270話 歩く戦慄③
「セイれイづガイぃぃぃぃ――――!」
理性がなく、魔物のように向かってきて、大きな砂の拳で殴りかかる――。
残念だが「エアリアル・リフレクト」が発動して――。
「――――ガハァ!?」
風の球体をもろともせず、突き破って、身体を殴られ、吹き飛ばされた……。
油断した……だが、全身魔力でコーティングしているから軽症で済む。
これくらいならなんとかなりそうだ。
「――――ふザケるナぁぁぁぁ!?」
ストーカー野郎の拳――両手が剣の形へと変化する。
さすがにそれはマズい……。
俺目掛けて振り下ろし、後ろに下がりながら避ける。
そのまま地面に叩きつけ、大きな穴が空く。
ミスリルの鎧を着ていても絶対に生きて帰れないぞ……。
繰り返し、両手を使って振り続ける――。
図体がデカいだけでなく、振るのも速い、前に会ったコウモリ野郎とは別だ。
ストーカー野郎のつけている邪石は自分の思い通りの強さや形――化け物にさせるってことか。
開発者はバカげている……無理やり力を与えてもロクなことがない。
まあ、ストーカー野郎の自己責任でもあるが。
とにかく、あの砂の剣をなんとかしないと話にならない。
隙を見て、片腕目掛けて飛び――。
「――――烈風刃!」
剣に荒々しい風を纏い、切る――。
オリハルコンの剣のおかげで硬い砂も切ることができ、地面に崩れ落ちていく。
よし、もう片腕も同じように――。
地面に着地すると、切り落とした片腕――砂が俺の足に巻きついて身動きが取れなくなった。
しまった!? 同化して自分の一部になっているから切られても操られるのか……。
動かない……このままだと避けきれない――。
「――――シねぇぇぇぇ!」
ストーカー野郎は腕――剣を大きく振りかぶり――。
「――――エクスプロージョン!」
その瞬間、爆炎が腕に直撃し、粉々に吹き飛んでいく。
俺の前には【隠密】を解除したプロミネンスが腕を組んで堂々と現れた。
そしてブリーゼとティアも。
「助かったよ……いいタイミングだ」
「そろそろ私の出番かと思ってね。もう1人で戦うのはやめなさいよ!」
「ああ、わかったよ。一緒に倒そう」
「ソウタ様、今助けます!」
ブリーゼが俺に巻きついている砂を風で吹き飛ばし、動けるようになった。
だが、その砂はストーカー野郎の方に向かい、両腕が再生する。
「本当になんなの、あの砂は!? いろいろとおかしいわよ!」
「まあ、結果的に邪石を壊さないといけないが、あれ?」
中心にある邪石は輝きが薄くなっている。化け物になったから消費が激しいのか?
一時的であればこのチャンス逃せない。
「――――ジャまヲするナぁぁぁぁ!?」
今度は両手を使い、俺たちを叩きつけようとする。
「うぅ……怖い……。――――タイダルウェーブ」
「がバばばばぁぁぁぁ……」
ティアは水魔法――大津波を発生させ、巨大な身体を飲み込ませた。
今のうちに下がる……ん? 動きが鈍くなっている。
いや、水を吸ったのか重くなって動かなくなったのかもしれない。
これが弱点か。
「よくもソウタ様を――――エア・プレッシャー!」
「――――グがァァァァ!?」
ブリーゼの風魔法――風の圧で身体が崩れ落ちて砂山になった。
巨体になろうとするが、水も吸っているから思うように動かないでいる。
邪石は――砂山の奥に埋まっている。剣では届かない、だったら――。
「プロミネンス、もう一度デカいの頼む!」
「わかったわ! ――――エクスプロージョン!」
「――――ギャぁアァァぁぁ!?」
砂山は爆炎で飛び散り、邪石が剝き出しになった。
今だ――俺は高く飛び、剣に炎と風を纏い、魔力を思いっきり込め――蒼炎の剣に変わる。
これで終わりだ――。
「ヤめロォォぉぉ――――!?」
「――――蒼炎烈風・閃!」
邪石を蒼炎のの剣で突き――貫通をする。
剣を抜くと青い炎に焼かれて、熔け始める。
「イダい! いダイ! ――――イダいぃぃぃぃ!?」
痛いのかストーカー野郎は身体――砂を波打って大暴れする。
今まで痛みを感じなかったがどうやら邪石に神経が通っているようだ。
コウモリ野郎は邪石を破壊しても痛みなど感じてはいなかったが、コイツはまた別みたいだな。
熔け終わるとおとなしくなり、徐々に砂から白い灰に変わっていく。
「オデはサイきょう……ナ……ハズなノニ……」
全て灰になると、ストーカー野郎の意識も魔力もなくなり、死んでいった。
終わった……3人がいなければ俺は無事ではなかった……。
こんな奴に1人で倒せないのはまだまだだ。
…………俺ももっと強くならないと。
急いでレイたちと合流しないと――。
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