234話 作戦当日
無事に食糧問題も解決して予定通り、街の周りを地魔法で囲み態勢を整えた。
リフィリアは用が終わったミツキさんたちを空間魔法でカルムに送ろうとすると――。
「最後まで付き合いますので私たちは残りますよ!」
まさか残るとは優しいですな。その発言でヤーワレさんたちは拳を握りしめた。
ウィロウさんとグラシアさんがいるから大丈夫か。
ヤーワレさんたちは引き続きミツキさんの手伝いをしていた。
――――◇――◇――◇――――
――作戦当日になった。
長期戦に備えて俺、アイシス、ルチルは1ヶ月分の料理を作り置き、リフィリアはポーション、マナポーションの大量調合して、フランカはソウタ用にオリハルコンを使った両手剣を作り、俺たちはいつでも戦える。
街の外に出て、先に行く俺たちを見送りにみんなが集まる。
「今までとは違う戦いだから気を引き締めろよ! 危なくなったら即撤退だ! 頑張って行って来い!」
ヴェンゲルさんは俺の背中を叩いて喝を入れる。
相変わらず力が強いな……加減してほしい……。
「わ、わかりました……」
「もっと気合い入れろよ! 不安だと思うが、前を向けよな!」
俺は大丈夫だが、その発言は緊張しているソウタに言ってください。
何かとは言わないが本人はいろいろとプレッシャーにやられているので。
「そうだぞレイ、嬢ちゃんたちがいるから大丈夫だが、気を抜くなよ。俺たちも少ししたらお前さんたちの近場で準備しているからよろしくな」
ザインさんたちは準備途中だからまだいけないようだ。
「私も近場で見たかったけど、街の指揮をしないといけないから残念ね……頑張ってね……」
「ワタシもルージュと同じで街の周りを見回りしないといけないから残念だわ~頑張ってね~」
ルージュさんとトリニッチさんはソウタと一緒に行けなくて残念みたいだ。
決まりだからしょうがない。
ルージュさんはソウタに近づいて――。
「アナタ……頑張ってね……」
「うおっ!?」
周りを気にせずに唇に熱いキスをする。
大胆ですな、ソウタは顔を赤くして緊張がほぐれたようだ。
珍しいのは精霊3人は嫉妬もしないで平常でいること、ルージュさんを認めてくれたみたいだ。
「ああ、頑張るよ!」
美人にキスをされるとやる気が起きますよね。
「あら~熱いキスなんてしちゃって! ワタシも燃えるわね~」
「ちょ――――!?」
トリニッチさんはソウタを逃がさないようにガッチリと掴み、唇に熱いキスをする……ルージュさんより長い……。
「ワタシも元気づけしたから大丈夫よ~。あら~逆にやり過ぎたら力が抜けちゃったみたいね~」
ソウタは地面に手と膝をついて落ち込んでいます……。
やる気が下がりましたね……スタンピードに支障をきたさなければいいのだが……。
なぜか精霊たちは顔を赤くして見ている。
ええ……トリニッチさんのほうがウケがいいらしいですな……。
『アハハハハハハ! 美人2人に行く前からご褒美をもらうとかソウタは幸せ者だね~』
エフィナさん……行く前にソウタのやる気をさらに下げてはいけません……。
「どうか気をつけてください……無理をなさらないでください……盟友に女神シャーロの加護がありますように……」
サイガさん率いるハーピー族、ラミア族のみんなは俺たちに向かって祈りを捧げる。
やっぱり、魔大陸はシャーロさんを崇拝していますね。
「ありがとうございます。それでは行きますね」
俺たちはシエルに乗り、みんなに見送られながら土の壁を越えて目的の場所へと向かう――。
――1時間後。
一面見渡しても何もない荒地から緑の平地――目的の場所、魔大陸の前に到着した。
今のところ周りには魔物はいなく反応もない。
偵察者の話では明日くらいにここに進行する予定となっている。
それまでは待機だが、気を抜いてはいけない。
「マスター、スタンピードの様子を見に行くけどいい?」
「いいけど、1人で大丈夫か?」
「すぐ撤退するから問題ないよ」
「わかった。気をつけて」
リフィリアは高く飛んで前に行った。偵察してくれるのは助かる。
「リフィリアだけズルい! アタシも行きたかった!」
ルチルは顔を膨らませて不満のようです。
偵察だけだから面白味もないと思うが。
1番楽しみにしていたフランカは珍しく落ち着いて――震えている。
怯えているわけではないがどうした?
「絶対にアタイが求めている素材……魔石が手に入る……楽しみだ……」
武者震いでした……。
心の中では欲望がいっぱいですな。
リフィリアが戻ってくるまで無限収納からイスを出して座って待つ。
待つのはいいが、ソウタはまだ下を向いて落ち込んでいる。
やっぱりトリニッチさんの熱い口づけは刺激が強すぎたようですね。
「ソウタ、無理とは言わないが、今は忘れろ」
「無理だ……俺は何か一つ……五つ失ったような気がする……」
五つも失ったとはいったいなんだ……それはいいとして重症ですな。
今日、魔物の軍勢が来ていたら危なかった。
「ソータ! 落ち込んでいる暇なんてないわよ! しっかりしなさい!」
「主……しっかり……」
「ソウタ様、スタンピードはまだ着ていないのに落ち込まないでください」
精霊たちはソウタの顔を叩いて慰め? ている。
しょうがない、夕食はソウタの大好きなナポリタンを作るか。
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