249話 事前通り?
お偉いさんが集まるまで1週間が経過した。
俺はのんびりと待機しています。
他――アイシスは料理長と一緒に王様のお口に合う料理を作っていた。
基本的には甘めの料理だが、王様が最近お気に入りなのが照り焼きソースを使った料理だ。
ワネッカも照り焼きに使われている醤油や日本の調味料を絶賛して、今後ミツキさんを通して注文することになった。
お城の食卓に日本の調味料が使われることになりました。
フランカは王女さんの要望でミスリルの槍斧を作っていた。
なぜならリンナさんと真剣勝負をしたいからです……。
稽古用の武器だと物足りないからと、リンナさんと一緒にお願いされたみたいだ。
姉妹揃って血の気が多いですね……。
リフィリアは調合室でスカーレットさんと一緒にお薬を作っていた。
何を作っているか聞くと――ソウタのために滋養強壮のマナポーションを作っているみたいだ。
ソウタは毎日騎士たちと勝負――死闘でお疲れだからと言うことです。
3日で赤い色をした薬が完成した。
その本人に無理やり飲ますと――全身に湯気が出て、白目をむいて無言になり、黙々と勝負しています。
……狂化している。
数時間経過すると、ソウタは倒れて気を失ってしまいました。
「まだ改良の余地がありそうね」
「あら、1日頑張れるように作ったのだけど、素材が足りないのかしら?」
2人とも不気味な笑みを浮かべて調合室に戻っていく。
まさかソウタを実験に使うとは……何か企んでいますね。
ルチルは城でのんびりしないで空間魔法を使ってリフィリアの故郷に行ってシノと遊んでいる。
王様はルチルの行動が気になったのか聞いてみて、ルチルはシノのことを話した。
王様は目を輝かして、会いたいと言い始めました……。
神獣を滅多に見る機会なんてないですからね。
ルチルは大喜びしてすぐにシノを庭に呼ぶのだが……なんでセイクリッドもいるのだ!?
「来たそうな顔をしていたから呼んだ!」
そういう問題ではないだろう!?
王様は…………セイクリッドに目もくれずシノに思いつき抱きつく。
「ワフゥ!?」
シノは急に抱きついて困っています……。
大丈夫だからと言ってすぐに抱きつかないでください……シノが嫌がって嚙みつく可能性があるから危ないですよ……。
王様は多少モフったらセイクリッドに気がつく。
「我は精霊の森の守護者――セイクリッド! よろしく頼むぞ!」
腕を組んで堂々と挨拶をしました。
王様に訳を話すと喜んで受け入れてくれました。
最終的にはお偉いさんもリフィリアの故郷に視察しに来るから言わないといけないか。
その後、みんなに挨拶をしてシノとセイクリッドも城内に入っていいと許可をもらいました。
やっぱり器が大きいです。
シノはルチルと庭で遊び、セイクリッドはファイスさんと稽古をした。
しかもセイクリッドとファイスさんは意気投合したのか仲が良いです……。
ダンジョンに閉じ込めた魔物と仲が良くなるのは複雑な気持ちです……
こうして日にちが経ち、謁見の日になった。
朝食を食べたら客室用の寝室で俺たちは待機をして、お昼になり、ドアをノックしてヴェンゲルさんが来た。
お偉いさんたちが来て、準備ができているようだ。
俺たちはヴェンゲルさんの後ろについていき、長い廊下を歩く。
今回は少人数で謁見を行うわけではないから緊張はある。
まあ、事前に王様と打ち合わせしたから問題はなく終わりそうだけど。
精霊組、シエル、セイクリッド、シノは都合により謁見に出られないから裏庭で待機する。
長い廊下が終わり、大きな扉――謁見の間に着いた。
扉の外に待っていた2人の騎士がゆっくりと扉を開ける。
両側にファイスさん率いる騎士、正装をしたお偉いさん――サーリトさん、侯爵数十名と集まっている。
扉近くには司祭、奥の方にはスカーレットさんがいた。
今回聖女は欠席しているみたいだ。
床に敷いてある赤い絨毯を歩いて、玉座に座っている王様と王妃に横に立っている王女さんの近くに行き膝をつく。
当然だが、リンナさんは大病を患っている設定だからここにはいない。
「ご苦労であった。グランドマスターヴェンゲル・ガルタット。賢者の息子――レイ。弟子であるアイシス、フランカ、ルチル。精霊使いソウタ。見事スタンピードを大陸から退け、誠に大義である」
「はっ! ありがたきお言葉、恐縮でございます!」
ヴェンゲルさんが言うと、王様は頷く。
「うむ、其方らに褒美と爵位をやろう。ジェストよ!」
王様の発言でジェストは前に出て丸めた羊皮紙を広げて――。
「スタンピードの指揮をしたヴェンゲル・ガルタットはギルド運用として白金貨500枚を褒美として渡す。前線で活躍し、見事元凶を討伐したレイには男爵を授け、土地と白金貨100枚褒美として渡す。
前線で活躍したアイシス、フランカ、ルチルには士爵を授け、白金貨50枚ずつ褒美として渡す。後方で活躍したソウタ・シラカワには士爵を授け、白金貨20枚、特例で土地を褒美として渡す」
かなり大金がはいるのですが……いや、未開拓地の土地を開拓するのに妥当な金額かもしれない。
周りのお偉いさんは何も文句は言わずに「おお~」と頷ける。
なんだかんだすぐ終わりそうで――。
「私は納得いかぬ!」
ベースンがいきなり飛び出してきました……。
えぇ……コイツ空気を読まないのか……。
「ベースン・ユクーゼ! 言葉を慎みなさい! 英雄方に失礼だぞ!」
「黙れ獣人風情が!」
おいおい、注意したジェストを罵倒したぞ……。
ベースンは前に行こうとするが、騎士が前を防ぐ。
それを見た周りは呆れている。「またか」という声が多い。
かなりの問題児だな。王様も嫌になるのはわかる。
「前に行かせろ! この情弱風情が!」
無理やり前に行こうと暴れていますが……。
「ベースン・ユクーゼよ。何か不満でもあるのか?」
王様の言葉でベースンは暴れるのをやめる。
「国王陛下、なぜ私に褒美はないのですか! 私は女神のお告げを言って、この者を導いたのです! 私にももらえる資格があるります! しかも討伐しただけで男爵になるとかおかしいです! たかが士爵になる者に土地を渡すだとありえません! 考え直してください!」
…………何様のつもりで言っているのだ。
情報量としてお金をもらっているはずだが、完全に痛い奴だろう。本当に司祭なのかと疑う。
さて、王様はなんて応える。
「この愚か者が!」
「ひぃ!?」
王様は大声で怒鳴り一瞬だが、【威圧】を出し、ベースンは驚いて後ろへ下がる。
なぜだろうか、もう小物にしか見えない。
「お前は何もしていないだろうが! お前はただ自分の手柄を立てたいとする愚か者に過ぎない、お前の失言にはうんざりする」
「し、失言ではありません! 私は女神の導きのままにこの大陸に貢献しています! 私は自分の手柄には――」
『うわぁ……女神の導きとかバカみたい……大噓つきだ……』
エフィナの言う通り、ベースンは何もしていない。
手柄があるとしたらお告げを言った聖女さんのほうだな。
「もうよい、この話はおしまいだ」
「ま、待ってください!」
ベースンは慌てるが、王様は聞く耳を持たない。
というかこの空気でどう話を進めるのだ?
「皆の者、取り乱してすまぬ。だが、他に報告がある――大事な報告だ。扉を開けよ」
「や、やめろ! 離せ!」
騎士たちはベースンを無理やり引っ張り端に寄せ、扉が開く――。
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