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242話 犬ではありません


 アイシスが合流をして、俺が休憩している間に周りの魔物をお願いをする。

 ある程度、休んだら残りの魔物を倒す――。


 ――日が暮れて薄暗くなり、周りの魔物をほとんど倒した。


『いや~今日中に終わって良かったね~』

 

 エフィナさん、戦って半日くらいだぞ……いろいろとおかしくないか……。

 確かに無我夢中でやっていたが予想外です。


 嬉しい誤算と考えよう。

 とりあえず倒した魔物の回収でもしますか。


 アイシスと一緒に回収をしていると、ルチルと他の魔物とは違う魔力が一緒にこっちに向かってくる。

 姿が見えると、ルチルは白銀の毛並みをしたやせ細っている狼に乗っている。

 もしかして――。 


『神獣フェンリルだね~。まさかスタンピードに巻き込まれていたのかな?』


 ですよね!?

 この世界のおとぎ話によく出てくる神獣ですよね……確かにフェンリの名前は由来はフェンリルからのはず。

 獣人は憧れている地名や人物、有名な名前を取っているからなー。

 オルリールさん、グラシアさん、シャーロットさんもその中のはず。


「ご主人様! ワンちゃん飼ってもいい?」


 神獣をワンちゃん呼ばわり!?

 しかも飼いたいのかよ!? 

 フェンリルは俺たちに警戒しないで尻尾を振っている。

 おとなしいが、神獣を飼うのはダメだな。

 まあ、シエルは例外だが。


「飼うのはダメだぞ」


「えっ、飼っちゃダメなの!? アタシがお世話するからお願い! ワンちゃんは凄いお利口さんだからお願い! ほら、お手! おかわり! おすわり!」


 そう言ってフェンリルをルチルの言う通りにする。

 フェンリルは尻尾を振って喜んでいる。

 いや、そういう訳ではないのだが……。


「いや、飼うのはダメだが、保護はいいぞ。やせ細っているからその後だ。フェンリルが一緒にいたいなら別だが」


「それは大丈夫! ワンちゃんが一緒に来たいと言っているから大丈夫! ねえ、ワンちゃん!」


「ワン!」


 フェンリルは気持ちよく返事をする。

 しかし……ルチルに懐いているのは不思議だ。


「というかどういう経緯でフェンリルに会ったのだ?」


「えっとね――――」


 ルチルはフェンリルとの経緯を話してくれた。

 まさかのゴブリンキングに虐待されていたのか……。

 じゃあフェンリルにとってルチルは命の恩人ってことで懐かれるのも無理もないか。


「わかった、ルチルにお任せするよ。アイシスもそれでいいか?」


「問題ありません」


「やった~! ありがとう、ご主人! ワンちゃん、一緒に暮らせるよ!」


「ワン!」

 

 ルチルはフェンリルを抱いて喜んでいる。

 

『うん、うん、良かったね~』


 まあ、結局こうなりますよね。


「ただし、街いると大事になるからリフィリアの故郷に住んでもらうぞ」


 さすがにセイクリッド同様に大変なことになるからリフィリアの故郷にいるのが無難だ。


「わかった! ワンちゃん、すぐには一緒には暮らせないけど、少し待ってね!」


「ワン!」


 フェンリルはルチルの周りを回って喜んでいる。

 お互い納得しているから安心した。


「ところで名前はどうする?」

  

「そうだっだ!? ワンちゃん、名前はあるの?」


「クウゥン……」


 フェンリルは首を振っていい返事をしない。

 そうなりますな。


「それなら助けたルチルが名前を付けてくれ」


「わかった! 雌だから~え~っとね――」


 ルチルは腕を組みながら考えている。

 考えているならすぐに決めなくてもいいけどね。


「決めた! ワンちゃんの名前はシノ! よろしくねシノちゃん!」


「ワン!」


「あはっ、くすぐったいよ!」


 嬉しいのか尻尾を大きな振ってルチルを舐める。

 気に入ったみたいだな。

 

「ダンナ……見つけたぜ……って、ルチ助、なんだよその狼は!?」


 あまり良い顔をしないでフランカが駆け寄ってきた。

 何か不満でもあったのか?


「今日から一緒になるワンちゃん――シノちゃんだよ!」


「どう見ても狼だろう!? こんなに大きい犬がこの世にいるわけないだろう!」


 フランカは口を出して的確にツッコミをいれますよね……。


「アタシからしたらワンちゃんなの! ほら、お手!」


 シノはルチルに従いお手をする。

 ルチルも変にムキになりますね。


「フランカ、訳アリだから仲良くしてくれ」


「わかったぜ……しょうがない仲良くやろうな。シノ助、お手」


 フランカが言うがシノは無反応だった。

 

「シノちゃん、フランカの言うことなんて聞かなくていいからね!」


「ワン!」


「ルチ助テメェ……」


「まだルチルしか懐いていないからな――お手」


「ワン」


 ん? 俺にはお手をするのか……。


「ダンナは言うこと聞くな……」


「ただの偶然だアイシスもやってみて」


「承知いたしました。では――おかわり」


「ワン」


 アイシスに左手を出しておかわりをする。

 ……見なかったことにしよう。


「しましたね」


「なぜアタイにはしない……」


『まあ、簡単な話フランカは認めてないってことだね。そのうちに懐くから大丈夫だよ!』


「そっ、そうだな……今日は絶不調だぜ……」


 フランカは下を向いて落ち込む。

 やっぱり手ごたえがなかったみたいだな。


「素材もいっぱい手に入ったからいいじゃないか」


「それは嬉しいけどよ……ルチ助にアタイの獲物を取られたから納得がいかない……」


「意味がわからない! アタシの獲物だったから取られたも何も関係ない! もうアタシのコレクションだから渡さない!」


 ルチルは胸を張って言う。

 そういうことですか。

 余程欲しかったみたいですな。


「ルチルに渡ったならしょうがない。代わりにこれで我慢してくれ」


 さっきしまったタイラントアースドラゴンを出すとフランカはテンションが上がる。


「マジかよ!? ダンナいいの狩ったな! 今さっき落ち込んでいたのがバカみたいだな! ありがたく使わせてもらうぜ! 今日は酒が美味しく飲めるぜ~」


 フランカは上機嫌でタイラントアースドラゴンをしまった。

 まあ、使い道がないからフランカに渡そうとは思っていたけど、こんなに喜ぶとは意外でした。


 さて、引き続き魔物の回収をして、リフィリアとソウタたちと合流するか。

次の更新は22日です。

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