226話 魔王の側近
周りはヴェンゲルさんを見ると驚いていた。
グランドマスターが来ると無理もないか。
先に来ていたセーレさんは俺たちに気づいて手を振っている。
中は王都のギルト並みに広い、中心にある受付に向かい――。
「ルージュはいるか? 話がある」
「は、はい!? ご案内します!」
「俺たちは待機したほうががいいですか?」
「いや、お前たちも行かないと話が進まないぞ」
関係あるとそうなりますよね……。
輩3人組は今回の件と関係ないから待機だ。
さすがにシエルも待機させたほうがいいから3人に面倒をお願いする。
離れると、周りはシエルに興味があるのか集まってきた。
セーレさんもシエルに駆け寄り、周りにシエルことを説明をする。
助かります。
セーレさんもいれば何も問題はないだろう。
ギルド職員の男性についていき、5階まで上り、大きなドアまで案内される。
ドアを開けると――スカーレットさんに似たナイスバディなショートカットのコートを着た女性と紫色の長髪で耳が尖った大鎌を背負った正装した男性だ。
女性はルージュさんとわかった、男性は他と違う魔力を持っているな。
『あの男の人は竜人族だね~』
魔大陸で最強種族の竜人族か。
そう考えると加勢に来たのかな?
一瞬だが、ルージュさんはソウタをチラ見したような気がする。
「魔性の女と同じ匂いがするわね……」
「絶対に主は渡さない……」
「回避させてみせます……」
精霊たちは魔力を出しながら警戒をする。
いや、双子の妹と言えど、大丈夫だと思うが……露出的にスカーレットさんのほうが多いが、ルージュさんは胸を隠して控えめだ。
似ているからって、警戒しなくてもいいのだが……。
「ルージュ、連絡したとおりに早く来たぞ」
「本当に来るとはね……ごめんなさいグランドマスター、会議に参加できなくて……」
「気にするな、指示で忙しいのはしょうがない。しっかり休んでいるか?」
「しっかりとは言わないけど、多少はね……」
性格はスカーレットさんと同じだな。
さすが双子といったところか。
「そうだな、ところで隣の竜人族は?」
竜人族は俺たちに頭を下げて挨拶をする。
「私は魔王様の秘書兼、側近のサイガ・エクステーラと申します。以後お見知りおきを」
魔王の側近か。じゃあ、この人が情報提供しているのか。
「そうか、魔王は大丈夫か?」
「はい、無理をしましたが、城でぐっすりと眠っています。ご心配ありがとうございます。我々でもスタンピードを止められなくて本当に申し訳ございません……まさか盟友のプレシアス大陸に魔物が移動しているなんて予想外です……」
「謝罪はよせ、ここからは俺たちの問題だ。大変だったろう、ゆっくり休めよ」
「そうはいきません! 私は責任として――」
「この様子だと誰も言ってないな。ルージュ、会議で決まったことはまだ話してないのか?」
「はい、賢者御一行と精霊使いをこの目で確かめてから言おうと思いました……」
「どういうことですか?」
「しょうがない、俺が話す――」
ヴェンゲルさんは魔王の側近に今回の会議で決まったことを話すと呆然としていた。
「き、危険です!? 国王陛下が許可しても少人数での戦いは無謀です!? いくつ命があっても足りないです!? お考えください!」
慌てて言うが、無理もない。
魔王が倒れるほどのスタンピードをこの目で確かめているから止めに入るよな。
「やっぱり信用はできないか。お前さんたち、側近に魔力見せろ」
強さを見せつけろってことですか。
俺たちは【魔力制御】を解除して、膨大な魔力を側近の方にお見せすると汗を垂らしながら、身体を震えさせる。
「この魔力は…………魔王様10人以上はある!?」
魔王10人って、どんなたとえだ……まあ、それほど俺たちの魔力があるってことだな。
側近の方は俺をよく見ている。
「き、君は……魔王様と同じ――それ以上の魔力を持っている!?」
えぇ……魔王の魔力越しちゃったの……もう少し加減して見せればよかった。
「納得したか?」
「もちろんです!? どうか盟友の方々……魔王様が止められなかったスタンピードを終わらせてください!」
今度は膝をついて涙ながら訴えてきました……。
スタンピードでかなり苦労されたから泣く気持ちはわかる。
全部止められるわけではないが、できるだけのことをしよう。
「さて、側近の許可をもらったことだし、後は下にいる奴を説得だな。ルージュ、それでいいよな?」
「はい、問題はありません。ただ……その前に……」
「どうした?」
ルージュさんはスカーレットさんと同じように妖艶な笑みでソウタに近づく。
「良い魔力ね。アナタ……スタンピードが終わったら一緒に食事をしましょう……2人きりで……」
…………まさかの妹もソウタを気になったのか……あっ、精霊たちは圧を出しています……。




