223話 健全とは……
――3時間後。
そろそろ昼食の時間だから、シエルの休憩も兼ねていこう。
魔物がいない場所を探すとヴェンゲルさんは川沿いの方が安全と教えてくれて、シエルに指示をして降りる。
周りは魔物の反応は全くなかった。
ヴェンゲルさん曰く、周りに魔除け草が生えているから安全みたいだ。
ここはよく休憩する場所となっているらしい。
ただ例外として――。
「――――クエェェェェ!」
ロックバード――空の魔物は無理だ。
まあ、俺たちに気づいても近くには来られない。
岩を落とされるのは少々厄介だが。
「ちょうどいい飯が来たな! レイ、槍を創ってくれ」
俺は【武器創造】で白金の槍を創り、ヴェンゲルさんに渡し、その槍を軽々と投げた――。
「――――ブエェ!?」
首元を貫通してロックバードは地上に倒れる。
槍投げですか……大した魔物ではないから動くのが面倒だったか。
さすがグランドマスター、朝飯――いや、昼飯前ですな。
「絶好調だな! 嬢ちゃん、コイツで料理を作ってくれないか?」
「かしこまりました」
「では私が解体しましょう」
ガレンさんがアイテムボックスから解体用の短剣を出して手際よく解体をする。
フランカ並みの早さだな……。
解体が終わり、俺も調理の手伝いをしようかと思ったが、アイシスとリフィリアが準備してくれるからと俺はゆっくり休んでいいことです。
「ご飯前に釣りでもする!」
ルチルは無限収納から金の釣り竿を出した。
「フランカが作ったのか?」
「アタシが作った!」
「アタイの工房を勝手に使っていたのはわかっていたが、まさか釣り竿を作っていたとはな」
見るからに高品質な仕上りだからフランカが作ったと思った。
本人は【大器用】を持っているから簡単に作れたのかもしれない。
「ルチルちゃん、私も見てもいい?」
「いいよ!」
ミミルカさんとルチルは手を繋いで魚がいる場所を探しに行った。
一緒にいて仲良くなりましたね。
それはいいのだが……後からヤーワレさんがついて行っている。
心配だから俺もついて行くか……。
2人は足をとめて川の流れが緩やかな場所に釣り糸を投げた。
ヤーワレさんは岩陰に隠れて……しかも【隠密】スキルも使って半透明になりながら、にやにやとルチルを見ている……。
完全にヤバい人だ……。
「バレバレですよ……」
「き、君か!? 脅かさないでくれよ……」
ヤーワレさんは俺に気づかなかったのか驚いて【隠密】を解除した。
普通なら気づくはずだが、それほど、ルチルに夢中だったのか……。
「隠れずに一緒に参加すればいいじゃないですか……」
「あの子――天使と一緒にいるのは……まだ早い……これでも俺は紳士でな」
俺に笑顔で返してきて歯が光っているように見えた……。
明らかに紳士ではなく変態だろう!?
ルチルが危なくなってきた……。
「あの……手は出さないでくださいね……」
「もちろんそのような、下劣なことはしないぞ!? 俺は子どもを見るだけでも幸せなんだ……」
そこは誰かさんと違ってしっかりしていますな。
『ちぇ、期待していたのに残念だ……』
エフィナの発言は置いといて、しっかり言わないと。
「ルチルは小人ですよ……成人もしています……」
「成人していようが俺にとって天使だ……問題ない……」
うん、ダメだ……重症です……。
小さければなんでもいいみたいだ……。
多分だが小人の村に行ったら爆発するな。
「全部聞こえてるよ! ヤーワレ、隠れてないで一緒に見たいなら言ってよ!」
ミミルカさんは地面を軽々と蹴って、飛んでこっちにきた。
ウサギ型の獣人は遠くでも普通に聞こえますよね。
「し、しかし……まだ……」
「ほら、いいから!」
ミミルカさんはヤーワレさんを強引に押してルチルの方に近くに行く。
「ごめんね、レイ君。ヤーワレいろいろと勘違いしているけど、子供が大好きなだけだから変態扱いしないでね!」
「変態とは失礼な、健全なる紳士だ! ミミルカは俺をそう思っていたのか!?」
傍からみたら変態ですけど……健全なる紳士とはいったい……。
「どう見たって変態じゃん! けど、ズイール出身のアナタだけど見直しているよ。アスタリカの孤児院では多額の寄付をしているし、尊敬しているよ」
「やめてくれ! 俺はズイールの子どもたちを保護していて、当たり前のことをしてるだけだ! あの大陸の貧富の差が激しいから本当に許せない……」
まさかのズイール出身なのか。
訳アリでこの大陸に来て、ギルドマスターになったみたいだな。
ズイールは貧富の差が激しいのか……じゃあ、身寄りのない子を保護して孤児院に入れているのか。
強面だが優しい人ですな。
ロリコンと勘違いしてすいませんでした。
「ご主人も見るの?」
ルチルが心配でついてきたが、見るか。
俺とヤーワレさんも近くで釣りを見ることにした。
まあ、ヤーワレさんはルチルだけを見ているが……。
その後、ルチルは茶色の魚を次々と釣っていく。
「わ~い、いっぱい釣れた!」
「ブロンズフィッシュがいっぱい獲れて良かったね!」
「うん! 今日の夕食にする!」
ルチルの笑顔を見たヤーワレさんはデレデレです……。
「天使……最高だ……」
本当に子ども好きだけなのか……ロリコンも混ざっている気がするが……。
悪い人ではないからいいけど。
リフィリアが呼んでいる、食事の準備ができたみたいだ。
俺たちは元に戻ると、テーブルにはサンドイッチとロックバードのから揚げが用意されていた。
みんな集まっていたのかと思ったが、1人いなかった――遠くの方に大きな岩の上に座って瞑想? のようなことをしているホルダーさんだ。
「またやっているのか。ホルダーは「魔力共鳴」をしているから先に食べようぜ」
マリアーテさんは呆れて言う。
魔力共鳴?
「魔力共鳴ってなんですか?」
「知らなくて当然だ。アイツが考えたことでな。何も考えずに自分の魔力と向き合うとか言っていたな。アイツは毎日やっていると魔力が少しだが多くなるとか言っているが、本当だかわかんね」
瞑想ですね……確かに集中して毎日やれば魔力量が増える気もなくはないか……。
結局10分経っても来ないからホルダーさん抜きで食事をした。
初めてから揚げを口にする人は美味しさのか口に運ぶペースが早い。
特にマリアーテは気に入ったようだ。
「ウマいぜ! 酒と一緒に食べたいぜ!」
「おっ、わかっているじゃないか。今夜は一緒に飲もうぜ!」
「いいね~! じゃあ、同族同士どれくらい飲めるか勝負しようぜ!」
「望むところだ!」
フランカさん、すぐに酔うので勝負はやめてください。ガッカリさせますよ……。
食べ終わる頃にはホルダーさんが戻ってきた。
「すいません、つい時間を忘れてしましました。急いで食べますね」
と言いながらゆっくりと食べています。
マイペースですな、急いで行くわけではないから大丈夫か。
食事が終わり、後片づけをして、シエルに乗ってデストルツを目指す――。
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