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231話 終わったなコイツ……


 ジャックの発言で周りは呆れている。もうわかりきっている話だ。

 協会に反抗しても何も得ならないと。


「では、街の外――北に広がる砂漠でやりましょう。本当に今やるのですか? 少し休憩してからでもいいですよ」


「俺をなんだと思っている!? 戦乙女に「歩く戦慄」と言われているジャック様だぞ!? いつも試験監督している奴に負けるわけがない!」


 歩く戦慄って……自慢できることか!?

 明らかにルージュさんをストーカーしていますよって、皮肉を交えた言い方のような気がする。 


「わかりました。では行きましょうか」


 ガレンさんとジャックは出ていった。

 結果は大体予想ついているが、みんな気になるようでついて行く。

 俺もこの後やることはないから今日で引退するジャックの生き様を観るとする。

 

 ホールに行くと、ジャックの噂で持ちきりだ。面白いと思いついてくる。

 

 ギルドを出て、北門に着くと――辺り一面に広がる砂漠だ。

 砂漠と聞いて暑いイメージだったが、暑くなく、適温で快適だ。

 砂は細かい粒子でサラサラとして、歩いただけで、靴の底まで入り込む。


「初めての人は足に魔力を通してね~。その方が楽わよ~」


 トリニッチさんの言う通り足に魔力を通すと、砂に埋まらないで普通に立っていられる。

 ここの砂は魔力の影響を受けやすいみたいだ。


 しかし、ガレンさんは勝負しづらい場所を選ぶのだ?

 平地の方が楽なのに何か考えがあるのか?

 

 勝負を観るのに集った数は数百人と少々大事になった。 

 大半は絶対に負けると言っているが、ルージュさんの尻を追っている奴らは――。


「ジャック、頑張ってくれ!」

「俺たちの威厳を保ってくれ!」

「お前なら勝てるはずだ!」


 ――と応援をしている。

 ジャックが負けるとコイツらも迷惑防止されると思っているようだ。


「ハハハハハ! お前、バカだろう! 砂漠を選ぶなんて高が知れている! 無駄だ、ここは俺の庭だからお前が考えていることは無意味だ! この勝負、俺の勝ちだな!」


 ジャックは高笑いして剣を抜いた。

 ガレンさんはメガネを上げて、至って普通だ。

 

「言いたいことはそれだけですか? もう勝負は始まってますよ」


「てめぇ、武器を持たずに舐めやがって……大怪我しても知らねえぞ!」


 ジャックはガレンさんの挑発に乗り、頭目掛けて剣を振るが、ガレンさんは手に魔力を通して2本の指で剣を挟み受け止める。

 強いな……ジャックは離なそうとするが微動だにしない。

 

「まさかこんな挑発に乗るなんて予想外です。やはりアナタはSランクに相応しくないですね」


「な、何をやった!? 指だけで受け止めるなんて、き、聞いてないぞ!?」


「今やっていることが事実です。貴方が弱すぎるのです」


「俺をバカにするな!?」


 ジャックは膨大な魔力を剣に通して指から離し、距離を取った。

 また挑発に乗っている……もうガレンさんの思惑通りだな。

 

「いい度胸だ! 俺は本気をだす――最強技でお前は死ぬぞ! 喰らえ――――砂塵流牙刃!」


 ジャックは剣を砂に叩きつけ、広範囲の砂の衝撃波がガレンさんに襲い掛かろうとする。

 動かないまま砂に覆い被さり見えなくなった。


「これでテメエは終わりだ! 俺をバカにしたことを後悔するのだな!」


 ジャックを応援している尻追い組は喜んでいた。


「いいぞジャック、さすがだな!」

「ジャックの最強技はAランクの魔物を一撃で滅するぜ! いくら協会でも一溜まりはないぜ!」

「ハハハ! ジャックの勝ちはもらったな!」


 そう言っているがコイツら気づいていないのか……。

 周りの高ランクの人は鼻で笑いながら気づいている。


「後悔とはなんのことです?」


「い、いつの間に後ろにいるんだ!?」


 ガレンさんは【隠密】を解除してジャックの背後に立つ。

 薄っすらと姿が見えてかなり手加減していたけど、気づかないのか……。

 というか手を抜きすぎでは?


「それで貴方の本気はこれで終わりですか? ここでしか使えない最強技をあっさりと回避される気持ちは?」


 ああ……だから砂漠を選んだのか……ここ限定でしか使えないとか最強技なのか……。

 言って恥ずかしいが。


「ふ、ふざけるな――――!?」


 ジャックは怒りと共に剣を振るう――。

 ガレンさんはまた2本の指で受け流す。

 よくもまあ、指だけで……こんな器用に魔力コントロールできるのはさすが協会の人です。

 

 ジャックも息も荒いしそろそろ潮時か。


「時間を与えましたが、非常に残念です。時間の無駄でしたね」


「な、なんでだよ!? 俺は強い男だ! テメエに負けるはずがない!?」


 もう勝ちは見えているのに弱い程吠えるってこのことですよね。

 ガレンさんは溜息をついて手で剣を掴む。


「はぁ……もういいです……。終わりにしましょうか」


 つかんだ手に膨大な魔力を通して剣を折る。

 その瞬間、ジャックは焦り始めた。


「おおおおお、おい、俺の大事な白金の剣が折れたぞ!? ど、どうしてくれるんだ!? べ、弁償しろ!?」


「貴方はその覚悟で私に勝負に挑んできましたよね? しかもその剣は全然手入れなどしていません。そんな貴方に剣を持つ資格はありません」


「――――がはぁ!?」


 ガレンさんはジャックの腹に蹴りを入れて遠くに吹き飛んでいく。

 全身に魔力を出し、物凄い速さで近づき――。


「――――瞬烈!」


「――――ギャアァァァ!?」


 ジャックの腹に拳を当て、砂をえぐりながら吹き飛んでいった。

 勝負あったな。


「貴方の負けです。約束通りギルドカード廃止と街の追放です。とは言っても聞いていませんね。少し強すぎましたか」

 

 ガレンさんはメガネを外してハンカチを出して砂ぼこりを拭く。

 当然の勝利ですな。

 ただ尻追い組は何も言わず、口を開けたまま呆然としている。

 協会との差を見てしまったか。


「忠告です。もしもルージュさんに変なことをするのであれば、あの方と同じようになりますよ」


 尻追い組はゆっくりと頷いた。

 問題は解決したが、ジャックはこのまま放置でいいのかな?  

次の更新は27日です。

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