244話 元凶の報告
数十分後にルチルたちが家の中に入って来た。
シノの毛並みはルチルの髪のようにサラサラとして輝いていた。
シノは尻尾を振って喜んでいる。
「シノちゃんは大人しくて偉かったからおいしいご飯を作るよ! 待っててね!」
「ワン!」
ルチルはアイシスが夕食の準備をしている横で調理をする。
シノは台所の前でおすわりをして待っていた。
ここまで懐くのは本当にすごいな。
知性もあり、さすが神獣だけのことはあるな。
その後にザインさんたちも家の中に入って来て、警戒するほどではなく大丈夫みたいだ。
みんなでご飯を食べて、明日デストルツに行って報告のため、早めに就寝をする。
エネミーマインド――元凶の報告をしようと思ったが、ヴェンゲルさんがいる時にしよう。
――――◇―◇―◇――――
――翌日。
朝食を食べて、残りの魔物を回収してデストルツに行く。
急ぎだから「ゲート」を使って行くことになる。
俺、アイシス、リフィリア、ルチルでゲートを使う。
「「「――――ゲート!」」」
視界が変わり、平地――デストルツの手前に移動した。
初めてゲートで移動した人はかなり驚いていた。
「私も使えれば効率が良くなる……」
ガレンさんもリリノアさんさんみたいに考えていますね。
確かに色々と行っている本人は欲しい魔法ですな。
「ハハハ! オイラもこの魔法があれば強い魔物といつ何処でも戦えるな!」
戦闘狂のヴィクトリアさんには危ない魔法です……。
オルリールはいつも通り呆れています。
街の近くに行くと、周りを警戒していた冒険者が俺たちに気づいて向かってくる。
「アニキたちどうしたのですか!? まさか……」
「もう終わったぞ。グランドマスターを呼んでくれないか?」
「マジかよ!? スゲェー! わかりました、すぐ呼んできます!」
ヤーワレさんの指示でジェリックは防壁を上り、街に行った。
それまで待機――。
「おかえりなさい~! 無事で良かったわ~!」
全力でトリニッチさんが走ってくる。
ソウタは後退りしようとすると精霊たちに止められて――。
「もう離さないわよ~!」
「――ギャアァァァ!」
突然の熱い抱擁されて思わずソウタは叫んでしまった。
逃げようと必死に離れようとするが、トリニッチさんは魔力を思いっきり出して絶対に離さない。
いくらソウタでもSSランク人には逃げられないな……。
「叫ぶほどワタシと再開するのが嬉しいのね~。お疲れ様~これはワタシのからのご褒美よ~」
「やめてくれ――――!」
そのまま熱い口づけ――いや、吸われている……ソウタはおとなしくなり、精魂を吸われたかのように干からびれいる……。
「あら~ワタシの口づけで落ち着いたみたいだわ~今夜は離さないわよ~」
『アハハハハハ! いや~ソウタは幸せだね~』
エフィナは笑って言う、精霊たちは「うんうん」と頷いています。
戻って早々ソウタは大変だな……。
「ねえ……ギルマス……ルチルちゃんが乗っている狼って……」
セーレさんは恐る恐る指を差す。セーレさんもわかったか。
「神獣フェンリルだ。嬢ちゃんが飼うことになった」
「やっぱり神獣なの!? というか飼うの!? …………よく考えたらシエルちゃんがいるから何驚いているのワタシは……」
いや、シエル関係なく普通に驚いていいですよ……冷静にならなくても。
「アニキ、連れてきました!」
ジェリックはヴェンゲルさん、ルージュさん、サイガさんを連れてきた。
「本当に終わったのか……って……神獣がいるぞ!?」
やっぱりヴェンゲルさんも驚きますよね……。
ヴェンゲルさんにもシノのことを話した――。
「そうか……神獣も災難だったな。ルージュ、神獣を街に入れさせるがいいか?」
「いいわよ……ブルーワイバーンと同じ扱いにするから問題ないわ……」
まさかシエルと同じ扱いにするのはありがたい。
もしダメだったらリフィリアの故郷でそのまま住ませようと思ったが、大丈夫みたいだ。
「気を取り直して本当に終わったのか? ガレン答えてくれ」
「はい、この目でしっかりと見ました。皆さん圧倒的な強さで魔物がほとんど全滅しましたよ。誰か証拠となる強い魔物を出してください」
まあ、疑うのもおかしくはないか、ガレンさんの言う通り、強い魔物――エネミーマインドを無限収納から出した。
「コイツは……SSランクのエネミーマインドじゃないか!? だが、俺が知っているのと少し違うな……異常種かもしれない」
SSランクの魔物なのか。というか異常種なのか。
「全ての元凶ですよ。【隠密】のスキルを使って隠れたりしていましたし、逃げようとすると数万の魔物が押し寄せ塞がれたりして、しまいにはSSSランクのタイラントアースドラゴンに指示もしていましたよ」
「はぁ!? 俺が知っているエネミーマインドじゃないぞ!? 【隠密】のスキルを持っているとか聞いたことがない! 普通のエネミーマインドならAランク以下の魔物を最大数千を集める厄介な魔物だぞ! それが本当ならコイツは異常種確定だ……」
完全に異常種ですな……普通のが厄介って言っているけど、弱くみえる……。
「叔父よ。レイが言っていることは本当だ。でなければここにはいないぜ」
「そうだな……確認のためサイガ、ハーピーたちに視察を頼む」
「わかりました! 喜んで行ってきます!」
サイガさんは笑顔で街に戻る。
魔王が苦戦したスタンピードを終わらせたからそうなるか。
「しかし……お前さんたちは予想以上に強いな……陛下が少人数で行かせるのも納得する」
ヴェンゲルさんの言う通り、今思うと王様は何かしら俺たちを見抜いていたのかもしれない。
まあ、本当だかわからないが。
「とりあえずみんなお疲れ様……私もアナタと甘えたいけど、後処理が終わるまで我慢する……今回はトリニッチに譲るわ……」
意外だな、ルージュさんはスタンピードが終わったらすぐに甘えると思ったが、ギルドマスターだしそうもいかないか。
っていうことは……。
「オホホホホ! ソウタちゃんのことは任せてちょうだい! それじゃあ~疲れているソウタちゃんをワタシの家で休ませるわよ! お先に失礼するわ~。精霊ちゃんも来てね!」
はい、ソウタ……頑張れ。何があろうと温かく迎えるから安心しろ。
トリニッチさんは伸びているソウタを背負って精霊たちと街に向かった。
とりあえず俺たちはハーピーたちの視察が終わるまで待機だな。
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