224話 参加の冒険者
――2時間が経過した。
今のところ順調に進んでいるが、まだ半分以上距離がある。
今日はできるだけ進んで野宿確定だ。
ヴェンゲルさんはもうすぐで「帰らずの沼」と言う沼地が先にあるらしく、沼地を越えた後に安全な場所があるからそこで野宿する予定となった。
帰らずの沼って……底なし沼があるのか……。
「見えたぞ、帰らずの沼だ」
森から沼へと地形が変わった瞬間に周りは少し霧がかかっていて見えづらくなった。
下は……見るからに黒紫と毒々しい色をした液体がボコボコと大きな気泡を出している……。
絶対普通に歩くことは無理だろう……。
帰らずの沼の意味もわかる。
「ブルーワイバーンがいれば怖いものなしだな!」
「この大陸に危険な場所があるのですね……」
「ああ、毒を持った異常種がここに住み着いて地形が変った。本当に迷惑な奴らだ……」
それで毒沼になったわけか。
よく見ると毒を持っていますよっていう色のついた大型のカエル、ヘビ、ワニがいますね……。
「ここは通れるのですか……」
「無理だな。解毒の薬や魔法の状態回復があっても天に召されるぞ。奥の方に進みたければ山を登って遠回りなる」
ですよね……。
シエルがいなければ遠回りになっていたか。
シエルさまさまです。
30分経過して、問題なく帰らずの沼から辺り一面の草原に出た。
結構広かったな……今後、拡大をしなければいいのだが……。
「草原に出たな、弱い魔物しかいないからここで野宿するぞ」
ヴェンゲルさんの指示で地上に降りると、周りはホーンラビットしかいなかった。
これならフランカの家を出しても大丈夫だな。
まだ進めるが、その先は強い魔物が多いから早めの野宿だ。
フランカは自分の家を出すと、初めて見る人は驚いて大喜びだった。
テント要らずだから助かりますよね。
念のため、ガレンさんとホルダーさんは周りを散策に行って、他は家に入る。
大人数で家に泊まるのは初めてだが、みんな寝られるスペースは確保しているから問題はない。
みんなリビングでくつろいでいるところ、俺、アイシス、リフィリア、ルチルで夕食の支度をする。
ルチルは昼に獲った魚を自分で調理したいと言ったからお任せする。
俺たちはみんなが好きそうなものを大量に作るか――。
できたのはカレー、から揚げ、ハンバーグ、ピザを作った。
時間があったからつい、色々と作ってしまったが、まだルチルの分がある――。
「できた!」
ルチルが作ったのは塩焼き、天ぷら、ムニエルだ。
まさか3品作るとか予想外でした……。
ガレンさんとホルダーさんは見回りから戻ってきて、食事をする。
昼食と同じように大好評だ。
ただ1人は……。
「天使が作った料理……最高だ……」
ヤーワレさんは泣きながら食べていた。
そんなに嬉しいのか……。
「フランカ、勝負しようぜ!」
「おう、酔ったら負けだぜ!」
フランカとマリアーテさんの酒飲みが始まった。
お互い酒を一気に飲んで2杯目に突入する。
もう勝負は目に見えています……。
――5杯目。
「へへへ……アタイはまだいけるぜ~」
「ほれも~ようふだ~」
お互いに酔っています……。
まさかのマリアーテさんもあまり飲めないのか……。
互いに潰れてこの勝負は引き分けとなった。
またやりそうだから次から2人には控えるように言うか……。
今日は問題なく終わった。
少々癖の強いメンバーだが、いざこざなくデストルツに着きそうだ。
――――◇―◇―◇――――
――翌日。
いつも通りエフィナに起こされてリビングに向かうとみんな朝食を食べていた。
みんな布団でぐっすり眠れて気分はいいみたいだ。
朝食を食べ終えて、準備をしてシエルに乗り進む――。
何もなけらば今日の夕方前には着く予定だ。
――3時間後。
街道が見えてきた。
道なりに沿って行けばデストルツに着くみたいだ。
このまま何もないで着くと思ったが……ダメでした。
下にはヤーワレさんと同じベストを着た3人が10体のオーガと闘っている。
もしかして――。
「俺の子分らじゃないか、予定通りに進んでいるな」
ですよね……。
子分って、じゃあ、俺たちと一緒の冒険者か。
同じ方角だとスタンピード防衛参加でSランク以上の人かな?
「加勢した方がいいですか?」
「大丈夫だ。アイツらなら平気さ。だが、ちょうどいい今回の件を話したい。すまないが降りてくれないか?」
「わかりました」
シエルに指示降りると、高笑いしながら楽しそうに戦っています……。
「ヒャッハー! この程度かオーガさんよ? もっと楽しませてくれ!」
「フヒヒヒヒ! もっと血を見せてくれ!」
「愉快! 愉快! 実に愉快だぜ!」
オーガをムチ、メリケンサック、棍棒で一網打尽としている。
強いのは確かだが、本当にSランク以上の冒険者なのか……。
「輩だな……」
ソウタは3人の姿に呆然と見る。
俺もツッコミたいことは山ほどある……。
「確かに輩のように見えますが、あの方たちはSランク冒険者です。私が試験監督していましたので保証しますよ」
まさかのガレンさんが試験監督していたのか……セーレさんといい、いろいろとしていますね……。
「お前たち、ちゃんとやっているか?」
「「「アニキ!?」」」
ヤーワレさんはオーガを倒した3人に声をかけて驚いた。
「アニキ……そのワイバーンは噂で聞く……」
「ああ、ブルーワイバーンだ。俺も乗せてもらいデストルツに向かっている途中だ」
「スゲー! カッコイイぜ! 乗せてもらえるなんて羨ましいぜ!」
「いいなぁ~、アニキだけズルいぜ!」
「羨ましくて、俺も乗りたいぜ!」
3人は目を輝かせながらシエルを見る。
だけど、ルチルを見ると――。
「「「天使……」」」
この3人も子ども好き――いや、ロリコンなのか……。
「それでお前たちがちょうどいたから話がある――」
ヤーワレさんは会議で決まったことを話すと――。
「えっ!? じゃあ、俺たち行かなくていいのですか!?」
「噓だろう……せっかくここまで来たのに……」
「会議で決まったのはしょうがないですが、楽しい魔物狩りが……」
3人は膝をついて落ち込んでいます……。
輩と言えど、喜んで参加する人だ。なんか申し訳ないな……。
「バカヤロー! 何落ち込んでいる!? お前たちにはまだ役目があるだろう! デストルツにいる子ども――天使たちを守る役目がある! 忘れてはいないだろうな? 指一本触れさせないようにするのだ!」
「「「へい、アニキ!」」」
ヤーワレさんは激励? をして3人は立ち上がり表情が明るくなった。
この人たちは子ども=天使みたいですね……。
いや、ルチルも含まれているから小さい=天使か。
ヤーワレさんと同じで悪い人ではなさそうだな。
「よければシエルに乗るか?」
「いいのか!? 気が利くぜ! ブルーワイバーンの旦那!」
「やったぜ! ありがとうごぜいやす!」
「感謝! 感謝! 本当に感謝しやす!」
3人は子どものように大はしゃぎして、嬉しいのか俺と握手をする。
「お前たち、嬉しいのはいいが、自己紹介をしろよ」
「忘れてやした。俺はジェリックだ! よろしくおねげえしやす!」
「俺はビゲッツだ! よろしくおねげえしやす!」
「俺はボートヒデだ! よろしくおねげえしやす!」
ムチを持っているモヒカンなのがジェリック、メリケンを持っているドレッドヘヤのビゲッツ、棍棒を持っているアフロのボートヒデが加わり、デストルツを目指す。
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