228話 親睦会
レストランに行っている途中で、ソウタはルージュさんを抱えてジャック率いる地元の冒険者に逃げている姿が見えた。
色々と面倒になるから見なかったことにしよう……。
リフィリアは溜息しながら戻ってきた。
止められないから諦めたようです。
レストランに着くと、一部席を借りて、豪華な食事が出てきて親睦会が始まった。
周りは食べたり、飲んだりしながらそれぞれ挨拶をする。
俺も食べている途中に筋肉質の角を生えた牛耳の獣人男性と緑色のショートの女性に話しかけられる。
「ウチのギルドマスターから聞いたぜ! まだ若いのに前線に行くとは驚いた! 頑張れよ!」
バシバシと俺の背中を叩かれる。
力が強いな……。
「ウチのギルドマスターって? どこ出身だ?」
「カーインだよ。ほら君が一緒に来た。ミミルカギルドマスター」
ああ、ミミルカさんところの冒険者か。
「なるほど、俺はレイだ。援護の方よろしく頼むよ」
「ああ、任せろ! オレはヒーズだ! よろしくな! 鍛え上げた筋肉で魔物から大陸に入らせないぜ!」
ヒーズは上半身裸になって筋肉を見せつけるかのようにポージングする。
自慢するのはいいが、ここでお披露目は目立つぞ……冒険者以外に人がいる。
「ボクはマーマネルラ、よろしくね若い賢者さん。ヒーズはいつも筋肉を見せたがるから気にしないで」
いつもなのか……自分に自信がありますね。
「そういえば、よくヴェンゲルさんの急な決定を受け入れたな。みんな不満ではないのか?」
「何言ってんだ若いの! 協会の無茶ぶりなんていつものことだ! 逆に後方で助かるけどな!」
「今回ばかりは困ったけど、おかげで命拾いしたよ。まさか少人数で行くとは驚いたけど」
やっぱりみんなスタンピードは嫌なんだな……。
もう他人事のように言っているのは気のせいだろうか……。
「そうか……俺たちが止められなかったらよろしく……」
「ああ、危なかった撤退するのだぞ! 無理は禁物だ!」
「肝に免じるよ」
取りあえずみんな前線は消極的なことはわかった。
これなら俺たちも全力で戦える。
「ところで精霊使いはどこにいるの? 挨拶をしたいけどまだいないみたいだね」
ソウタはジャックたちから逃げているからなんとも言えない……。
というかみんなここで食事しているなんてわからないだろうな。
「今日は無理そうだから、あとで挨拶した方がいいよ」
「わかった。他の賢者にも挨拶するから失礼するね」
2人はフランカの方に向かった。
じゃあ、俺はゆっくり食事を堪能しようと思ったが無理でした。
次々と俺に挨拶をしてくる。
商都で活動している水色の髪をした女性エルフ――エビンさんに王都で活動している黄色い髪型の男性――アーテリーさん、虎型の獣人で白銀長髪女性のロサミネさんだ。
この3人は長期の依頼が多くて、すれ違いで会うことがない人たちだ。
お互いこんな形で挨拶すると思わなかった。
3人とも俺の噂はよく聞いていて良い印象だった。
周りの冒険者は優しい人ばっかりだ。
お互い尊重し合って、嫌味とか言わない。
まあ、嫌な奴は試験とかで落とすに違いはないが。
けど……癖の強い人はいるけど……。
「ヒャッハー! 最高に生かしているぜ! トリニッチのアニキ!」
「失礼しちゃうわね~ワ・タ・シはアネキと呼びなさい~」
「失礼しやした!? トリニッチのアネキ!」
「今夜は飲むわよ~」
ジェリックと大柄でミスリルの鎧を着た青髪ロングの男性――いや、オネエ系のトリニッチさんと肩を組んで酒を飲み交わしている……。
まさかオネエ系がいるとは……ガレンさん曰く、SSランクのデストルツの冒険者でルージュさんの次に強いらしいです……。
見た目で判断してはいけないですね。
まあ、この人のおかげでルージュさんの代わりにレストランを急遽借りられた。
ここの支配人が来てトリニッチさんに頭を下げてるから余程すごい人だと思った。
いやSSランクだからすごいが。
『アハハハ! おもしろいね、気に入ったよ!』
エフィナさんはトリニッチさんを気に入りました……。
変なことを言いそうな気がします……。
「まさかルージュちゃんが精霊使いを気に入っちゃうなんて意外だわ~。確かに横から見ていたけど、かなりのイケメンだったわね~」
ソウタをイケメン発言ですか……。
『なに!? もしかして――』
エフィナさん、食いつきが早いですよ。
まだ決まったわけでは――。
「ムシシシ、なんだいアネキ、まさかソウタの旦那に惚れたのか?」
「ええ、そうよ~。ルージュちゃんも惚れる男だものワタシも惚れるに決まっているじゃない!」
えぇ……ソウタ、オネエ系にも人気です……。
『アハハハハハハ! いいね! この人最高だよ! 早くソウタに告白しないかな!』
大爆笑ですね……。
最近落ち着いたと思ったがどこに行ってもソウタは大変だな。
女難の相があるのかな?
トリニッチさんは含まれないが。
「ヒャヒャヒャ! いいぞアネキ、明日告白しちゃいなよ!」
「まだ早いわよ~。このスタンピードが終わったら考えようか・し・ら」
ジェリックの発言でトリニッチさんは顔を赤くする。
意外に慎重ですな。
その横で聞いたヴェンゲルさんは大爆笑だった。
「ガハハハハハ! ソウタは人気だな! 頑張って愛の告白をしろよ!」
「グランドマスターが応援してくれるなら本気でしちゃうわよ~」
本人はいないけど、ソウタ……頑張れ……。酒を飲んでいるから冗談だと思うけど……。
お開きになり、俺たちは宿に泊まらずに街の隣にある崖の上でフランカの家を出してお泊りする。
トリニッチさんに相談したところここなら許可がなくても大丈夫みたいだ。
案内までしてくれてさすがアニキ――アネゴ肌だ。
「わざわざすいません……」
「気にしないで~。困った時はワタシに頼ってちょうだいね! ではまた明日~精霊使いにもよろしくね~」
そう言って上機嫌で去っていった。
今日は輩3人組といいオネエ系と色々と濃い1日だった。
それにしてもソウタたちはどこに行ったのだ?
一方ソウタは――。
ソウタ「はぁ、はぁ……まだ諦めないのか……」
プロミネンス「待ちなさい!」
ティア「ま、待て……」
ブリーゼ「待ってください!」
ジャックたち「「「待て、精霊使い……」」」
真夜中の街の外を走り回っていた。
ルージュ「アナタ……私の為に嬉しい……」
ソウタ「アイツらに説得してくれないか……」
ルージュ「無理よ……頑張ってね……」
ソウタ「そろそろ限界だが……」
ルージュ「じゃあ、私が元気のおまじない……」
ソウタ「おまじないって……ちょ――」
ルージュはソウタのほっぺにキスをした。
それを見た周りは怒りをました。
ジャック「い、戦乙女のく、唇を奪うなんて、ゆ、許せん!」
プロミネンス「この破廉恥が! ――――フレイムランス!」
ティア「最低……――――アクアランス」
ブリーゼ「魔性の女め……――――ウインドランス!」
ソウタ「や、やめろ――――!?」
余計に刺激して朝まで走り続けていた。
次の更新は21日です。




