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24話 猪祭⑤

 ビッグボアは……狂ったようにキングボアに近づいて――。

 


「ブヒィ! ブヒィ! ――――ブヒィィン――――!」



 ――――ドドドドドドドドド――――。


 

 鳴き声が周りに響きキングボアが動き始めた――。


「マズいわ! 番いを見つけたみたい!」


「早く仕留めないと!」


「スールたちは何やっているのよ!」


 スールさんたちはボアの処理で身動きが取れない状況だ……。

 キングボアが速すぎて間に合わない……。


「街の方角に向かっているわ! このままだと被害が……」


 この速さだと誰も追いつかない……俺が行くしかない……。


「俺がキングボアを仕留めます! セーレさん、後はお願いします!」


「レイちゃん、待って!」


 【身体強化】を使い、思いっきり走った――。


 ……って精霊もついて来てる!? 


「危ないからセーレさんのとこにいて!」


 首を振り、嫌がっている……。

 なぜそこまでして俺についてくるんだ……はぁ……しょうがない……。


「わかった……ただし、魔法は使わないこと!」


 喜んで頷いた。

 精霊も魔法を使って魔力が消耗していて危ないからだ。


 ――しかし【身体強化】を使っても追いつかない……時魔法を使う――。


「――ヘイスト!」


 俺と精霊に身体を速くする魔法をかける。

 これならキングボアを追うことができる。


 ――キングボアまで200mくらいの距離に近づいた。

 よし、このまま遠回りして仕留める。


「ブヒィ! ブッブッブッ――――ブヒィィン――――!」


 急に息が荒くなり興奮している――番いが近くにいるのか? 

 周りにはボアなんていないぞ……。


 1㎞先に人が――ブレンダとカミラさんだ……。


 キングボアはその2人の方に向かっている……番いってまさか……いや、そんなのはあり得ない……俺の勘違いだ。


『あ~まさかと思うけど……番いってあの子のことかな?』


「いやいや、おかしいでしょ!? 人が番いとかあり得ないだろう!」


『ボクが思うこと言ってもいいかな?』


「時間がないから早く言ってくれ!」


『多分だけど……あの子何処かでお花を摘みに行ってた可能性があるよ……』


「あ……あり得るな……」


『あの子、あのままだと連れてかれて、お――』


「それ以上言わなくていい! ハッキリわかったのは、ただの変態豚野郎ってことだ!」


『そう! あの変態豚野郎をやっつけないとね!』


 いったいどうしたらこんな偶然が重なるのだか……。

 なんとしてもあのキングボア(変態)より先にブレンダのとこに着かなければ。


 ――キングボア(変態)を追い抜き、何とかブレンダのとこまでたどり着いた。


「あっ、お兄ちゃん! それに……精霊さん?」


「ぼっちゃま! キングボアが!?」


「話は後で!」


 キングボア(変態)の距離があと200mだ、これくらいあれば充分に体制を整えられる。


「ブヒィィン――――! ブヒィィン! ブヒィィン――――!」


 俺が邪魔をしてるみたいに見えたのか怒り狂う――。

 ……デカッ!? 全長15m以上あるな……。


 デカいのはもうどうでもいい、あのキングボア(変態)にはお仕置きが必要だな……。 

 思いっきり魔力を込め――。



「――――アイスウォール!」


 

 キングボア(変態)より大きい厚い氷壁を創る――――突っ込んで来た――――。


「ブヒィィン!」


 衝突し怯む――その間に氷壁を上りる。

 【武器創造】で大きい銀の槍(シルバーランス)を用意して――壁上に辿り着き。

 キングボア(変態)の頭目掛けて飛び込み――――。



「――――落烈槍!」



「ブヒィィン――――!」



 ――――頭に突き刺した――って!? 

 暴れ始めた――打ちどころが悪かったのかもしれない、危ないから槍は頭に突き刺したまま飛び降りる――。



「ブヒィ! ブヒィ!」



 暴れ狂っているが、今度は確実に仕留める――氷魔法を使い――。



「――アイスバインド!」


 

 キングボアの四足を氷で動きを止め、そして――。



「――――アイスクレイモア!」


 

 全長5mの氷の両手剣を創り、それを両手に握り締め、キングボア(変態)の首を狙い下から振り上げる――。



「――――豪氷刃!」


「ブヒィィン! …………ブヒィ……」


 首を断ち切り――仕留めた……。

 これで周辺のボアも落ち着くだろうな。


「お兄ちゃん!」


「ぐはぁ!」


 後ろからブレンダが抱きついてきた……。 

 いつものことだが、本当に力が強い……いや、前以上に力が強い……一般の人だと骨折するぞ……。


「いつもわたしを助けてくれる! お兄ちゃんはわたしの英雄!」


「英雄だなんて大袈裟な……」


 キングボアを仕留めただけだぞ……。

 そんな大層なことはしていない……。


「ぼっちゃま、大丈夫ですか!?」


「ええ……大丈夫ですよ……」


「お嬢様と私を助けていただきありがとうございます! もうダメかと思いました……」


「いや、大袈裟ですよ! キングボアを狩っただけですから!?」


 カミラさんならみんなと連携を取れば倒せなくもないはず……。


「とんでもございません! このキングボアはBランク……いや、Aランクの強さでございます! 私には無理な相手です……」


 はいっ!? 

 いくらなんでもそれはおかしいでしょ!? あとで確認するしかない。


「それとお兄ちゃん、精霊さんの姿が見えるの!」


「えっ、そうなのか!?」 


「うん! キレイな女の子だね!」


 ブレンダがそう言うと精霊は顔が赤くして照れている。

 精霊が成長したから見えるようになったのか。 いや、でもおかしいぞ……それなら姿が見えなかった人は全員見えるはず……。


「カミラさんは精霊の姿は見えますか?」


「いえ、光って見えるだけです」


 そうなると、また特定の人が見えるようになったことになる。



 ――――ドドドドドドドドド――――。



 おい、今度はなんだ!? 

 …………ボア数百頭の群れがこっちに来る――。

 キングボア(変態)倒したのになぜだ……。


『あ~キングボア倒れたからあれだね……強いのがいなくなったからみんなあの子狙っているね……』


『結局奴らただの変態じゃないか!?』


『これはボクも予想外だよ……もしかしてあの子――』


『いいよ、言わなくて! あのボアの群れをなんとかする!』


『そうした方がいいよ!』


 さすがにこれで最後にしたいところだ……。


「カミラさん、ブレンダと氷壁の後ろに隠れてください! 俺が食い止めます!」


「ぼっちゃま、さすがにあの大群は無理です! 一緒に逃げましょう!」


「このままだと街に被害が出ます! 大丈夫、俺を信じてください!」


「わかりました! 気をつけてください、ご武運を! お嬢様、こちらへどうぞ!」


「お兄ちゃん! 頑張って!」


 2人は後ろに隠れた。さて、どうやって止めるか……。

 精霊はやる気満々でいるが……。


「今日はもう魔法使っちゃダメ、俺がやるから」


 あまり良い表情ではないが渋々納得してくれた。さすがに精霊はあの大群に魔法を使うと倒れてしまうから危ない。

 俺も念のために無限収納からマナポーションを出し飲む。

 あの大群はしょうがない……試しにあの魔法を使うしかない……氷と風魔法を掛け合わせ――。



「――――ブリザード!」



 ――氷の強風がボアの大群に襲い掛かる。

 次第にボアの動きが鈍くなり動かなくなった――発動が終わるとその大群は氷漬けになっていた。

 

「もう無理……疲れた……」

 

 そのまま地面に倒れる……さすがに()()()()は慣れない……魔力を使いすぎた……。

 頭に【混合魔法】のスキルの獲得が浮かぶ……。

 スキルで獲得してもこれは魔力の消費が激しいからあまり使えない……。


 【魔力感知】で周りの反応もないし、しばらくはこのままでいたいな……。

 しかし……。


「お兄ちゃん!」


「ぐはぁ!」


 いや、このタイミングで抱きつくのやめて……。魔力があまりない時にこれはキツイ……。


「やっぱりお兄ちゃんは、わたしの英雄!」


「うぅ……ぼっちゃま……私は感激です……これはミランド様に報告しなければ……」


 いったいなんの報告だ!? しかも泣いている! 変な報告でなければいいのだが……。


「レイちゃん、大丈夫!? ケガはない!?」


 セーレさんが来た……。


「大丈夫です、魔力が消耗しただけですよ……」


「良かった……いや良くない! これ飲んで!」


「ありがとうございます……」


 マナポーションをもらい飲む――少しは楽になった。


「これをレイちゃんと精霊ちゃんが……」


 まあ精霊と一緒にやったことになれば大ごとにはならないだろう。

 

 けど精霊は首を振る……あっ……それはちょっと……


「えっ!? レイちゃんが全部やったの!?」


 精霊は喜んで頷いた……はぁ~面倒ごとは回避できないか……。


「むちゃさせて、ごめんね! 少し待ってて! 馬車を呼んで来るから!」


 セーレさんは街の方へ向かった。


 ――その後、セーレさんが呼んだ商業ギルドの人の馬車に乗り、今日の狩りは終わった。

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