263話 受け入れられない
「おい、大丈夫か!? ――――ハイヒール!」
俺は急いで回復魔法を使い傷口を塞ぎ、守り神、村長を完治させるのだが、魔力が薄い……。
「オイ……らがもっと……強ければ……こんなことに……」
『すまぬ……儂がもっと……』
「しっかりしろ! ――――マナチャージ!」
魔力を送り込むが正常に戻らない……もう一度――。
「絶対に助けてやる! ――――マナチャージ!」
変わらない……だったら助かるまで使うまでだ。
――――マナチャージ。
――――マナチャージ。
――――マナチャージ。
まだだ……。
『レイ…………残念ながら無理だよ……守り神は魔石にヒビが入って……魔力循環ができなくて良くて数ヶ月……村長は……生命自体……もうね……』
「『ふざけるな! だったら完治させる魔剣を創る!』」
俺は左手に魔力を注ぎ、創造をするが…………なんでできないのだ……。
全然創造ができない……。
完治させる魔剣を創るだけなのになんでだ……。
『レイ……無理だよ……今創る魔剣は君が思っている以上に創るのは難しいよ……いくら魔力があってもね……創れたとしても治せないよ……限度がある……』
難しいだと……それでも俺は諦めない――。
すると村長はゆっくり手を伸ばして俺の手を握る……。
冷たい……早く急がないと。
「レイさん……頼みがある……盗賊に……オイラの家族……アサヒとユカリ……みんな連れ攫われた……どうか……助けて……」
「わかったから、村長は安静してくれ! 今助けるからな!」
「オイラは……もう……力が入らない……限界だ……」
「なに弱気になっているんだ! 一緒に桜の花を見る約束しただろう! 絶対助けるから頑張ってくれ!」
「ナゴミ……こっちに来てくれ……」
「お父さん……」
ナゴミが近づくと村長は震えてながらナゴミの手を握る。
「ごめんな……ナゴミ……オイラ……もっと一緒にいたかった……」
「お父さん……死なないで……」
「大丈夫だ……天国で……見守っているから……安全……して……」
その瞬間……村長の魔力が消えて目を閉じて息を拭きとった……。
「うぅ……お父さん……お父さん!」
ナゴミは村長のしがみついて涙を流した。
…………救えなかった……。
『儂のせいだ……もっと儂が強ければこんなことに……』
守り神のせいじゃない……俺がもっと早く気づけばこんなことに……。
……………………許せない。
『レイ、どこに行くつもりなの!?』
「決まっている……賊どもを見つけて地獄に落とし……攫われた小人を救う……」
『まだ行ってはダメだよ! 情報も必要だし、怪我人もいるからそっち優先!』
エフィナを言っているのは一理あるが、俺の怒りが優先してあまり考えられないし、冷静になれない……。
「今から追わないと間に合わない可能性がある……早く行かないと……」
『大人数攫われたなら時間もかかるからそんな遠くまで移動できないはず! 守り神、どのくらい攫われたかわかる?』
『そうじゃのう……1000人以上は攫われたとは思う……。賊はかなりの数だったから体制を整えたほうがよかろう……』
『ほら、守り神の言う通り体制を整えてからにしよう!』
…………そうだな……二方の言う通りだ……危なく怒りに飲まれるところにだった。
「わかった……怪我人を探そう……」
怪我人を捜して回復魔法で治療する――。
――村にいる怪我人を治療できたのだが……本当に悲惨だ……。
建物はほぼ壊滅状態……暮らせる環境でなくなった……唯一神社だけが無傷である。
神社内の隠し倉庫に子どもたちを避難をして、みんなして守っていたのこと……。
賊は子どもを攫うのを諦めて抵抗できなかった大人を連れ攫う。
必死に止めようとしたが、邪石のせいで思うように力が出せなく、救うことができなかった。
…………ふざけるな……死者まで出して攫うとかいかれている……。
子どもが出てくるとあり得ない光景にただ呆然とする……。
親が子に駆け寄って抱きしめて泣いたり……。
親が息絶えた姿を見て泣く子も……。
親が連れ攫われて泣く子も……。
この光景……見ていられない……。
子どもだけもない……大人もそうだ……。
ミツキさん、手伝いに来ていた人も泣いている……。
こんなの受け入れるわけがない……。
「レイ……魔力を抑えろ……暴発しているぞ……気持ちはわかるが、冷静に……」
ソウタ……冷静になれるわけないだろう……。
平和に暮らしていたのに賊どもに奪われた……。
――ふざけるな。
『レイ、怒りに飲まれてはダメだよ!』
――――ふざけるな。
『それ以上ダメ――――』
――――――ふざけるな!?
その瞬間、魔力が抑えきれなくなり、賊を殺すことしか考えられなくなった。
頭の中に浮ぶ――【怒り】のスキルを獲得した。
次の更新は5日です。




