259話 一家に一体
シエルに乗って戻っているのだが……なぜかマイヤが俺の頭に乗って揺らしながら上機嫌なのだが……。
『アハハ! 懐かれている! おもしろい!』
面白い要素は何もないと思うが……。
餌づけしないと離れてくれなさそうだ。
戻ると、フランカの家が設置してある。
フランカたちは早めに切り上げたようだ。
中に入り、リビングでは小人たちが飛び跳ねて喜んでいた。
「何かあったのか?」
「ああ、木を伐採していたらツリーシロップの木が見つかって喜んでいるぜ」
まさかのツリーシロップの木があったのか……って、アイシスさん……目を輝かせないでください。
「どこにありますか!? 非常事態です! すぐに採取を――」
「おい待て!? 開拓はどうする!? 一番張り切っていた本人が抜けてどうする!?」
「ツリーシロップも開拓の一つです!」
もうアイシスの暴走が止まらないな……。
俺もツリーシロップが採れるのは嬉しいが。
「アイシス、明日にしてくれないか? 今日はもう遅いし、夕食の準備もしないといけない……」
「取り乱して申し訳ございません……では、明日に作業を始めます」
ひと呼吸をし、アイシスは落ち着いた。
早く採りたい気持ちはわかるが、時間もあるからゆっくりでいいと思う。
落ち着いたことだし、夕飯を作る――。
マイヤ、頼むから作っているときは離れてくれないか……。
野菜を切っていると、小刻みに振るえている。
食べたいみたいだな。切った皮と芯を与えてると、変形をして手? を出して受け取り、音を立てて食べる。
食べ終わると喜んで飛び跳ねて離れていった。
廃棄するのを喜んで食べてくれるのは、こちらとしてはありがたい。
さすがスライムといったところか、一家に一体いると大助かりだ。
しかし、廃棄するものしか食べないのはすごいな。
やっぱり他のスライムと違って賢い。
マイヤの分も作るか。
夕食ができあがり、みんなで食べるいるが――。
マイヤは皿ごと丸吞みして、料理を消化している。
一瞬だな……消化が終わると、皿を吐き出して食事が終わった。
吐き出した皿は新品のように艶が出てキレイだ。
マイヤがいれば洗い物しなくて済むぞ……。
それを見たアイシスとリフィリアは食べるのをやめて呆然とする……。
「やりますね……」
「私も負けられないかも……」
キレイ好きの2人には新たなライバルになりますな……。
夕食を食べ終えて、食器を片づけようとすると、マイヤは誰にも取られないように、早く移動して、丸吞みをする。
「すぐ吐き出してください! それは私の仕事です!」
「それ……私が洗う食器……」
やっぱりそうなるか……。
2人は無理やりメイヤの身体をつかみ、止めようとするが、遅かった。
一枚一枚、食器を吐き出してキレイになった。
2人は膝をつき、床に手を当てて、落ち込んだ。
そんなに洗いたかったのか……。
そんなことは知らないマイヤは上機嫌で飛び跳ねて、リビングから離れて玄関に移動し、再び変形をして手でドアノブをつかんで外に出ていった。
やっぱり賢いな……。今後も普通に家に入ってきそうだ。
――――◇―◇―◇――――
――翌日。
朝食を食べにリビングに入ると、マイヤがいました。
まさか朝食の時間に来るとは予想外だ。
昨日と同様に食べ終えると、食器をを丸吞みし、キレイにして家を出ていった。
「くっ……今日も……止められませんでした……」
「次は必ず……」
これから開拓するから、時間を短縮して良いのでは?
2人とも洗い物には譲れないものがありますね。
引き続き水路を作っていく。
今日はルチルも手伝ってくれて、夕方には貯水槽を完成するまではかどった。
「ご主人、明日はシノちゃんと遊ぶから休むね!」
予想以上の働きをしてくれたから休んでも大丈夫だが。
ルチルのことだから自由気ままにやってくれるから別に強要はしない。
――――◇―◇―◇――――
3日後には、排水として川に繋げて、水路を完成させた。
しっかり作ってあるから水が濁らないように流れる。
貯水槽に魔道具を入れてあるからいつでも飲めるようにはなっている。
水の確保ができたら次は畑だ。
ルチルが「アースコントロール」で畑を耕して、小人たちは種を植える。
「よ~し、1週間後には出荷だ~!」
「「「お~!」」」
ミツキさん、出荷するの早くないですか?
もう少し畑を拡大してからのほうがいいと思うが……。
小人のみなさんは張り切って作業に取りかかり、切り上げる頃には全身泥だらけであった。
みんな家に入る前に水を浴びて大はしゃぎです。
「「「つめた~い!」」」
肌寒い季節だから風邪をひきそうだな。
お湯を用意しないと。
それを見たルチルは無表情になった。
あっ、何か考えている。
「よ~し、明日は温泉を探して掘るぞ~!」
「「「やった~!」」」
まさかの温泉を掘るのか……。
というかどうやって?




