264話 怒り①
スキルを獲得したが今はどうでもいい……。
早く賊を殺さないとな……。
馬車の跡がある……そこに逃げたか……すぐに追いついて始末を……。
あれ……後ろに誰か抱きついて止めている……。
「――――様」
誰だ…………?
「――――ご主人様!」
その瞬間、我に返った……アイシスが泣いて止めていた……。
「ご主人様! お願いですので怒りを鎮めてください!」
一瞬の出来事だが、俺は何を……?
ああ、魔力暴走していたのか……。
「悪い……もう大丈夫だ……」
「お願いですので1人で抱えないでください! もっと私たちに頼ってください!」
いや、いろいろと頼っているほうだが……今はそうじゃない、俺が考えすぎってことか……。
「わかった……もう大丈夫だから……離れてくれ……」
「はい……」
アイシスは離れたが泣くのをやめなかった。
主が魔力暴走して心配するのは当たり前か。
確かにこのまま暴走を続いていれば助ける前にお陀仏だったかもしれない。
エフィナにも悪いことをしたな――あれ、何も言ってこないぞ?
「『エフィナ、大丈夫か?』」
返事もしてこない……。
魔力暴走で影響が出たのか……?
悪いが、考えている暇はない、後回しだ――。
「俺は連れ攫われた人を助ける。手伝ってくれないか?」
「当たり前だ。絶対に助けような」
ソウタが言うと各人頷く。
「許せない! 賊なんて蹴散らしてやる!」
「アタイの武具を渡しても守れなかった責任がある……クソ野郎どもを叩きのめす……」
ルチルとフランカは怒りを顕にして魔力を出している。
「ご主人様、私も行きます!」
「悪いがアイシス、リフィリアと一緒に残ってくれ。まだ治療の人も必要だし、変なのが来たら大変だ」
「ですが……」
「これは命令だ。頼む……」
「わかりました……」
リフィリアは納得したがアイシスは良い返事しない。
万が一のことを考えて2人を残さないといけない。
また賊が現れたら小人だけでは対処できなくなる。
『儂も……行く……』
守り神は身体を震えさせながらゆっくりとくる。
「ダメだ、休んでくれ。守り神がいなくなったら余計に不安になるぞ。シエル、そばにいてくれ」
『任せるのじゃ!』
守り神は責任があるから助けに行きたいと思うが、今の身体ではとても戦うことができない。
寿命を縮めるだけだ。それで力尽きたらどうする……小人が悲しむ。
「私も行きます……。みんなを助けたい!」
ミツキさんは涙を流しながら言う。
気持ちはわかるが、賊は小人対策をしている。
悪いが一緒には――。
「私も行く……お母さんと妹……みんなを助ける!」
ナゴミはミスリルの短剣を握りしめて向かってきた。
握りしめているのは村長が使っていたやつか。
魔力も出して怒っている。
ダメだ、連れてはいけない。人のことは言えないが、怒り憎しみで行かせるのは危険だ。
それに純粋な子に汚れ仕事させるわけには――。
「俺も行く!」
「私も!」
「僕も!」
「オイラも!」
小人たち涙を拭いて次々と賛同をして最終的には35人が集まった。
それでもダメだ――。
「ご主人、お願い! みんなを連れてって! アタシが絶対に守るからお願い!」
ルチルが真剣な眼差しで見る。
「本気で言っているのか……? 全員守りながら戦うのは厳しいぞ?」
「絶対大丈夫! アタシを信じて!」
…………ダメと言ってもルチルが諦めるわけないか。
「わかった。ただし、危なかったら即撤退だ」
「うん! よ~し、みんな助けるぞ!」
「「「お~!」」」
ルチルが拳を上げると小人たちも続く。
みんな魔力を出してやる気だ。
気のせいなのかルチルと同じ魔力を出している。
すると、子どもが亡くなっている小人のミスリルの短剣を持って泣きながら来る。
「レイしゃん……お父しゃんが持っていた剣……お願い……これでみんなを助けて……」
手を震えながら俺に差し出す。
この子に応えよう――代わりにかたきをとってやる
「わかった。この剣で必ず賊を倒して助けるから安心して待ってくれ」
「うん……」
子どもから剣を受け取り、指切りを交わす。
――行くメンバーはフランカ、ルチル、ソウタ、精霊3人、ミツキさん、ナゴミ――小人たち、ウィロウさん、グラシアさん、セイクリッドだ。
他――アイシス、リフィリア、シエル、シノ、アリシャたちは残って守り神と小人たちを守ることになった。
本当はセイクリッドも残って守ってほしかったが――。
「我も助けに行く!」
と言うことを聞いてくれなかった。
周りに禍々しい魔力もなかったし、強い相手がいてもアイシス、リフィリアがいれば大丈夫か。
馬車の跡がある――西の方角へと進む。
――1時間後。
微かだが、禍々しい魔力反応がある。
あともう少しだ賊ども……俺たちを怒らせたこと後悔させてやる。
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