225話 丁寧です
ヤーワレさんと同じ強面3人組をシエルに乗せると大はしゃぎだった。
「スゲー! 俺は今ワイバーンになっている気分だぜ!」
「イヤッホー! 気持ちがいいぜ!」
「最高! 最高! 最高すぎるぜ!」
童心に帰ったかのようにずっと興奮しています。
確かにワイバーンに乗る機会は滅多にないが。
「すまない、アイツらは悪気がないから大目に見てくれ」
ヤーワレさんは申し訳なさそうに言う。
何も悪いことをしているわけではないからいいけど。
そろそろ昼食の時間だ。
街道のから外れて昼食の準備をする。
「レイの旦那! 乗せたお礼に俺たちが食事の準備をしやす!」
ん? 今ジェリックが食事の準備って言ったか?
まさか料理できるのか……。
「レイ君、アイツらは【料理】スキルを持っているから大丈夫だ。アイツらは借りを返さないと気が済まない性格だから任せてくれないか?」
見た目と裏腹に料理スキル持っているのですね……。
「わかりました。じゃあ、美味しいのを頼むよ。食材は好きなのを使ってくれ」
俺は無限収納から食材、調味料、香辛料を出した。
「アイテムボックスとかさすがだぜ! 見たこともない物ばっかりで何を使うか迷うな!」
「俺たちが普段使っているからな。説明するよ」
「助かるぜ! 味見はしてもいいよな?」
「構わないよ」
俺は気になった食材を説明をして3人は躊躇わず味見をしていく。
意外にしっかり説明を聞いているな。
「全部上質で驚いた! よし、決めたぜ! 期待して待ってくだせい!」
「ヒャヒャヒャ! ウマい料理を作るぜ!」
「最高に仕上げて見せるぜ!?」
3人が調理にかかるのだが……繊細だな!?
見た目は豪快に作るイメージと思ったら、野菜は丁寧に皮を剥いて優しく切り、調味料と香辛料は味を確かめながら慎重に入れて、切った肉と一緒に優しく揉みこむ。
なんだこのギャップは……。
【料理】があったとしてもここまで繊細作らないぞ……。
「お前たち、天使たちのために作ると思ってやるのだぞ! 気は抜くなよ!」
「「「へい、アニキ!」」」
天使のためにって……日頃子どもに料理を振る舞っているのか……。
『アハハハ! あの3人から母性が出ているからおもしろい!』
母性なのか!? 全身に質の良い魔力は出てるが……。
「すごい丁寧ですね……」
「アイツらは時間があるときに孤児院の天使たちとよく遊びに行って、料理も作るからな」
なるほど、この3人もヤーワレさんと同じで優しく人だな。
外見は強面だけど。
「「「できたぜ!」」」
3人が作ったのは――トマトと鶏肉と米を入れたリゾット風、香辛料と味噌を合わせた猪肉ソテー、アボカドのサラダに醤油、ツリーシロップ、酢を合わせたドレッシングだ。
初めて使うにしては完璧な仕上りだ……。
食べてみると――全部味つけのバランスがよく、美味しいです。
これほどのとは……。
みなさんも好評です。
「おいしい! おかわり!」
「天使に喜んでもらった……」
「作ったかいがある……」
「最高に嬉しいぜ……」
3人はルチルが美味しく食べているところを見て涙を流していた……。
うん、ロリコン要素もあると確定しました。
「ところで旦那はこの珍しい食材はどこに手に入れたのですけ? もしよければ買いたいですぜ」
やっぱり料理をしていると欲しくなるか。
教えていいがミツキさんのことは隠した――。
「これは小人の村で採れたものだよ!」
ちょっとルチルさん……小人と言っては……遅かった……。
ヤ―ワレさんと3人は衝撃を受けたかのように口を開けて驚いる。
「なんと、天使がいる村だと!? 是非とも行きたい……」
4人つぶらな瞳で俺を見る……俺が決められるわけではないけどな。
「小人の友人に許可をもらわないとわかりません……」
「是非お願いするよ! その友人の天使に村に行ったらなんでもすると言ってくれ!」
なんでもとはいったい……。
まあ、優しい人だから行っても問題はなさそうとは思うけど。
しっかりミツキさんに説明をするか。
「わかりました。食材の方は大丈夫だと思いますので伝えますね」
「よっしゃー! お前たち、スタンピードが終わったら天使たちを喜ばす準備をしとけよ!」
「「「へい、アニキ!」」」
いや、まだ決まっていないが……気が早い……。
「ルチルちゃんと同じ子がいっぱいいるなら私も行こうかな~」
ミミルカさんも行きたいのか。
というかギルドマスターは長期の休みはもらえるのか?
まあ、スタンピード次第だとは思うが。
昼食を食べ終えて、シエルに乗り、進む――。
――1時間が経過した。
「見えてきたぞ。あそこがデストルツだ」
ヴェンゲルさんが指を差すと、丘に建てられて段差があるが緑豊かの街だ。
さすがにそのまま中に入れないから近場で降りて街に向かう。
門前では兵士がヴェンゲルさんを見ると慌てて、敬礼してギルドカードを見せないまま中に入る。
さすがグランドマスター、顔パスですね。
魔大陸と近いのか、鳥の羽が生えて下半身が鳥足の姿――ハーピー族、下半身が蛇の姿をしているラミア族を見かける。
「ここに魔大陸の人がいるとは珍しいな」
「ソウタはデストルツは初めてか?」
「ああ、そうだよ」
「じゃあ、どうやってこの大陸に?」
「船に乗ってきた。ここからだと南の方角にある街――キーセント経由の船で来た」
意外に優雅に旅をしてますな。
俺も船でゆっくり旅をするのもアリだな。
国境の近くの方に移動し、ヴェンゲルさんは足を止めた。
「着いたぞ。ここがデストルツのギルドだ」
王都のギルドと負けないくらいの建物――冒険者ギルドだ。
ドアを開けると――数十人くらい質の良い武具を装備して待っていた。
魔力も多い、もしかしてSランク以上の人たちかな?
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