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219話 第一王女の経緯


 とりあえずゆっくりできると思ったが、無理でした……。

 王様は遠方で疲れているはずなのに、休まずにシエルをペタペタと触って確かめたり、フランカの家を見学して接待をしています……。

 途中でアイシスは夕食の準備するとのことで城の中に入った。

 唯一対応できる人がいなくなるのは少々きついです……。 


「いや~面白いね! 帰っても暇つぶしができて楽しいよ!」


 暇つぶし……この王様は休むって言葉を知らないのか……。

 わかったことは子どものように無邪気ということだ。

 これが大陸で一番偉い人だとは予想外です。

 まあ、いろいろと考えてしっかりしている人だから、この大陸は平和であることは間違いないけど。


 夕食の準備ができたらしく、食堂に向かうのだが、王様――王族の方々も一緒なのですが……。


「僕たちは偉いからって、一緒に食事しない訳ではないよ。みんなと一緒にする方が美味しいからね」


 王様の性格上そうなりますね……。

 出てきたのはカルボナーラ、ハチミツ漬けにした骨付きのローストチキン、ミネストローネなどそのほかに――ビュッフェ形式だ。

 

 まさかのカルボナーラですか。麺類はまだ早いのでは――。


「珍しい主食だね、濃厚で美味しいよ」


 問題なく王様は喜んで食べてくれました……さすがイタリアの料理、王様も納得させてくれます。

 初めて麺類を見る人も美味しく食べてくれた。

 城内でも麺類が広まりそうだ。


 食べた後はお風呂――大浴場に向かうと……「やあ」と言いながら騎士たちと混じって湯船に浸っている王様がいるのですが……。

 もう身分関係みたいです。 

 俺も湯船にゆっくりと浸ると――。


「あ~また間違えた~まあ、いいや~陛下~お隣いい~?」


「しょうがない子だね。いいよ」


 なぜか全裸のエクレールが来て王様の隣に入る。

 女湯と間違えるのか……いや、この子、異性なんて関係ないか。


 エクレールは湯船に浸っているソウタに気づくと、にやけはじめる。


「誰も邪魔できないうちに~さわろ~」


「えっ? まあ、いいか」


 いいのかよ!?

 あとで3人にバレても知らないぞ……。

 ソウタに近づいて顔に触れようと――。


「やっぱりいたわね! この破廉恥光精霊!」

「あ、主を……さ、誘っているのは……ゆ、許さない……」

「ソウタ様に近づくことは許しません!」


 精霊たちは勢いよく飛んできて、エクレールの鷲掴みし、浴場から離れた。


「ケチ~もう少しで触れたのに~また今度触らせてね~」


 また今度って、諦めないみたいですね。


『ちぇ、もう少しでおもしろい展開だったのに残念だ』


 エフィナ、そうやってソウタを茶化すのではありません。 


 嵐のように去った精霊たちを見てソウタはため息をつく。

 なんで? まさかエクレール期待していたのか。

 人様の契約精霊に欲情してはいけませんよ……。

 あとでスカーレットさんに言うのは……逆効果だな……むしろ喜んで、ちょっかい出しそうだな……。


 浴室から出て、部屋に戻ろうとすると、後ろから風呂上がりのリンナさんが来る。

 

「レイ君、ちょっといいかしら? 話したいことがあるの」


「ええ、いいですよ」


 バタバタと忙しかったから俺もリンナさんに聞きたいことがある。

 リンナさんについていき、城の外に出て、薄暗い庭を散歩する――。

 お互い気まずいのか、沈黙が続く、俺から質問していいのかな?

 リンナさんが足を止めて俺に振り向く――。


「レイ君……私が王女だって驚いた?」


「ええ、まあ……すごい驚きましたよ。ですが身分を隠すほど大変なことはわかりました。しょうがないと思います」


「理解が早くて助かるわ……本当に司祭――ド変態のせいで王都に暮らせないで困ったわ……」


 やっぱり司祭がいなければ王都で幸せに暮らせたのだろうな……。

 

「すみませんが、司祭のせいで王都に出ることになったのはわかりましたが、最初は嫌ではなかったのですか?」


「本当に嫌だったわ! だけど家族に迷惑をかけるのは嫌だったから私は仕方ないと思ったわ。寂しいけど、司祭から離れるのはすごく清々したよ」


 ですよね……清々したと言っても理不尽に家族と離ればなれになるのはつらいはず。

 王様は司祭はしつこいとか言っていたが、王族を手を出す輩に権限で大陸を追放できなかったのか?

 そう考えると司祭は追放できないほどの権力を持っていたのかもしれない。


「そうですか……ではカルムの冒険者でギルド職員をしていたのですか? 確かに身分を知っているザインさんが近くにいるのは安心しますが……」


「それはね、親父が言った通り、冒険者として身分を隠して暮らそうと思ったけど、あのド変態にバレて台無しになったのよ。ギルド長はカルム内なら何もしなくてゆっくり暮らしていいと言ったけど、私には何か動かさないと性に合わなくて、冒険者ができないなら職員をやらせてちょうだいってね。最初は冷や汗かいていたけど、諦めずに言ったら許しでたのよ。やっぱり動いている方が充実していて楽しかったわ」


 行動力は王様と同じ性格をしている……血は争えないですね……。


「なるほど……じゃあ、冒険者協会――ガレンさんが来たらなぜ隠れたのですか? 別に何もないはずでは?」


「たまにね、親父から会いたいと連絡が来るのよ……いくら私に【隠密】があるからって、密会は面倒な話よ……。それで協会長(ヴェンゲル)に言って、協会の人を送って強制的に連れていかれるかと思ったの……」


 ああ……それなら筋が通りますね……。

 まあ、あの王様が強制送還しないとは思うが。


「ハハハ……そう思いますよね……よく俺が王様と謁見する時はしっかり来ましたね」


「そ、それは……嫌な予感がしたのよ……ギルド長が何か隠していて問いただしたら、レイ君が親父に会うとか言って、ろくでもないこと考えてるに違いなと、そのことしか考えられなくて司祭関係なく王都に来たわよ……だって……私の大事な婚約者だもの……」


 いえ、まだ婚約は決めていませんけど……だけど――。


「俺を心配してくれるのはありがとうございます。でも無茶はしないでくださいね。危なく司祭に会う可能性はあったので」


「い、いいのよ! これくらい! 私はレイ君がどこ行こうと離さないと決めたからね!」


 リンナさんは赤くしながら言う。

 そこまでして俺と離れたくないのですか……18歳になったら覚悟を決めようと思ったが、どうする……うん、今は考えるのをやめよう。

 スタンピードが終わって落ち着いたら考える。


「ハハハ……質問ばっかりですみませんが、最後にあのスールも身分を隠して冒険者をしていましたが、あれは王様の命令ですか?」


 今、話を逸らさないと思考がパンクしそうだ。

 だけどド変態が一緒にいたのは気になる。


「あのバカ痴漢は違うわよ。勝手について来たのよ。バカ痴漢はただ国境の街(アスタリカ)が嫌で冒険者となって身分を隠していたのよ。親父は侯爵と長い付き合いだからバカ痴漢は私に対して馴れ馴れしくて呆れたわ……。私がカルムに移動することを知って、自分は王女と浸しい仲だから心配だからと勝手について来たわけ。ありがた迷惑で本当に困ったわ……。まあ、嫌なことあったときは思いっきり殴れるから良かったけど」


 やっぱりド変態はド変態ですね……しかもド変態の存在はリンナさんのサンドバッグです……。

 まあ、あの頃思い返すと、良いストレス発散だった気がする。


「そうなのですね……いろいろとわかりました……ありがとうございます。」


「いいわよ。私も今まで言いたいことが言えなかったからスッキリしたわよ」


 確かにカルムにいたときよりも清々しく少女のような笑顔でいる。

 王様はリンナさんに良い条件を出して納得させたからな。

 それでも今までにない笑顔だ。今後、司祭との関わりを断つことだとは思うけど。


「私は一緒に行けないけど、頑張ってね! 終わったら王女として盛大に祝ってあげるわ!」


 まさかの盛大ですか……できれば最小限でお願いします……。


「わかりました。楽しみにしています」


「うん、楽しみにしてね! そろそろクラーラは顔を膨らまして待っているから、また後でね!」


 そう言って笑顔で走りながら城の中に入っていった。

 本当に今までとは違う雰囲気だ。

 リンナさんも久しぶりに家族と会って嬉しいのは当たり前か。


『リンナ、楽しそうだね!』


 エフィナが急に嬉しそうに言う。

 いつもこのムードのときは話さないでくれるのはありがたいけど。


「ああ、そうだな……」


『ボクたちも早くスタンピードを終わらせて、リンナをもっと笑顔にしようよ!』


 確かにリンナさんは俺たちだけでスタンピードを戦うのは心配だと思う。

 けど、その前に明日ヴェンゲルさんの会議で決まってからだ。


 それまではなんとも言えない。  

 すぐに決定はしないと思うし、気長に待つとしよう。

 今日はいろいろとあったから部屋に戻り、すぐに就寝した。   

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