240話 スタンピード⑥
レイ視点に戻ります。
駆け抜けると――今度は全長15mくらいのライオン型の黒くて毒々しい棘の尻尾を持った、3頭のマンティコアが道を塞ぐ。
Sランクの魔物が3頭は厄介だな。
「――――ガァァァァ!」
1頭が俺たちに突っ込んで来る――俺たちは後ろに飛び躱すと、もう2頭が俺たちに向かって、尻尾――毒針を突きつける。
俺たちは透かさず剣で弾き返す。
距離を取っても伸びるのか。だが、対処できる範囲だ――。
「アイシス、援護頼むよ」
「かしこまりました。――――アイシクルチェーン」
アイシスは地面から無数の氷の鎖を出してマンティコアたちの胴体に巻く。
そして追加で鋭い氷柱を発動させ、血が出て大暴れする。
「「「――――ギャガァァァ!?」」」
痛みで気を取られて内に尻尾を切る――。
「――――氷刃・一閃!」
尻尾を切り落とした。
毒針がなければただの大型の獣だ――。
「――――風衝!」
剣を振るい風の衝撃波を出して胴体に切り込みを入れる。
「「「ガァァ……」」」
3頭のマンティコアは倒れて仕留めた。
しかし……遠くには無数のマンティコアがいる……。
厄介にもほどがあるな……。
まだ気づいていないからいいが。
再び魔物を切りながら進む――。
「ギャア、ギャア!」
ゴブリンたちが襲ってくる――奥の方に行くと前にいたゴブリンより、洗脳されていなくて自我がある。
もしかしてこいつらは洗脳しなくても指示を聞いてくれる感じか。
洗脳されなくても強さは変わりはない、ゴブリンを切り捨てて進む。
気になった魔物の反応が強くなった。
「キヒヒヒヒヒ……」
見えてきた――魔物に囲まれている全長2mの人型で手が長めのピエロの格好をした不気味な笑みを浮かべる魔物だ。
手に魔力を放ち、指を小刻みに動かしている。
アイツが元凶みたいだな。
半透明で薄っすらとしている。まさか【隠密】のスキルで身を隠しているのか?
『やっぱりエネミーマインドか。自分より魔力が低い魔物を指示したり、抵抗する魔物は洗脳をしたりして自分の身を守って大群を率いるよ。アイツを倒せない限り魔物がドンドン増え続ける。スタンピードの元凶ってとこだね』
増え続けるって……異常だな……。
魔王の魔力が尽きるのも無理もない。
「じゃあ、アイツを倒せば進行が止まるってことか?」
『そうだね。長期戦に持ち込むとまた増えるからね』
ならアイツを倒してスタンピード終わらせる。
「キヒ! キヒヒヒヒィ!」
エネミーマインドは俺たちに気づくと、魔物が前に出てくる。
「キヒヒヒヒィ――――!」
そして尋常ではない速さで逃げていく。
逃げ足だけは早いな。さすがピエロの格好した道化だな。
このまま奥の方に行ったら面倒だが、この魔物の群れをなんとかしないと進めない。
いや、まだ間に合うか。
「アイシス、【混合魔法】使うが魔力は大丈夫か?」
「問題ありません」
最後のほうに余裕があったら使う予定だったが、致し方ない。
俺とアイシスは氷と時の【混合魔法】を使う――。
「「――――アイスエイジ!」」
地面が凍り広がっていき、触れた魔物は全身氷漬けとなって周りは氷床と変わる。
かなり魔力を消費したが、逃げ足が速い奴も……ダメだった……。
エネミーマインドの魔力反応がある。ギリギリ逃げ切ったようだ。
さすがにスタンピードの元凶は簡単には倒してくれないか。
俺はマナポーションを取り出して飲み、アイシスは作り置きしたガトーショコラを食べて時魔法を使う――。
「――ヘイスト!」
身体を加速させて、エネミーマインドを追う――。
「キヒヒヒヒィ!」
エネミーマインドが見えて来たが、再び魔物で塞がれる。
キリがない……。
「ご主人様、私が一掃させますので魔法を放ったらお進みください」
「わかった、頼んだ」
「はい、終わったらお菓子パーティーですよ――――アイスエイジ」
アイシスが魔法を放ち、地面が凍りついていく速さと共に俺は進む――。
周りは氷漬けになるが、魔剣の加護のおかげでなんともない。
このままエネミーマインドに一直線だ。
「キヒィ! キヒィ! ヒヒヒヒ!」
追いついた――俺に気づいていないのか笑いながら走っている。
残念だがここで止めておく――。
「――――クリスタルウォール!」
「キヒィ!?」
エネミーマインドの前を結晶の壁で塞いで足を止めた。
これで前にいる魔物に助けを求めることはできない。
「キヒヒ……」
笑うのをやめて今度は悲しい表情をしてやめてくれと訴えている。
だが、俺にはそんな慈悲などない、道化の時間は終わりだ――。
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