268話 歩く戦慄①
ソウタ視点になります。
俺は皆と離れて森の奥へと進む――。
「待ちやがれぇぇぇぇ! 精霊使いぃぃぃぃ!」
木々を避けながら走っているが、ストーカー野郎は木を薙ぎ倒し、息を荒くして狂いながら追ってくる。
ルージュをとられただけでこんなにも恨みを買うとは……。
この世界の男は女関係の執着がすごい……。
いや、どこの世界でも同じか。
レイが言っていた邪石で強力になっているとはいえ、ストーカー野郎の魔力消費が激しい。
このまま自滅してほしいのが本音だが、輝きを増すばかりだ。
石を砕いて終わらせないといけないか。だったら障害物のない、平地で戦う。
それまで様子見だ――。
「『ソータ! 私たちを置いといて1人で行くつもりなの!?』」
「『主……待ってよ……』」
「『ソウタ様、加勢しますよ!』」
3人が念話を送ってくる。
来るなと言ったはずなのに……ストーカー野郎のことだ、3人に危害を加えると思って俺だけでなんとかしようと思ったが。
心配させてしまったか。
「『3人とも、危ないから隠れてくれ』」
「『なんでよ!? 一緒に戦ったほうがいいわよ!?』」
「『主が……危ない……』」
「『危ないのはソウタ様ですよ!?』」
「『大丈夫だ。隠れて見てくれ、本当に危ない時だけ手伝ってくれないか? これは俺のケジメでもある。任せてくれないか?』」
「『しょうがないわね……危なかったら容赦しないで叩くわよ!』」
「『わかった……気をつけて……』」
「『わかりました……無理をなさらず……』」
3人を説得できた。
これで【隠密】を発動して隠れてくれるはず。
「精霊使いぃぃぃぃ! 精霊使いぃぃぃぃ!」
マズいな……追いつかれそうだ。
できれば目的の場所まで魔力を温存して戦いたかったけど、そうは言っていられない。
風魔法を使う――。
「――――アクセラレーション!」
脚に風を纏い、地面を思いっきり踏み込み加速させる――。
木々――障害物を軽々と避けて進む。
「逃げるなぁぁぁぁ――――!」
変わらず木々を薙ぎ倒し向かってくるが、ある程度距離を保つことができた。
順調だ――。
――数十分後。
森を抜けて広範囲に見られる平地に入った。
これで思うように戦うことができる。
「やっとか! 精霊使いぃぃぃぃ!」
残念だが、一瞬で終わらせてやる――。
向かってくるがストーカー野郎に剣を炎を纏い、火魔法を使う――。
「――――エクスプロージョン!」
剣ごと鎧を切りつけ、俺は透かさず後ろへと下がり、ストーカー野郎は全身爆発し、周りは煙が立ち込める――。
地面を抉る強さだ。この威力なら邪石にも届いて確実に壊せたはず、やったか?
だが、煙の中から歩いて出てくる。マジかよ!?
「精霊使いぃぃぃぃ!」
禍々しい魔力で深手を負っている身体が再生している……。
通常なら身体なんてバラバラになる威力だぞ……。
少し止まって、叫んでいるだけとはおかしいだろ……。
「ルージュは俺の物だぁぁぁぁ――――!」
再生し終わると、再び狂ったかのように剣を振ってくる。
一撃、一撃が重いが……対処できる範囲だ。
しかし、この感じ……暴走をしているのか?
技も何も仕掛けてこないでただ俺を剣で切り込もうとしている。
確かルージュとこのストーカー野郎たちと逃げていた時――「砂がある場所には逃げないでね……あの人……砂がないと特大の技が出せないよ」とか言っていた。
まさか……平地ではただ剣を振るうことしかできないのか……。
だったら好都合だ――隙を狙って邪石を壊すまでだ。
――大振りになったところを再び剣に炎を纏う――。
「――――紅刃閃舞!」
邪石ごと身体を切り刻んで吹き飛ばした。
しかし、邪石は無傷のままだ……。
鎧を壊して丸裸の状態でもダメなのか……いや、ただ威力がなかっただけだ。
今度は正確に「エクスプロージョン」を――。
「精霊使いぃぃぃぃ! ルージュは俺の物だぁぁぁぁ!」
攻撃をしてこないぞ? どうした?
何が来ると思い距離を取る。
ストーカー野郎の魔力がさらに大きくなり――邪石から砂がどんどん出てきて周囲を砂だらけとなる。
なんの冗談だ…………これじゃあ……ストーカー野郎の技が来る……。
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