21話 猪祭②
――指定された場所に到着した。
周りは平地が広がっている場所だ。ボアはまだ来ていない。
初日だから気長に待つか。
しかし、周りには魔物がいない……何かを察しているのか?
――30分後、【魔力感知】に反応が出た……結構多い……。
5分ほど待つと姿が見えてきて、数十頭の群れ――ブラウンボアとわかった。遠目だが中にはデカいのもいるからビッグボアだな。
初日でこんなに群れて来るのは珍しいし、Cランクで正解だと思った。
『うわ~、結構いるね!』
距離は1㎞に縮まった――地響きが――。
――――ドドドドドドドドド――――。
すごい鳴っているな……右手に【武器創造】を使って銀の剣を出して準備する。
さて、無魔法で牽制でもするか。
「ヘイトアップ!」
ボアの群れは気づいたかのようにこっちに来る、よし、成功している。
――200mの距離になった、まだ発動するタイミングではないな……。
――100mいや、まだだ……。
――50m頃合いかな、地魔法を使い、手を地面に叩きつけ、発動させる。
「アーストラップ!」
地面に10m位の穴を空け、先頭のボアから次々と落ちていく――ボアたちはすし詰め状態で身動きが取れなくなった。
大体20頭以上は落ちたかな、とりあえずそこで大人しくしてほしい。
その後来るボアは穴を空けた場所を避けて俺の方へ突っ込んで来る――それを避けて首元に切りつける。
「ブヒィィン……」
よし、倒れた、このまま無限収納に入れるのもいいが、血抜きして入れることにする。
解体するのに手間がかかるから、そこは気を遣わないといけない。
いつもそうだが素材のことを考えて、首元の部分を切る。もうクセがついてしょうがない。
まあ、余裕がある魔物にしかできないけどね。
それと、ボア系は首元を切れば血抜きにもなるから楽だ。
さて、肉の為にジャンジャン狩るか――。
――20頭狩り、数頭は逃がして、街の方角へと行った。ほかの人が狩るから心配はない。
さて、落したボアを狩るか。
――ドスッ……ん? 鈍い音がしたな、その音が鳴ったところでボアが痙攣をしている……。
それに精霊もいつの間にかいない……もしかして……空を見上げると――ボアが飛んでいる!?
いや飛んでいるのではなく、飛ばされているのが正しいか……。
精霊が風魔法を使い飛ばしている……。飛ばされているボアは逆さの向きになり地面に思いっきり落とされる――ドスッ、頭を叩きつけられたせいか脳震盪を起こして痙攣しているのか……。
精霊は魔法を唱えて――「ウインドアロー」で首元を目掛けて刺した。
意外に恐ろしいことしますね……彼女なりの知恵を使った倒し方だ、相変わらず器用なことをするな……。
そのボアを風を使って俺の近くに置き、笑顔で返してくる。
「ありがとう……あまり無理をしないようにね……」
頷いてすかさず、穴に落ちたボアを引き上げ繰り返し、同じことをする……結構助かるな―ここは精霊に任せるとしよう。
血抜きを終えたボアを無限収納にしまい、次々来るボアを狩っていく――。
――5時間後。
夕日が暮れる。そろそろ交代の時間だ。
「お~レイ、交代の時間だ!」
ギルドの剣士と魔法使いの人が来た。
「わかりました。あとはお願いします」
「おう、任せろ! 灯り頼むわ」
「はいよ、暗闇を照らせ――ライト!」
光魔法で周りは明るくなった。夜は暗くて危ないから2人で行動するように言われていたな。
2人に任せて、街へ戻る――。
『今日は大猟だったね!』
「ああ、まさか初日にこの数は意外だったな……」
精霊と一緒に狩った数が…………ビッグボア31頭、ブラウンボア200頭以上だ……。
これだけ狩って生態系が崩れないだろうか?
まあ、今年は異常に仕方がないか。
それと、街に入る前に解体場に届けないといけない。解体場は確か、城門前でやっているはずだからそちらに向かう――。
「お疲れさま、レイ君、精霊ちゃん! アイシスったらすごいのよ! ブラウンボアを300頭以上も狩っているのよ!」
「そんなにか!?」
「当然の結果です」
アイシスさん、ドヤってますね……。
「レイ君たちはどうだった?」
「こちらも大猟でしたよ」
無限収納からボアを出す。
「すごい! アイシスも凄いけど、ビッグボアがこんなに……腕がなるわ!」 リンナさんはビッグボアを片手で持ち上げ、解体しやすい場所に置いてから大型専用の肉包丁を持ち、勢いよく切っていく――いつもながら早いな……。【解体】スキルを持っているから手際が良いことで……数分で見事に肉になった……。
「血抜きもしっかりしてあるから、さばきやすいし、品質も良いわ! これは1級品にするわ!」
その肉を氷で作った箱に入れた。
リンナさんは忙しそうだし、俺たちも帰るか。
「じゃあ、俺たちはこれで――」
「ちょっと待って!」
すると、リンナさんはもう2頭のビッグボアを解体した。
「はい! この肉は持って行っていいわよ!」
「こんなにですか!? 冷凍保存しても食べきれませんよ!」
この量もらえるのは嬉しいけど、さすがに無限収納を隠しているから、素直に受け取ると怪しまれる。
「もう隠さなくていいわよ! アイテムボックスを使っていないのはわかっているのだから!」
見抜かれていたのか……いや、アイシスが言ったのか? アイシスに顔を伺うと首を振る……見抜かれていた……。素直に話すしかないか。
「あの……いつから、わかっていたのですか?」
「キラースネークを持ってきたときよ! 解体してる時あまりにも新鮮だったからおかしいと思ったわ!」
「そうですか……他に知っている人は?」
「ギルド長は知っていると思うわ! アニキは知らないけど。で、それは何を使っているのかしら!?」
リンナさんの目が輝いている……一応エフィナに聞くか。
『無限収納のこと言ってもいいか?』
『いいよ! あの子なら悪用しないから!』
即答だな!? それだけリンナさんを信用していることか。
「実は――」
空間魔法が追加されたこと、無限収納の説明をした。
「すごいじゃない! そんな魔法を使えるなんて!? さすが、レイ君! 私の目に狂いはなかった!」
「あの~これはみんなに内緒にしてくれませんか?」
「もちろんよ! でもギルド長だけには言っておくから心配しないで!」
「それでお願いします。ではありがたく肉をもらっていきます」
解体してもらった肉を無限収納に入れた。
「うん、それじゃあね!」
それを聞いてリンナさんはテンション高く、ボアの解体を再開した。
そんな嬉しいことではないけど……。
まあリンナさんなら口が堅いし大丈夫かな。
もしスールさんだったら……あ、うん、ダメかもしれない……。
――街に戻ると活気に溢れていて、屋台には既にボアの肉が置かれていてみんなが食べている。
もらった肉を屋敷で調理して食べようかと思ったが、せっかくの祭りだし、この期間中は屋台などで食べよう。
――屋台で焼き上がったボアのステーキをアイシスと一緒に食べて、祭りの初日が終わった。




