217話 秘密
ファイスさん、スカーレットさんは構えをやめて、リンナさんは【威圧】を出しながら王様に近づいて――。
「久しぶりだね~リンアイナ、元気にして――」
リンナさんは表情を変えずに王様の胸ぐらを掴み、揺さぶるっている。
リンアイナ?
「このバカ親父! 何レイ君たちをスタンピードに放り込もうとしているのよ!? いい加減しなさい!」
「ちょっと待ってよ~リンアイナ~これには深い訳が~」
なぜか王様が喜んでいるのですが……。
王様をバカ親父呼びって……まさかリンナさんって王女なのか……。
『あ~やっぱり似ていると思ったらリンナか。やっとモヤモヤが晴れたよ~』
エフィナの言う通り、王様の家族を見たら似ている……。
魔力もほとんど同じだ……俺……今まで王族と接していたのか……。
「お姉様~会いたかったですわ!」
「やめなさいクラーラ!? 今はこのバカ親父を怒りに来たのだから――って聞いているの!? 離れなさい!」
王女さんは後ろからリンナさんに抱きついて興奮しています……誰か……この状況を説明してください……。
「はぁ~もう無理か……レイ、察しての通り、リンナは第一王女――リンアイナ・ミスティ・エレントアーネだ……もう少ししたら話そうとは思ったが、こんな形で言うとはな……」
「それはわかりましたが……なぜカルムに住んでいるのですか……」
「まあ、いろいろとあってな、本人に聞いた方が早いぞ」
っと言われましても聞きづらいのですが……。
王族の事情は聞いていいものなのか……。
「リンアイナ、久しぶりね。気持ちはわかるけど、落ち着いて話しましょう」
「イヤよ! どうせろくなことしか考えていない!」
「女神教会の司祭――ベースンのせいだよ。お父さんは悪くないよ」
王妃の発言でリンナさんは王様を離して青ざめる。
「あ、あのド変態が!?」
「ついさっきまでいましたよ。会っていなくて良かったですわね」
「イヤァァァァ!? 気持ち悪い!?」
リンナさんは大声をで叫び身体をガタガタと震える。
司祭が嫌いなのか……もしかして家出――いや、城出の元凶か?
「本当に会わなくて良かったね~とりあえず一緒にお茶でも飲んで落ち着こうよ。ザインもどう?」
「いいのですか……お言葉に甘えます」
「みんなといると楽しいからね~じゃあ、移動しようか」
「私は帰る……」
「えっ、ちょ――」
リンナさんは俺の手を掴んで帰ろうとする……俺も!?
王様はすかさず扉の前に行き、足止めをする。
「まあまあ、落ち着いて、リンアイナはどうしてレイ君を庇おうとするの? もしかして好きなの?」
「将来の旦那よ! 婚約も結んでいるのだから!」
ちょっと待て!? まだ婚約を結んでいないぞ!?
ザインさんとヴェンゲルさんはため息をついて、ファイスさんとスカーレットさんは驚く。
「リンアイナ様がレイ殿の婚約者だと!? これは大変だ……」
「まさかボウヤが第一王女様と……意外にやるわね……」
勘違いしている……けど身分も違う俺にご家族が反対は――。
「なるほどね。だから城に帰ってきたのか」
王様はニヤニヤしながら俺を見ているのですが……。
「お姉様とレイさんが……いい!」
王妃は目を輝かせながら見る……2人はいいとして王妃は――。
「良かったですわね……母は嬉しいよ……」
泣いて喜んでいるのですが……いいのですか……。
「わかってくれたならそこをどいて!」
「そうはいかないよ、リンアイナに大事な話をしないといけないから一緒にお茶を飲もう。絶対にいい話だからさ」
「じゃあ、私が納得しなかったらレイ君とカルムに帰るから!?」
「いいよ。じゃあ、決まりだね」
リンナさん渋々納得して帰るのはやめた。
大事な話って……嫌な予感がする……。
謁見の間を出て、庭に向かうのだが……今だにリンナさんは【威圧】出している……。
通りかかったメイドは震えていますが……。
さすがだと思うのが、移動している全員は【威圧】の効果を全く受けていない。
特に王女さんはリンナさんの腕を組んで嬉しそうに歩く。
久々の再開だからか【威圧】負けじと魔力を放っています。
「そういえば、第一王女様は病気って言うのは噓だったのですね」
「えぇ、全くの噓ですわ」
サラッと言いますね……。
「じゃあ、なんでリンナさんをカルムに?」
「そ、それは……」
リンナさんは暗い表情をする。
やっぱり言いづらいか。
「それには理由があってね。リンアイナは昔からベースンに目を付けられて、婚約を申し込まれたのだよ。狙いは王族になるためにね。もちろん僕たちは大反対だよ。けど、ベースンは諦めなくしつこく来て大迷惑だった。そこで、リンアイナはヴェンゲルに鍛えられているから冒険者として活動させ、1人でも生きていけるように自立させてベースンに見つからないように隠居生活をさせようとしたけど、すぐベースンにバレて僕たちは脅されてね。まあ、脅しなんて言っても別に怖くはないけど。だけど、ベースンにバレたのは痛かった。僕たちの計画だ台無しになったからね。ちょうどそのときリンアイナは自立試験としてSランクの魔物――ブラックドラゴンを受けて見事討伐をした。それで僕はいいこと思いついてね。リンアイナはブラックドラゴンの討伐に失敗、相手は異常種でリンアイナは爪を引っかけられて回復魔法でも1等級のポーションを使っても癒えない呪いの傷を負って城の外には出られなくなったと、ベースンと民に知らせたのだよ。見事にベースンは信じて大慌てだったよ。この機にリンアイナは僕たちでも監視できるカルムに移動させた」
…………いろいろとありすぎだが!?
しかも民に噓の知らせを言うのはダメでしょう!?
それほど、切羽詰まっていたのか……。
しかし、司祭はなんで王族になりたいのだ?
何か裏がありそうだ。
けど気になる点が山ほどある。
「そうですか……よく司祭にバレずにいられましたね……」
そう考えるとリンナさんがブラックドラゴンを討伐したのは20年以上前の話だ。
よく噓を通せたものだ。
「それはね、簡単だよ。リンアイナに会わせてくれと言ったら、僕が闇魔法を使ってごまかしたからね。うまく引っかかって、大爆笑したよ」
えぇ……初級魔法を引っかかるのかよ……【魔力感知】があれば余裕でわかるのに……持っていないみたいだ……。
「では、王族になりたいのなら、クラーラさんも狙っているはずでは……」
「大丈夫大丈夫。そうと思ってクラーラは魔大陸のお偉いさんと婚約を結んでいると言ったから大丈夫。ベースンは魔大陸の人は大っ嫌いでね、すんなりと諦めたよ。そのときのベースンは嫌気を差していて面白かったな~」
適当なことを言ってごまかしていますね……。
「それじゃあ、まだリンナさんを諦めていないのですか?」
「そうだね。アイツは自分の利益しか考えていないからね。まだ諦めないのか条件を出してきたよ。「第一王女を治したら婚約を認めてほしいと」言ってね。アイツは今でも信者を使って古の秘薬を作る素材を探しているよ。まあ、面白いからいいよと言ってしまってね。いや~完成するのが楽しみだよ~」
司祭は王様に大遊びされていますね……。
エリクサーって存在するのか……。
「エリクサー……私も作ってみたい……」
リフィリアはわかるのか……まあ、調合していれば作りたくなるよな。
「大精霊さん、エリクサーは稀種であるユニコーンの角が必要でね、作るのは難しいよ。ユニコーンは伝説の存在でこの大陸にはいないに等しい。魔大陸なら僅かな可能性はあると思うけど」
ユニコーンですか……よくこの世界の童話で多く出てくるがいるのか……。
見つけても、捕まえれるかわからないが。
「そうなのね……じゃあ、あとで探そう」
探すのか……まあ、落ち着いたらいいが……。
「そんなこと言って、本当に大丈夫なの!? 早くあのド変態から解放されたいのだけど!?」
リンナさんは王様の楽観的な考えで不安のようだ。
絶対にボロが出るよな……。
「大丈夫、大丈夫。その話もするから安心して」
王様は表情も変えずに笑顔でいるから何か思いついたのかな?
俺たちは庭に出て再びお茶をする。




