221話 早とちり女神
「俺たちって……人数はどのくらいですか?」
「協会は俺含む5人とギルドマスターはすぐ行きたい奴が5人で会わせて10人だ。明日の昼前に予定しているからよろしくな」
もう少し多いと思ったが、問題はないか。
「わかりました。シエル、明日頼んだ」
『承知したのじゃ!』
急だが、早く行って現地の様子を見て、状況を把握しないといけないしな。
俺は準備すると言って、抜け出し、庭に設置してあるフランカの家へに向かう。
特に準備することなんて何もないが、確認したいことがある。
家の中に入り、フランカの工房でティーナさんの像を出す。
お菓子は……持っていったほうがいいか。
念話でアイシスを呼ぶと――ルチルもついてきた。
やっぱり双子の天使に会いたいみたいだ。
いつもどおり祈りを捧げて――視界が変わり、花の庭園に着いた。
さっそくルチルは双子の天使を探して奥の方に向かった。
さて、ティーナさんを会いに……走りながら笑顔で向かって来るのですが……。
「レイ! 今日はシャーロがいないから思う存分甘えるわよ!」
勢いよく抱きついてこようとするから避けて、思いっきり地面に倒れる。
『アハハハ! 痛そう!』
「ちょっとエフィナ、笑うところじゃないわよ!? レイ、女神である私を避けるなんていい度胸ね!」
「抱きつく前に聞きたいことがあります。なぜ聖女にお告げを言ったのですか? お告げを言わなくてもスタンピードの攻略に行きましたよ?」
さすがの俺もティーナさんの身勝手な行動でご立腹だ。
ティーナさんは俺が怒っているのがわかると、身体を縮めていじける。
「だ、だって……魔王が魔力が尽きるほどのスタンピードだし……ほら、レイたちならあっさり解決してくれると思ってつい言っちゃった!」
そう言いながら、てへぺろする……。
理由になっていない。
おかげさまでいろいろと大事に巻き込まれた――。
「ティーナさん……」
「な、なによ……」
「今回はお菓子抜きにします。反省してください」
お菓子抜きと言った瞬間に、涙目になりながら足にしがみつく。
「そ、それだけはやめて!? 楽しみにしていたのだから、やめて!?」
っと言われても、今回だけ我慢すればいいのに。
ここで甘えさせるとまたロクなことしか起きな――。
「レイ君、今回は大目に見てほしい。ティーナはシャーロと魔王のためにお告げを言ったのだよ。許してほしい」
ソシアさんは呆れながら来る。
ティーナさん、つぶらな瞳で見ないでください……しょうがない、ソシアさんに免じて許すか。
「わかりました。今回は許します。次からは勝手なことをしないでくださいね」
「ありがとう、レイ!? もう離さない!」
すぐ立ち上がって抱き着いてきた……全く……しょうがない女神様だな……。
「だが、私とシャーロに相談しないで言ったからお菓子は少なめだ」
「そ、そんな……」
再び地面について、泣き崩れる……そんなにお菓子を楽しみにしていたのか……。
「ところでシャーロさんはどこに?」
「魔王が心配で魔王城に行っている」
やっぱり魔王が心配で見に行ったか。
シャーロさんは優しいな。
「そうですか、ではシャーロさんの分のお菓子を渡してください」
アイシスは無限収納から大きな箱に入れたお菓子を出した。
「ああ、問題ないよ。確かに渡すよ。レイ君たちも気をつけてくれ、いくら強くなったとは言え、油断してはいけない」
「肝に銘じます。では、俺たちは戻りますね」
「ちょっとレイ、今日は早すぎよ!? もう少しいていいのよ!」
「ティーナ、レイ君たちは忙しいから今回は諦めろ」
『ボクも早すぎると思うけど今回は仕方ないよね。また今度ゆっくり話そうよ!』
「しょうがないわね……スタンピードが終わったら必ず来てね。それまでは我慢するわよ」
2人とも理解してくれて助かる。
エフィナにも悪いが、今回はゆっくりしている暇なんてない。
ルチルは双子の天使と遊んでいる途中だと思うが、説得して――。
「双子の天使がいない!」
ルチルは顔を膨らませて戻ってきた。
いない? 家で休んでいるのか?
「あの子たちはシャーロと一緒に魔王城に行っているよ。あの子たちも魔王を心配していてな」
一緒に行ったのか。
というか魔王は人見知りしないのか……いや、ただ見に行っているだけだから大丈夫か。
「そうなの……じゃあ、帰る!」
いないならそうなりますよね。
『それじゃあ、またね~!』
ティーナさんとソシアさんに見送られて――工房に戻ってきた。
明日から城に出て大変になりそうだし、このまま夕食までフランカの家でゆっくりするか。
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