214話 謁見前の揉め事
ヴェンゲルさんに事の経緯を話すと大爆笑だった。
「ガハハハハハ! まさかスカーレットの結婚相手が見つかったとはな! それはおめでたい!」
「ええ、お兄さんと愛を誓ったの……」
いや、まだ言っていないが……。
「そうかそうか、妹に先を越されないで良かったな!」
妹がいるのか、もしかして姉妹揃って魔性な気が……。
「グラマス、ルージュは忙しいから結婚は無理よ」
「それもそうか、ギルドマスターの道に進んだら、あと20年はできないか」
「えっ、スカーレットの妹さん、ギルドマスターですか?」
「そうだぞ、お前たちが行くデストルツのギルドマスターだ。それも双子の妹な。2人揃って人気が良く、求婚する奴が多い、まあ、スカーレットと同じで周りの奴なんて眼中にないから、気がつけばギルドマスターになっていたってことだ」
まさかの双子の妹さんですか……絶対に同じ性格だな……。
デストルツで挨拶をするから精霊3人はさらに機嫌が悪くなりそうだ。
「それと、陛下の謁見だが、昼過ぎになった。昼飯食べたら部屋で待機してくれ。俺が案内をする」
…………早すぎないか!?
戻ってきて早々に謁見とか大丈夫なのか……。
「今日ですか……王様は遠方で疲れてはいないのですか……」
「すぐにでも会いたいと興奮していたぞ。だから今日になった」
えぇ……早くても明日かと思っていたのに心の準備が……。
「フフフ、陛下もせっかちよね。ボウヤ、深刻な顔をしなくても陛下はとても優しいお方だから大丈夫よ」
「レイが思っているほど堅物ではないから安心しろ」
まあ、今日を乗り越えれば解放されるからもう少し辛抱だ。
「わかりました……」
「あとはソウタにも――お前たち! 遊びは陛下の謁見が終わってからにしろ! やめないのだったらファイスに言って王都の周りを50周走らせるぞ!」
ヴェンゲルさんが大声で言うと、騎士たちは立ち止まり、敬礼をした。
「「「はっ!」」」
扱いが上手いことで。
ソウタはホッしたが、まだ精霊たちは顔を引っ張っている。
「3人とも、王様に会うからもうやめてね。痕がついたら王様に失礼よ」
リフィリアが言うとゆっくりと離してやめた。
「偉いわ、それ以上やったらお兄さんのカッコイイお顔が台無しだからね」
元はと言えばスカーレットさんが元凶ですが……。
3人は拗ねたのか、リフィリアの隣に行く。
距離を置いた方が良さそうだな。
「今が好機だわ。お兄さん、一緒に食事でもしましょう」
「ほぉわ!?」
スカーレットさんがいきなりソウタに抱きついて、変な声を出す。
そして肩を組んでベッタリとくっつく。
ソウタ……胸を見過ぎだ。
精霊と騎士の殺気がさらに増している……。
「そろそろ陛下たちも食べ終わった頃だな。俺たちも食べに行くか」
もう王様は食べていたのか、もしかするとアイシスはもう会っていたりして。
俺たちは城の中に入り、食堂へ向かう。
エクレールはまだにルチルにくつかっている。
さっきまで泣いていたが、表情が明るくなり笑顔でいる。
ルチルをとても気に入ったみたいだ。
その途中、メイドと騎士がソウタとスカーレットさんが一緒になって歩いているのを見ると驚いていた。
特に騎士は殺気を出していた……。
どれだけスカーレットさんを狙っているんだ……人気があるのにほどがある……。
食堂に着き、ソウタとスカーレットさんは隣の席に座ってラブラブです。
リフィリアは精霊たちのために遠く離れた席に座った。
空気を読んで助かる。
それを見た料理長は大変驚いていた。
「まさかスカーレット様が……珍しい……やはり精霊使い同士お似合いだ……」
珍しい? 本気でソウタと結婚したいのか。
「それはいいとして、カレーを食べた陛下はどうだった?」
さっそくカレーを出したのか。
「はい、王妃様と一緒に喜んでいました。説明はアイシス様がしてくれて助かりました」
やっぱり王様たちと会ったみたいだ。
あとで聞いて見よう。
それと同様に王様が食べたカレーが出てきた。
スカーレットさんとエクレールは初めて食べるが好評だった。
昼食を食べ終えたら、ヴェンゲルさん、スカーレットさん、エクレールと解散して、部屋に戻る。
精霊たちは俺の方の部屋に入り、涙目であった。
「ソータの噓つき……」
「主……最低……」
「ソウタ様の裏切り者……」
「よしよし、そうだよね……ソウタが悪いよね……」
リフィリアは肯定をするかのように頭を撫でて慰める。
謁見でこの状態で王様に見せられないな……。
ソウタに言って謝るように言うか。
「何があったか知りませんが、察しました。お気の毒で」
料理を手伝っていたアイシスは状況を理解してくれた。
嫌な予感がするが……。
「どうせ……男は大きいのに惹かれるでしょ……」
「アイシスが羨ましい……」
「もう私たちでは魔性の女に勝てません……」
ネガティブ発言して下を向いている。
もう俺たちが解決できる問題ではない。
ソウタにあやま――。
アイシスはため息をついた。
「なに弱音を吐いているのですか? あなたたちはこのままでいいと思いますか? この前のやる気はどうしましたか? 私が言ったことを覚えていますか?」
その瞬間、精霊たちは上を向いて――。
「「「大きくなって見返す」」」
「そうです。まだあなたたちの戦いは始まったばかりです。落ち込む暇があるのでしたら、見返すことを考えてください。時間はかかりますが、絶対に大きくなります」
何を根拠に言っているのだ……。
いつも思うが、精霊に成長に概念が……いや、あるか……エクレールは大きくなった発言していたから、本当ならあり得るか……。
「そうよね……何バカみたいに嫉妬していたの私は……アイシスの言う通りね」
「絶対に……見返す……」
「そうですよね……落ち込んでいる暇はありませんよね」
先ほどとは違い、激励で表情が明るくなり、燃えるかのように魔力を出している……。
「やっとやる気になりましたか。このことを忘れずに日々精進してください」
「「「はい」」」
アイシスは胸張って言うと。
精霊たちはアイシスに拝む……鵜吞みにし過ぎだが、機嫌が良くなったから今日はいいとしよう。
その姿を見てリフィリアもホッとひと安心だ。
機嫌を取り戻した精霊たちは部屋を出てソウタの部屋に行った。
これで問題なく謁見を迎えられる。
「そう言えば、アイシスは王様を見たのか?」
「はい、見ました。あと王妃様も、クラーラ様と一緒に楽しく食事していました」
「どんな特徴だった?」
「特徴ですか? 魔力が多いエルフですね。国王陛下と王妃様、お二人とも気さくなお方で話しやすいでした」
気さくなのか、アイシスが言っていることは本当だから、少し肩の力を緩くしても大丈夫かな。
まあ、油断して失礼なことを言わないように気は緩めないが。
ドアのノックが聞こえ、ヴェンゲルさんが来た。
「準備ができたぞ、行くぞ」
俺たちはヴェンゲルさんについていき、謁見の間に向かう。




