250話 計画通り……
出てきたのは――白紫色のドレスを着て、ミスリルのティアラを頭につけたリンナさんだ。
ベースンがいるのに出てきていいのか!?
周りは驚かないでホッとした様子だ。そういえばサーリトさんと侯爵も事情を知っていたな。
いや、ここにいる人――ベースン以外は事情を知っているか。
その本人は驚きを隠せていないが……。
というか王様……何か企んでいますね。
「リンアイナ殿下……お目覚めになられたのですね!?」
ベースンは騎士に抑えられているにも関わらずリンナさんに近づこうと暴れる。
リンナさんはベースンに振り向いて【威圧】を出しながら笑顔を送る。
「ひぃぃぃぃ――――!?」
王様と違い、長く出していて、尻餅をついて、この世の終わりかのような表情して身体を震えさせる。
【威圧】に対しての抵抗力がなさすぎでは?
俺たちはリンナさんが通れるように端に寄り、王様の近くに立ち、周りにお辞儀をする。
「見ての通り余の娘――リンアイナが闘病から解散され元気になった。こんな嬉しいことはない」
周りは拍手喝采、喜びの言葉と歓声が上がる。
ベースンをごまかすために芝居しているのですね……。
リンナさんを説得できたのはこのためか。
この機会を利用してベースンの思惑を阻止することはわかった。
王様はよく考えている。
「ここからが重要なことだ……リンアイナを治してくれたのは…………賢者の弟子――いや、賢者であるレイだ」
…………俺が治した設定かよ!?
周りは「そうきたか」と驚いている。ここからは芝居ではないですね。
俺……利用されています……。
「それでだ。スタンピードを阻止し、娘を治した賢者レイにはリンアイナと婚約を結ぶことにする!」
ちょっと何言ってんだ王様は!?
お偉いさんの前で言ってしまったら正式になるぞ!?
周りは予想外の発言で戸惑いもあったが、スタンピードを止めた本人だからいいのか、頷いて納得している。
おかしいと思った。リンナさんを簡単に説得したのはこういうことか……。
まんまと王様のシナリオに嵌められたました……これが政略結婚と言うやつですか……。
まだ婚約だから政略とは言えないか。
けど、俺はもう逃げられない……全身汗が垂れています。
『アハハハハ! おもしろい展開だね! 王様最高だよ!』
エフィナさん……笑えない冗談ですよ……。
「さあ、リンアイナよ。婚約の宣言をしなさい」
「はい、スタンピードを止め、私を長年の病を解放してくれた賢者レイに一目惚れしました。喜んで婚約を宣言します」
リンナさんは満面の笑みで言います。
「賢者レイよ、娘の婚約、受け止めてくれるかの?」
完全に回避できない……。
「よ、喜んで受け止めます……」
周りに祝福される中、強制的に婚約が決まりました……。
もう大事になってしまった……俺の生活はどうなるのだ……?
謁見が終わったら聞くか。
あっ、ベースンのこと忘れていた。
そいつの方に振り向くと――。
「お、俺の計画が……」
まだ【威圧】に当てられて震えている。
大人しくているから騎士は抑えず見張っているだけだ。
その瞬間、ゆっくりと立ち上がり扉の方を向いて――。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ――――!」
威圧に逃れたいのか、発狂しながら走って行ってこの場を出た。
とりあえず思惑は阻止できたことでいいのかな。
「ふぅ~ようやく嫌な奴が出ていったよ。みんなは肩の力を抜いてね。お疲れ様」
王様は普段の口調に戻るとみんなはホッと一息つく。
というかベースンがいなければ堅苦しい謁見ではなかったはず。
みなさんお芝居お疲れ様です。
「いろいろと聞きたいことがあると思うけど、今日の夜にお祝いするからその時にね。よろしく~」
こうして謁見が終わり、王様は笑顔で手を振ってお偉いさんの見送る。
俺たちはに残るように言われた。
みんなが出ていくとリンナさんは王様の胸ぐらを掴み揺さぶる。
「親父、どういうことよ! なんで婚姻でなく婚約なのよ!? 空気を読ん婚約って言ったけど、私は早く結婚したい!」
いやいやリンナさん、気が早いですよ……。
「やだな~リンアイナってば、みんなの前で婚姻とか言ったら大荒れだよ~。だから婚約にした。だってすぐに結婚できないでしょう?」
王様の意見が正しいですな。
まあ、いきなり婚約宣言も一歩間違えれば荒れそうだが……。
「私の婚期を遅らせるつもりなの!?」
「遅らせるも何もレイ君が婚約宣言したから絶対に結婚できるから大丈夫だよ」
結局俺なしで話を進めています……政略結婚確定です……。
「それもそうね。じゃあ、いつ式を挙げるのかしら?」
「そうだね~これから公の場にリンアイナが治ったと公表しないといけないし、レイ君も土地の開拓もあるから早くて5年、遅くても7年くらいかな」
また勝手に決めている……俺の意見は?
「なんで5年以上必要なのよ? レイ君なら3年で開拓できるわよ」
リンナさんも勝手に言って……。
「レイ君はまだ16歳だよ。成人しているとはいえ、第一王女と結婚するのだからもう少し先のほうがいいよ。レイ君だってすぐに結婚とか荷が重いよ」
ごもっともです。いや、第一王女と結婚時点で荷が重いが……。
まあ、王様の配慮かもしれない。
「しょうがないわね……わかったわよ。そのくらい待つわ」
「理解してくれて助かるよ。レイ君そういうことだからよろしくね」
「わ、わかりました……」
もう拒否権がないからいいです……。
5年経てば結婚か……今は想像できないが、未来の俺に託すしかないか。
そのくらい経てば結婚は覚悟しているだろう。
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