか?」
「そうさ、あの方は知らないことがないからな! ズイール大陸出身だが、この大陸はある程度、把握している素晴らしいお方だ! 小人など簡単に見つけてしまう!」
簡単に? その雇い主はいろいろと調べたのかもしれない。
じゃあ、コウモリの姿――実験にされた人もここに来たのは偶然ではなく、何かしらの細工をさせて小人の村に向かわせたのかもしれない。
「小人を攫って何をするつもりだ?」
「あの方の実験にするに決まっている! なんでも従う兵器にさ! そして実験が成功したお礼には小人の軍勢で王都を責め、私を王へと導くのさ!」
ふざけるな……そんなクズい計画で小人の命を……。
「その雇い主は誰だ……?」
「教えるわけ――」
「もういい――――刹那……」
結局、ゴミの情報は聞けなかった。
無駄話だ、消えろ――。
ベースンの背後にいき、首を切る――。
――首を切れず鈍い音がした。
「フフフフ……ハハハハハ! 残念だったな、私はミスリルでも届かないぞ! ――――はぁ!」
邪石は禍々しく魔力を放ち、衝撃波で吹き飛ばされる。
体制を整えられたが、距離をとられた。
威力が強かったのか周りの木々が倒れている。
「ちぃ、無傷か……。スタンピードを終わらせるだけのことはあるな……。だが、ここで暇をつぶしているわけにはいかん――」
ベースンの邪石が2つが輝き始め――身体が変わる。
――全長10mほどの大きさになり、身体中、黒い鉱物のような肌となり、トロールのような太い体型となった。
「私は誰にも倒せない最強の身体になった! アダマンタイト――いや、この世で一番硬い最強の身体を手に入れた!」
よく言うな……ただ硬いだけの話だ。
そんな紛い物の身体……切ってやる。
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