227話 妹も魔性です
『いきなり愛の告白をするとは姉妹揃ってやるね~このまま妹も、もらっちゃいなよ~』
エフィナさん、精霊たちを刺激するのではありません……。
俺を方を向いて睨んでいますよ……というか愛の告白ではなく、お誘いです。
ルージュさんの発言でヴェンゲルさんは高笑いする。
「ガハハハハ! まさかルージュもソウタを狙っているのか!」
「運命の人よ……狙っている人がいるのね……」
「そうだぞ。これを見てくれ!」
ヴェンゲルさんはスカーレットさんに預かった手紙をルージュさんに渡すと、内容を確認して溜息をついた。
「スカーレットに先を越されたわね……どうしましょう……」
やっぱりスカーレットさんはソウタのことを書いたみたいだ。
精霊たちはルージュさんが困惑している姿を見て満面の笑みです。
諦めると思っていますね。
「決めた……スタンピードが終わったら私は長く休む……スカーレットより魅力があると認めさせるわ……」
そう言ってソウタの腕をつかむ。
火がつきましたね。スカーレットさんと同じ性格だな。
ソウタは何も言わずににやけているのですが。
「何やっているのよ!? この破廉恥ギルドマスターは!? ソータから離れなさい!」
「あ、主が……欲情する……」
「なんで姉妹揃ってソウタ様を誘惑するとは最悪です!? 離れなさい!」
精霊たちはルージュさんを離そうと引っ張るが無理なようだ。
「おチビちゃん……私……疲れているの……お兄さんに癒されたいわ……」
うん、スカーレットさんと同じで魔性ですね。
「そうか、そうか。疲れているなら休んでいろよ! 下の奴らは俺が説得するからソウタと一緒に休んでくれ!」
「ありがとうね。グランドマスター……」
「「「よくない!」」」
「精霊よ、ルージュは本当に癒しがないと身体を壊したりするから大目に見てくれ! 今とは言わないがスタンピードが終わる前には仲良くしろよ!」
「「「ならない!」」」
精霊たちには無理な話だな。
絶対に仲良くはしないと思う。
「心配だから私も残るね」
イチャついている2人とリフィリアたちと分かれて1階に向かう。
「来て早々に精霊使いと仲良くなって呆れるわね」
リリノアさんは人のこと言えるのですか……そう言いながらザインさんの腕にくつかってイチャついているのに……。
1階に降りるとヴェンゲルさんは大声で――。
「スタンピードで集まっている奴らはこっちに来い! 話がある!」
そう言うと数十人集まってくる。
「集まって悪いが、国王陛下と協会、各ギルドマスターで会議し、決まったことがある。前線で戦うのは今俺と一緒にいる賢者の身内と3体の精霊を率いる精霊使いだ! そしてお前たちは後方で援護をお願いをする! 不満がある奴がいると思うが、大陸を守るための作戦でもある。わかってくれ!」
周りはざわつき始める。
まあ、少人数で前線なんて無謀だと思うよな。
その中にいるセーレさんはすごい驚いていますが。
「俺たち前線に行かなくていいのか運がいいな」
「まさかグランドマスターが強い助っ人を送り込むなんて、助かるな」
「会議で決まったならしょうがないな。俺たちは後方で頑張るか」
意外にみんな不満もなく肯定的だ。
いくらSランク冒険者でも数万の魔物に前線に行くのは抵抗があるよな。
「なんだ、みんな消極的だな。オイラなら喜んで前線で戦うけどな。ハハハ!」
「お前だけだぞ……」
オルリールさんの言うとおりヴィクトリアさんだけですよ……。
戦闘狂は数万の魔物でも関係ないようです。
「明日はお前たちと会議で詳しく話すからよろしくな」
みんな頷いているところ、首を傾げている一名いる。
「あの……」
恐る恐る手を上げてきたのは白金の鎧を装備した銀髪の男性だ。
「どうした? 文句があるか? というか誰だ?」
「グランドマスター、この方はデストルツで活躍しているSランクのジャックさんですよ」
ガレンさんは小声で言う。
あの様子だと文句ではなく質問な気が。
「文句はありませんが……今さっき俺たちの戦乙女――ギルドマスターに会って相談しましたよね?」
「ああ、そうだが。許可はしているぞ」
「それはわかりましたが、何故一緒にいないのですか? 疲れているのはわかりますが、大事な話に来ないのは少々……」
疑問に思っていますね。
ソウタとイチャついているとは言えない――。
「ルージュなら精霊使いと一緒に休んでいるぞ」
「「「なんだって!?」」」
軽いな!?
ヴェンゲルさんの発言で地元らしき冒険者――男たちが大声で驚きホール全体に響く。
言っていいのかよ……。
「な、なんで……せ、精霊使いと一緒に!?」
「惚れたに決まっているだろう」
「「「なんだって!?」」」
男たちは再び驚く。
というかみんなルージュさん狙っているのか……。
こちらもスカーレットさんと一緒で高嶺の花だぞ。
「い、戦乙女がほ、惚れたなんて、う、噓だ!? グランドマスター、噓だと言ってください!?」
「俺が噓を言ってどうする。後で本人に確認してみろ」
「みんな、戦乙女を守るのだ!」
「「「おう!」」」
「おい、待てよ!? あとでだと言ったろ!」
ヴェンゲルさんの言葉を無視してジャック――男たちは慌てて階段を上って行く。
その姿を見た集った冒険者は呆れていた……。
「まさかアイツらはギルドマスターの尻を追って冒険者になったのか……」
「その元気、スタンピードに使ってほしいよな」
「バカみたい……」
ここに来てもソウタは大変だな……前線前には蹴りをつけてほしいが。
「全く……聞かない奴だな……さて、俺たちも来たことだ。今日は飲むぞ! 俺の奢りだ!」
「「「よっしゃー!」」」
まさかのヴェンゲルさんの奢りですか。
さすがグランドマスター、太っ腹ですね。
「グランドマスター……奢りではなくて協会の経費ですよ……間違えないでください……」
ガレンさんは溜息をしながら言う。
結局協会の経費ですよね……。
――夕方頃。
デストルツで一番高いレストランに集ったSランク以上の冒険者と一緒に行く。
一方ソウタは――。
プロミネンス「いい加減離れなさい!」
ティア「主が……危ない……」
ブリーゼ「ソウタ様も何か言ってください!」
ソウタ「そろそろ離れてくれないか……」
ルージュ「離さないわ……」
ルージュはソウタに抱きついたままで離れる気もなかった。
リフィリア「魔女さんの妹さん……精霊たちを困らせないで……」
リフィリアはルージュに説得しても聞く耳持たない。
ジャックたち「「「戦乙女、今助けに来ました!?」」」
ジャック率いるデストルツの冒険者は思いっきりドアを開けてルージュがソウタに抱きついているところを見ると、真っ青で口空けて絶望した顔になった。
ルージュ「あら……あなたたち……お取込み中よ……」
ジャック「いいいいいい戦乙女!? な、何故そ、その男と!?」
ルージュ「運命の人よ……邪魔しないで……」
ジャックたち「「「がはぁ!?」」」
ルージュの言葉でジャックたちはショックを受けて倒れこむ。
ルージュ「わかったなら戻ってちょうだい……」
ジャック「な、何かの勘違いだ……俺は認めない……」
ジャックたちは立ち上がり、部屋から出ないで、魔力を出しながら圧を出していく。
武器を抜きソウタに向ける。
ジャック「精霊使い……覚悟しろ……」
ソウタ「ちょっと待て!? 逆恨みは良くないぞ!?」
ジャックはルージュに当たらいようにソウタ切り込もうとする。
ルージュ「アナタ……私も当たりそうだから一緒に逃げましょう……」
ソウタ「この状況なのに離れてくれないか!? ルージュも危ないぞ!? しょうがない――」
ルージュ「あら、大体ね……」
ソウタはルージュをお姫様抱っこして窓を開けて飛び降りた――。
ジャック「ま、待て!? 精霊使い! お前たち追うぞ!」
冒険者たち「「「おう!」」」
ジャックたちも飛び降り、ソウタを追う。
プロミネンス「待ちなさい!」
ティア「ま、待って……」
ブリーゼ「逃がしません!」
精霊たちも追う――リフィリアは1人になってただ呆然とする。
リフィリア「なんだったの今の……」
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