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252話 司祭の行方


 ミランドさんと今後について話した。

 今住んでいる屋敷は売却しないでそのままにすること、ソウタは俺の土地に移動することを話し、わかってくれた。

 街を出ると言っても気持ちよく返事をしてくれる。

 なぜかというと――スタンピードを止めた俺たちが住んでいたと噂を聞いて移住してくれると思っているらしい。

 ……そんなうまくいくか?

 本当なら抜け目がない。


「領地に住む希望者はいるのか?」

「ギルドの設置はどうする?」

「開拓に人はいるのか? 知り合いを紹介しようか?」

 

 などと、ミランドさんは質問してくる。

 希望者はソウタたちだけだ。とういうか未開拓の地で行きたい人なんてまずいない。

 

 ギルドの設置は――俺たちで魔物を対処できるから冒険者ギルドは今のところ大丈夫だ。

 商業ギルドも俺の土地に商売するほどのメリットがないから今のところ考えてはいない。

 

 開拓は土地の周りを把握していないし、リフィリアに相談してどこまで開拓していいか聞かないといけない。


 その質問に「まだ考えていないので保留です」と言って話は終わった。

 本当に気が早い……。


 話が終わったからゆっくり食事でもしようかと思ったが、そうもいかなかった。

 お偉いさんが次々と集まってきて、ミランドさんと同じで質問をする。

 考えていることは一緒ですね……。

 アイシスは俺が困っていることがわかると、途中から加わり、対応してくれる。

 いつも助かります。


 お偉いさんの接待をしつつ、お祝いが終わった。


 

 


 ――――◇―◇―◇――――



 

 ――5日後。

 


 第一王女――リンナさんの病が治ったことが王都内で広まり、さらに活気が溢れた。

 

 やっぱり心配されている人も多かったのか、泣いて喜んでいた人もいると騎士から報告があった。

 それを聞いたリンナさんは申し訳なさそうでした。

 事情が事情でしょうがないと思う。これはベースンがすべて悪い。

 

 そして俺との婚約発表は民衆ではまだしないということだ。

 いきなり王女が復活して俺との婚約宣言をするとみんなパニックになるからという王様の配慮だ。

 タイミングを見計らって言うらしいです。

 俺としてはありがたいが、リンナさんは不満の様子だ。

 いや、そこは我慢してください……。


 ステータスを確認すると称号の【賢者の末裔】から【賢者】に変わった。

 アイシス、フランカ、ルチルも【賢者】の称号が付いた。

 周りからスタンピードを倒した「賢者」と呼ばれるようになったからだとは思う。

 「賢者」と呼ばれるのはむずがゆいが、正体を隠すにはいいか。


 庭でリンナさんと王女さんとお茶していると、王様は苦笑をしてヴェンゲルさんは重い顔をしながらくる。


「どうしたの親父? らしくないわよ」


「いや~ちょっとね、良い知らせか、悪い知らせなのかわからないのだよ~」


「なによ、早く言いなさいよ」


「実はベースンが教会の資産を多く持って、一部の人と夜逃げしてね……」


 まさかの夜逃げか……すぐ捕まりそうだな。


「あら、いいじゃない。横領罪として捕まえなさいよ」


「それがね……厄介なことに、ズイール大陸の方に向かっている……亡命するみたいだよ」


 だから逃れるためにズイールに行くのか。

 いや、アスタリカ通るのならすぐにバレそうだが。


「大陸を越えるならアスタリカで捕まりそうね。何が厄介なのよ?」


「そうなんだけど……ベースンが普通にアスタリカを通るわけがないよ。もしかしてだけど、ズイールの奴らと関わりがあると思う。一部の人と逃げたと言ったけど、調べたところズイール出身の奴らだった。別の道を通って亡命する可能性はある」


「じゃあ、大陸を出る前に早く捕まえられるでしょ? いくら一緒に逃げた奴らだって護衛する力はないはずよ」


 リンナさんの言うとおり早く捕まえれば問題ない。

 今から騎士やら冒険者に頼んでいけば間に合う。


「そう思うじゃん。それが厄介なんだよ……騎士を派遣したところ返り討ちにされてね……話によると護衛1人いるらしい……」


 護衛がいるのかよ。じゃあ、そいつはズイールの奴か?


「えっ!? そいつド変態(ベースン)に加担したら犯罪じゃない!? 誰だかわかるの!?」


「元冒険者ギルドで活躍したSランクのジャックだよ……」


 …………そこでジャックかよ!?

 確かに冒険者剝奪されて、どこも行く場所がないならズイールに一緒に行く可能性はあるか。

 というか司祭はピンポイントでジャックを護衛して雇ったな。何かしら耳に入ったに違いない。

 偶然とは思えない。


 同席していたスカーレットさんは溜息をつく。


「いつもルージュに纏わりつく痴漢ね……そのままズイールに行くなら構わないけど」


 妹の心配をするならそう思いますよね。

 まあ、ズイールに行ってしまうならルージュさんとソウタは安心して暮らせる。

 

「まさかアイツが護衛をするとは予想外だ……。吹き飛ばさないで牢屋に放り込めばよかったぜ……」


 ヴェンゲルさんは少々後悔していますね。

 過ぎたことはしょうがないです。


「じゃあ、そのままズイールに行ったらどうするのよ!? 帝国まで行ったら情報が洩れるわよ!」


「僕は面倒な元司祭がいなくなるのはいいことだけど、リンナの言うとおり情報が洩れる可能性がある。だけど安心して、偵察者を送るから安心してね! スタンピードも終わったことだし、余裕ができたから今のズイールを探らないといけないからね!」

 

 王様は俺を見て笑顔で言う。

 ということは邪石について調べるみたいだな。

 ここは王様に任せれば心配はない。

 

「よく言うわね……本当に大丈夫なの?」


「大丈夫、大丈夫。信用できるズイール大陸の人が王都にいるから任せて」


 重要人物がいるのですね。

 

「その人は誰なのよ?」


「ひ・み・つ、だよ~。リンアイナもそのうちわかるよ」


 秘密か、まあ俺たちがいると話せない人みたいだ。


「もういいわ……親父に任せるわ……」


 リンナさんは飽きれた様子で言う。

 俺は何も起きなければそれでいいけどね。

 

 明日から王都を離れて新しい土地で新生活だ。

 その前にカルムに行ってみんなに挨拶をしないと。

  

次の更新は13日です。

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